第1話
この世界に転生という形で生まれ落ちてから5年が経過した。つまり俺…いや僕は今5歳という訳だ。
うん? 描写を省くな? いやいや実はだな、正確に言うと僕は最初の1年間はすっ飛ばす様にしたんだ。
転生する前に、僕が意識と記憶を取り戻す時間を設定できた。だから、乳幼児の時期なんて成人男性が改めて体験するのは辛いから体験しなくて済むようにしたって訳だ。
さて、意識と記憶が戻った僕の今現在の状況はと言うと、孤児院暮らしだ。
これに関しては完全に運任せだったからしょうがないと割り切っている。
だがそんな事はどうでも良い。
今はその程度は吐いて捨てる事だ。何故なら、僕は用意した覚えのない能力を持っていたのだから。
それは、恐らく霊視の類の能力。
周りにそういう人が居ないから断定は出来ないが、それでも、半透明な人型のナニカが見えるということは、霊視とかその類だろうと俺のファンタジー脳が判断した。
まぁ、もしかしたら僕がオッドアイにする為に用意した未来予測の魔眼が原因かも知れないが、どっちみち今後一生付き合うんだ。
慣れていくしか道は無いだろうな。
「ユキ、遊ぼーぜ!」
おっと、この孤児院の人気者の男子、花岡 優 だ。因みにこの孤児院の子供達は俺含めて苗字も名前も生まれた時からそのままだ。
あと僕の今世の名前は古波蔵 幸だ。別に前世の名前を忘れている訳ではないぞ。今世ではまだ使わないだけだ。
「うん良いよ」
「よっしゃ、じゃあ鬼ごっこな。ユキは逃げる側で俺は鬼な!」
「わかった」
「よし、10数えるからみんな逃げろよー」
俺…じゃなくて僕はここでは一人称が僕の無口キャラを貫くつもりだ。キャラ付けロールプレイは案外楽しいからな。
別に前世コミュ障だったわけでは無いからな!そんなんじゃないぞ! 女神様とも話せたからな!
「8…7…6…」
おっと、鬼ごっこの最中に他の考え事は良くないな。こういう遊びは全力で当たって砕けて爆発四散するくらい楽しまないと。
でも遊びだから鬼が捕まえられる位の速度に落とさないとな。この身体、やろうと思えば亜音速で空を飛べるし。
取り敢えず、100m走を15秒で走れるくらいに抑えるか。
「…4…3…2…1…」
よし、今から走るか。
道は、問題無いな。呼吸を整えて、出来る限り足裏の接地面積を少なくしつつ走る。そして重心を前に倒し、少し力も抜く。
インターネットに転がっている速く走る方法の、うろ覚えで模倣しただけのもの。
それでも、素のスペックと拙いながらも確かな技術は相乗効果によって、最後まで鬼から逃げ切る事が出来るくらいのものだった。
最後の方とか全員鬼なのにスルスルと隙間を通って避けれるからな。紙一重で避ける鬼ごっこはゲームと同じくらい楽しいな。最高だぁヒャッハー!
「うわー捕まえられなかったー!」
「やっぱユキ速すぎ!」
「速いな…俺も速く走れるようにならなきゃ」
…僕が遊んでるのは鬼ごっこの筈だ。何か遊び方が変わって僕を捕まえるゲームになったような。ま、皆が楽しいならいっか。
「次は僕が、鬼やる」
「「「ユキは駄目!」」」
「えー…」
蹂躙って楽しいと思うんだけど。流石に僕だけが楽しむのは駄目かぁ。しょうがないね。
◇ ◇ ◇
…あ〜、懐かしい事を思い出したな。
もう僕が転生して、というか意識と記憶を思い出してから16年が経つのかぁ。
いやー、にしても月日が流れるのはクソ早い。あ、そういえば、孤児院は16歳になったら出ていかなきゃ駄目だから、早めにバイトを探さないとな。
あと結局、里親は募集しても誰も来なくてやめちゃったから親は居ない。
バイトに関しては、孤児院側からの斡旋もあるけど、僕は折角、怪異や異能が存在する世界に転生したんだから、そういう裏の仕事がしたかったんだよな。
さて、その為にも先ずは曰く付きのバイトを探して面接を受けるとするか。
なんと言っても僕の今世の目標は………フッフッフ。
あ〜楽しみだ。この為に有名無名を問わずに孤児院から近い心霊スポットや神社を巡りまくったんだ。
そうそう、この世界の日本は地名が変わっていたり、時代毎の有名人が違っていたりそのままだったりしていた。十分予想出来ていたが。
でもちょっと、銀閣寺だけが存在しなかったのは予想外だったな。
「ふわぁ〜…もう寝よ」
さて、この一ヶ月以内には孤児院からさよならバイバイしなければならない。
既に荷造りは済ませているし、高校も寮があって怪談がいっぱいあるヤバそうな学校を探し出して選んである。
バイト先は…最終目標がとある場所の深夜のコンビニバイトだから未成年の今だと無理そうで諦めた。
だからなんか曰く付きで、尚且つ働いてみたい場所をピックアップしてある。そこでバイトの面接を巡ってこうと思っている。
それにしても、やっぱり…僕は前世から、寝つきが悪いな。
このためだけに、強制睡眠が出来るようになっていて良かった。
それでは世界よ、お休みなさいっ! また明日なぁ!
