第197話 Aクラス並の生徒
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その後も私を中心として順調に倒していき、残るパーティーは私たちの他に2パーティーだけになった。
しかも残りのパーティー同士で争っているので疲れているところをサクッとやって終了予定だったが、あるパーティーの1人ははあまり疲れてなそうな上に魔力の温存が大きい。温存が多い癖に身体強化もしっかりしている。
試験内容があの内容ではなかったら間違いなくAクラス入りだ。
だから残っているということはわかるが残りの2人が着いてこれていない。
そこをつけばすぐに勝てちゃうが、それをも妨害する。
普通のクラスじゃ難しそうだ。
ディルギンもアヤさんも頑張ってくれているが、やっぱり身体強化をずっと維持することができず、こちらに気づいてやってくるのを伝えたタイミングや奇襲するタイミングから開始するだけだ。
私が居なかったらどうなっていたことか……。
それと、さすがに力入れすぎだろ。とディルギンが斧をふりかざす時に思ったことがあったが、みんなに防御魔法が施されているのか、致命傷にならずに済んだことも多々ある。
「さっさと決着をつけてくれればさっさとこの大会も終わるのにな。」
「そう焦ることは無い。私たちの優勝は決定。」
「はぁ。一応余ってるパーティー身体強化を使ってもあまり疲れた感じが見えないから2人よりも厄介みたい。それに、結構楽勝に勝ってるからそこまで体力消耗してないし……。あっ。もう終わった。せっかくだし、余裕そうな1人を2人で相手してみる?」
「「え?」」
2人が拍子抜けした声を出すと共に、決闘が終了したパーティーの方向から煙が上がっているのが見えた。
どこかに逃げる素振りもないし、あの煙で居場所を教え来てもらつもりなんだろう。
「やれる所までやってみて無理そうなら交代って感じでも大丈夫だけど、せっかくだから経験した方がいいよ。もし、2人とも負けるのが怖いんだったらしなくてもいいけど。」
「負けるだと? この俺に向かって挑発とはな。よし、戦ってやろうじゃねぇか!! お前も行くぞ!!」
「一旦冷静になるべき。多分あの言い方は逃がさないための作戦。今まで何も言わなかったのに急に言うから絶対何かある?」
「それで逃げたら男がすたるってもんだぜ!! 行くぞ!!」
「私は女……。」
戸惑いながらもディルギンについて行き、煙の方向に向かっていくアヤさん。
私はみんなの後ろをついて行きながら目的地まで小走りで行った。
いつもみたいに奇襲をかけると思ったが、ディルギンがどこどこと走っているので早めに見つかり相手が剣を構えたのでそのまま決闘開始!!
元気な生徒が前に出て肩を上下しながら息をしている疲れている生徒が後ろで匿ってもらってる。
「やっと骨があるやつがやってきた。よし、行くぞ、2人とも!!」
「えっ。もう……。」
「待って……。」
後ろのそんな声は彼の耳に入っていないのかディルギン達に向かって突き進んでくる。
ちなみに相手は人族の男パーティー。
身体強化をしながら斧を上に構えたディルギンが相手に向かってふりかざすがすぐ横に避けられそこからナイフで刺そうとしてきた。
勢いが乗っかってかわせそうになかったが、アヤさんがディルギンにタックルしてギリギリかわす。
私は邪魔をさせない為にさっさと後ろの相手を討伐しますかな。
私が近づくと敵のリーダーは私に注意をしだした。
私が相手なら同じ行動に出ると思うがこれはチーム戦。
私だけにかまけていては思わぬ方向からの攻撃でやられてしまう。
私に向かって武器を構え身体強化を今まで以上に出したところでディルギンがタックルをお見舞いし、体の中心がズレるが倒れるまでには至らない。
だが、そんなことを見逃すアヤさんではない。なんやかんや言ってAクラスと言うだけはあって中心が崩れた生徒に対して足掛けをし、仰向けで倒れそうになるところに木製の剣を突き立てる。
