第3話 (途中)
資料室には埃一つ無かった。まるで今の今まで時が止まっていたかのように、この場所に存在していた。
竹さん、竹さん。時を止める能力ってどれくらい凄いのかな。
ふーん…え、上位の名だたる悪魔や大天使レベルなんだ。それって僕が倒せる?
分からないんだ。そうなんだ。レベルが上すぎて良く分からないと。はい、気を付けます。
でも、警戒するだけ無駄っぽいんだよね。この資料室の時を止めていた存在は。
だから僕は無警戒でズンズン進んでいく。
竹さんは…特に警戒する様子も無さそうか。僕が問題無く進んでいるからかな。
それにしても、この資料室って色々な紙媒体の本が置かれている。
でも、どれも業務記録とか、学級日誌とかそういうのばかりだから、昔の記録を保管するだけがこの資料室の役目か。
だとすると、ここに居るのは本や知識、記録に関する何かがモチーフになっている怪異なのかも。
ソロモン72柱の悪魔とかが出てきた日には、僕は瞬殺されかねない。
幾らチートレベルの異能があるとは言え、だから何だとその上から殺されるかも知れない。
でも、特に威圧感とかは無さそうか。
普通にあった。意外と直ぐに見つかって、呆気ないとは思った。けれど、この本を持ち出すのは何処か気が引けてしまう。
黒い石の台座にその本、いや書は置かれている。その表紙は、僕の知らない言葉で書いてある。英語のような、掠れて読み難い文字列で恐らく、『Liber Archangelus Raziel』と記されていた。
そして、視界に収めている間、僕は息ができない程の厳かな雰囲気に当てられて、刹那の時間だけ呼吸を忘れたが、竹さんのお陰でハッと我に返った。
「竹さん…この書は、持ち出したらヤバそうなんですけど…」
でも持ち帰れ、ですか。確実に絶対に死んでも持ち帰れ? え、竹さんがそこまで言うならやってやりますよ。
で、竹さんはこの書が何か読めるんですか? 読めないんですか。僕もです。後でカメラ翻訳しましょうね。
書に手を伸ばした時、少しだけ白く光ったと思えば、その光は直ぐに消え失せてしまった。
何かあるかと警戒したが、僕は簡単にその書を手に取ることが出来た。
一体何の書なのだろうか。こんな場所で誰にも見つからないように置かれて、この書は何が書かれているのか不思議でならない。
少しくらいなら、読んでも良いよね。
ページを捲る。知らない言葉で、なのに内容が理解できる。
この書に書かれているのは守護と治癒の術、そして天使と祈りの力についてだった。
どうやら、空間や時間による守護の術、部位欠損すら治しきる治癒の術、主天使すら召喚する術と、裏の事に関しては無知な僕でも公開すれば世界のパワーバランス崩壊待った無しだと分かるような術が数多く書かれていた。
でもさぁ、僕、この手の術は素質が無いから使えないんだよねぇ…
凄いよ。うん、途轍もなく凄い術が書いてて、中には死者蘇生とか生命の創造に関する物も書いてる。内容も理解は出来た。だが僕は使えないのだ。
僕は転生する時に異能に9割以上のリソースを振り切った結果として、それ以外はゴミクズレベルしか出来ない残念人間になってしまっているのだ。
あ、残りの1割は魔眼に振っている。
それにしても、この書には時間停止云々の術とかは書いてないね。
何でこの場所は時が止まっていたのだろうか。
でも僕が考えても埒が明かなそうだし、放置でいいかな。
よし、次は放送室に行くか。
ん? 放送室は鍵が開いたまま放置されていたのか。じゃあ鍵は必要ないね。
お、あー、放送室は埃がすごい。竹さん、全部吹き飛ばしてどうぞ。
直ぐ様、放送室に冷たい風が一気に吹き込んで埃を吹き飛ば…
「はっ、くしゅん!」
風によって埃が思いっきり舞い上がり、部屋が丸ごと埃まみれになってしまった。
…もう少し制御しないとなぁ。