「おはよう世界。今日も幽霊がいっぱい居るなぁ」
最近になって、というか僕が色々と試行錯誤をしつつ異能やらを試していたら、この孤児院に幽霊が近寄るようになっていた。
それを纏めて全部一気に祓ってしまう。
あぁそうそう、祓う時は相手が主となった会話みたいなイメージでやると、幽霊は皆笑顔で輪廻の輪に帰ってくれる。
気付いた時には革命だと思ったね。良いことしてるってモチベーションにも繋がってるし。
ま、まぁ、それでも1日で合計100人の幽霊を祓うのは大変だけどな。
朝は20〜30人の幽霊をパパっと祓って、一階に降りて朝ご飯を食べる。
「おはよー」
「おはよーユキ兄。ジャムいる?」
「いる」
「ユキ兄ートマト頂戴!」
「良いよ。勝手に取ってって」
「やった」
「ユキが行く高校は俺も行くからな。だから一緒に陸上部入ろうぜ!」
「優…僕は文化部入るから、無理」
「そ、そんな…お前俺より足速いのに…」
「ユキ兄って運動は好きなのにねー」
「スポーツは好きじゃないのかな?」
「ま、そんなとこ」
まぁ、ワチャワチャしながら朝ご飯を食べる。これが結構楽しいので、僕はコミュ障では無いだろう。
あと、今世では人と話すのが上手くなった気がする。というより、聞き上手と言われることがある。幽霊を祓うために聞き手として色々してきたからかな。
それにしても、この孤児院。ご飯が美味しいんだよなあ。朝にはパン屋から焼きたての食パンが届くので、それが本当に美味い。
それはご飯の為に孤児院から離れようとしない人が居るほどだ。僕の二つ上の孤児院での先輩がそれです。
「ご馳走様でした」
「あ、ユキ、外に車来たぞ」
「分かった。段ボール運んでくる」
「了解」
食べ終えたら丁度いいタイミングでトラックが来たな。
僕の分はまだ二階にあるから、それを片手で一つずつ運び出す。筋力に物を言わせた運び方だ。初見の人はこれを見ると驚くので僕は面白くてやっている。
「持ってきたよ、優」
「おう。そこ置いといてだってさ」
「はーい」
うんうん。運んでくれる方々の驚く表情が見えるよ。素晴らしいね。人を驚かせるというのは。
孤児院の皆は慣れちゃったから、驚いてくれてありがとう。
「…え、何あの持ち方」
「…さ、さぁ、でも凄いなアレ」
「そうッスね先輩」
「俺等も仕事するか」
「ウッス」
あ、ちゃんと仕事してくれてるね。
よし、僕等も…というか僕と優もさっさと高校の寮まで移動しないとな。
孤児院があるのは香川県だけど、高校は東京の人工島にある。ここから遠いけど学費以外で欠点が無い素晴らしい場所だ。
人工島っていうのは、この世界で東京湾に面する場所に作られた広大な都市群を表す言葉のこと。
あの、前世だと江東区にあった大量のブロックみたいな場所。彼処がこの世界だと丸ごと都市になって、中学校と高校と大学が同時に存在する学園として成立しているのだ。
なんか難しく考えすぎたな。
纏めると、東京湾に面する人工島を丸ごと学園都市にした凄い場所。
でも、そんな場所に行けるのだから、楽しまないと損だよね。
待ってろよ! 学園に巣食う(らしい)怪異ども! 僕が相手しやるからな、ハッハッハ!