このポイント制で厄介な所をついた作だ。実際に私もそれに相当困ってるからね……。
白刃取りならポイントにはならないけど、手のひらで相手の剣を鷲掴むとポイントに加算されるのだ。
絶対に怪我をしないとわかっていてもポイントが増加するのでどうしても躊躇してしまう。
そのせいで私のポイントは30も減ってしまっている。
倒れた生徒は素早く右手を地面につき、左手で剣を振るいギリギリかすった程度ですんだが、そこにディルギンが斧をかざす。
しかもディルギンは上半身に身体強化を中心にしずぎているので振りかざすスピードが尋常じゃないぐらい早く、さすがに対処できず終わったと思ったが、斧のリーチ的問題で刃が付くギリギリ地面を捉えた。
しかも、下半身にあまり身体強化をしなかったせいで体の中心が乱れそのまま数歩前に出てしまう始末。
それを見逃さずディルギンの足をつかみ引き付けた後急いで体制を立て直し少し離れたところで剣を構え直した。
素人がここまでできるわけはない。多分冒険者、もしくはどこかの武装家の貴族だろう。
まぁ、私はそんなことを気にせずにサクッと残りのふたりの生徒を倒し残る標的は1人だけにしといたんだけどね。
「クラスが低いからと言って油断できねぇな。さすがにあんな動き俺にはできねぇぜ。」
「そもそも体型が違う。」
「いちいちウザイところを着いてくるな!!」
「でも、事実。」
「ほっとけ!!」
「「?!」」
そんな悠長な会話をしてたもんだから敵が素早くアヤさんに近づき剣のグリップ(握る部分)の先端で横腹を刺し、慌てて斧を振るうディルギンに横から一直線に剣を振るった。
ダメージが入った時点でディルギンは0ポイントになり脱落。
未だにお腹の痛みに気を取られているアヤさんを横蹴りしそのまま剣を振りかざし0ポイントになり脱落……。
真剣だったら死んでいただろう。
見守ろうと思っていたが、想像以上の出来に見惚れてしまいつい脱落させてしまった……。
まぁ、いっか。
ディルギン達が脱落しなかったら前よりも仲良くなれるかな?って思ってた程度だしってもう切りかかってる。
確かにスピードはあるし技のバリエーションが多いし、魔力もしっかりある。
試験内容が違えば確実にAクラス入りだ。
でも、私の敵では無い。総魔力量、バリエーション、0.1秒間に考える思考の速さ、量が桁違い。
こんなのあくびしながらでも倒せる。もちろん相手のことを思ってそんなことはしないが。
あっ別のことを考えてるって顔してたのかな? 今までの身体強化以上に魔力を込めて両手で剣を持ち、前に出し突きの形で私に迫ってきてる。
多分この生徒のことだから私が避けるのも想定済みだろう。
だが、あれだけスピードが出ていれば普通の生徒なら急に止まることはできなくそのまま木にぶつかり自分がダメージを受けてしまう。
どう考えてるんだろう?
私も身体強化に流す魔力を少し増やしギリギリのところで2歩分ぐらい左にズレる。
ズレたはいいが、やっぱり相手はこの行動を考えていて剣を横から一直線で振りかざす。
もちろんさせないよ。
私は剣を持っている手に向かって前蹴りをし、剣が手から離れるのを見た後にそのままお腹に蹴りを1発食らわす。
相手の勢いがあるおかげで思いっきり私の足に腹が辺りそのまま足をなぎ払い相手を吹っ飛ばす。
吹っ飛ばした時点で0ポイントになったので、木にぶつかった時にはボール内で追い討ちをかけること無く終了した。
多分臓器や骨いってるだろうな……。
後で回復魔法かけとけばいっか。
ボール状態になると自動で保健室に送られる仕組みになっているので大丈夫だとは思うが後で見舞いにでも行くつもりだ。
回復魔法によっては全治数ヶ月とかも有り得るが私が使える魔法なら一瞬で直せるならね。
ふう。と息をつくとどこからか「終了〜」というアナウンスが流れ、森のあるところに赤色煙が出ているのでそこに行き校長先生の転移魔法によって元いた教室に戻ってきたのであった。




