首を吊る時に自重を増しておけば苦しむ暇もなく死ねるのでは?
あぁ死にたい。けど死にたくない。そんな感情が頭の中を支配する。いつからだったかこんな事を考えてしまうようになったのは。
覚えている限りは高校生の時だったか。中学に行かなかったけどその時はまだ大丈夫だったかな。それから高校に行くようになって現実を見て実感して、なんで自分が行きてるんだろうって思い始めて…
その時からか。なんてこと無い現実の話で死にたくなるほどではないにしても気分が悪くなって、その話が聞きたくなくなるのは。
――地球温暖化・戦争・宇宙人・死・永遠・SCP・アブノマ・超常現象――とにかく原因が僕にないものとか、どうしようもないものとか、現実と何ら関わりのないものでも漠然と怖くなったっけ。
音楽でも、現実を想起させるような歌詞の、それを強調するような曲がどんどん苦手になったかな。
年を取るのも漠然と怖くなって、そんな事考えたって何も変わらないのに怖くて、怖くて嫌になったんだよな。不老不死は要らないけど不老だけなら欲しい。この考えの止め方がわからない。何を考えているんだろう、僕は。
それで、それで、僕は心が擦り減ってきて、でも、漫画とかラノベとかを読んで、ゲームして、音楽を聴いて、売れるはず無い小説をとりとめもなく書いてネットに流して、ファンタジーの妄想をしたりして、なんとか心を安定させて生きようと考えて怖いことから目を背けて………大人になった。
「もう、いいかな」
僕は、死ぬよりも、死ぬ前の痛みのほうが怖い。無駄に雑学を溜め込んだせいで他の人よりも、きっと痛いことが苦手だろう。
僕は、誰かが自分を見ていないはずなのに見ていると思ってしまって、失敗したくなくて何も行動できなくて、そんな自分が嫌になった。
僕は、生きていても死んでいても、この世界に何かを成すことも残すこともできないだろう。何で僕は、生きているんだろう。
――死ねば異世界に行けるかな。
――自殺は、必ず地獄行きになるんだっけ
そんな考えは一旦打ち切る。
そして、スマホに流れている首吊りロープの作り方の動画を見ながら、僕もロープを作る。それを一軒家の屋上に用意した台にくくりつける。中世ヨーロッパの処刑台を半分くらいのサイズにしたみたいだ。
僕は思考を止める前に、死ぬ前に、せめて親には迷惑をかけないよう遺言状を書く。封をしっかりして誰かが開けたらすぐに分かるようにした。あと、名前もしっかりと「■■■■」と書いた。それと通帳にあったお金は適当に見つけた孤児院のクラウドファンディングに全財産の殆ど(25万円位)突っ込んだ。勤めてたバイトは、この前辞めたから何の問題もないだろう。
最後に貼り紙に『遺言状は開けると法的効果が期待できなくなるので開けないこと』と書いて封筒にわかりやすく貼っておいた。これで開ける時に詳しく調べてくれるでしょう。
自分の知識でできそうな迷惑をかけないための事はしたから。
それにしても、なんてこと無い日常を過ごしていただけなのに、そのせいで心が擦り切れて死ぬ事にしたとは。我ながら自分のことが馬鹿らしく思えてくる。
でも引き返すことはできない。さっきクラファンに全財産の殆どを突っ込んだから生活費も払えない。僕は日常を"普通"に、送れる気がしない。最初から諦めているのはだめだろうって?無理だよ。それが僕という、路傍の石ころみたいな人間なんだ。
僕はトレーニング用の体に巻いたりするタイプの重りを30kg分つける。靴はきちんと並べて揃えておく。あぁ、最後くらいは祈っておこうかな。
――願わくば、来世がありますように
そして僕は、
首を吊って自殺した。
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君が羨ましいよ。