第186話 久しぶりのギルド
「おい、あのエルフって勇者と一緒にいた……。やっぱりそうだよな。」
「ああ、間違えねぇ。ポシカを変なのに入れてたな。勇者でも人目置く存在だから何もすんじゃねぇぞ。」
「そうなのか? そうは見えねぇけどな。」
「バカ、ナギさんのこと知らねぇのか? あんなに美人なのにS級ソロ冒険者。エルフは分からねぇもんだ。」
「たしかにな……。」
「なんか2人の噂してるみたいにゃ……。すごいにゃ……。」
「ほっといて大丈夫だから」
「にゃ〜。」
私たちは冒険者達に人目置かれるがそんなことを気にせずにクエストが貼ってある壁に一目散に向かう。
色々と事件があって感謝しているギルドだけど、一躍有名になると本当にめんどくさいことしかないのだ。
ナギさんは私たち以上に有名な冒険者だから、相当な苦労が……。
でも、目立ちたがり屋ってお母さんが言ってたからいいのかな?
そう思いながら良さそうなクエストを探しているが、中々見つからない。
採取をしながらお喋りでもなんて考えていたのが甘かったようだ。
「そういえば、ニーナは冒険者カード持ってるの?」
「もちろん持ってるにゃ!! でも身分証の為に作ったから1回も使ってないにゃ。どうしても1人でクエストは危ないからにゃ。」
「そうだよね。とりあえずいい依頼があったら声掛けて。」
「もちろんにゃ!!」
今のところ採取があるかないかしか見てなかったけど、ランクとかも見なきゃいけないのか。すっかり忘れてたよ。
Eランクで受けられるクエストは……。
……。
……。
ひとつも無いだと……。
どうしよう。ニーナはどこかにないかワクワクしながらまだ探してるし、いや、まだ見つかってないだけでどこかにあるかもしれない!! よく探すんだ!!
5分後
「……。ないにゃ……。」
ついに口を開いたニーナ。その顔はすごい悲しそう。
Fランクのクエストがあったけど、今の私たちは受けられない。
受けようと思えばギルマスに行ってランクをあげられるけど、それをしている時間が無い。ニーナにも怪しまれるし。
王都じゃ低ランクのクエストはやっぱり少ないのかな。
「アリアちゃんとサリアちゃん、それとニーナちゃんだっけ?」
「「?」」
「あ!!」
振り向くとそこにはマヤさんとアヤさんが学園の時と違いしっかり鉄の防具をきていた。
マヤさんはなんだか嬉しそうな顔だが、やっぱりアヤさんは嫌そうな顔をしている。
それもそうだよね、サリアとさっきあんなことがあったばっかりなんだから……。
それに、サリアはすごく嫌そうな顔をし、ニーナはどうしよう、どうしようって慌ててるし……。
「もしかして、3人ともクエストを受けに来て探してる最中?」
「そうだけど……。」
「そうなんだ!! 私達もせっかくだからってギルドにやってきたのよ。もし良かったら一緒にクエスト受けない? そうすれば今まで受けて来れなかったクエストも受けられるようになりそうだから、どうかしら?」
「姉、それは本気? 授業見てなかった?」
「もちろん見てたけど?」
「はぁ。」
「私は絶対に嫌だからね!! 今日は3人でクエスト受けるんだから!!」
「でも、受けられるクエストがないにゃ……。」
「それはそうだけど……。」
「? 3人ともランクは何なの? 実力者だからいっぱいクエスト受けられると思うけど?」
「「Eランク」」
「……。E? えっ、なにかの間違いじゃないの? あんなにも強いんだからそれはないよ絶対!!」
「姉、本当は弱いのかも。授業もなにか特別な力が働いていたとなれば納得。」
「こら、そういうこと言っちゃダメでしょ!!」
「2人は何ランクなの?」
「Dランクよ。Dと言っても鬼族の地域でクエストをしてただけだから、ここではどれぐらい通用するが分からないけれどね。その腕試しという意味で今日は来たのよ。」
「そっか……。それで2人はどうする?」
「私は初めてのクエストだから安全ならどっちでもいいけどにゃ……。」
「私は絶対に反対!! お姉ちゃんだってあれ見たでしょ。冒険者は信用が命なんだって。それなのにあんなことがあったんだから何個命があっても足りないもん!!」
「それはそうだけど……。」
「あれ? 2人とも学園に通いだしたんじゃなかったの? もしかして、お姉ちゃんに内緒で辞めちゃった?! これはいけない予感!! でも、可愛い姪っ子のことを考えると……。でも、お姉ちゃんが優先だよね?! どうしよう……。」
また後ろから声がしたので振り向くとそこにはナギさんがいた。
ダンジョンに潜ってばっかりと言ってもさすが王都に着いてあまり経っていないからか、まだ滞在していたみたいだ。
「えっなっナギさん?! もっもしかして、2人は知り合いなの?」
「王都で会えるなんて……。」
「ナギさんにとって私たちは姪っ子なの。それでこないだまで一緒に住んでて……。」
「にゃ、にゃ!! 2人もすごいにゃ!! 冒険者じゃなくても誰もが知る有名人と知り合いなんてびっくりにゃ!! 唯一のS級ソロ冒険者で強いだけでなく冒険者にも優しいって聞いた事あるにゃ!!」
「それほどでもないよ。」
アヤさんとマヤさん、それにニーナまですごい興奮気味で話しているけど、そんなに有名だったんだ……。
私とサリアなんて、お母さんに言われるまで一切知らなかったのにね……。
エルフの里は情報があまり入ってこないのかな?
うーん? と悩んでいると、心配そうな顔で私の事をナギさんが見つめてくる。
「それで、学園は辞めちゃったの? だからこの時間にギルドにいるの? 結局どうなの?」
「ナギさん安心して、私とお姉ちゃんはしっかり学園に通ってるから!! それでね、ニーナと一緒になにかクエストを受けられないかなって来たところにね、この鬼族がやってきたの!! とっても悪い鬼族だからナギさん気をつけた方がいいよ!! あっでもね、こっちのマヤさんはまだ大丈夫なほうだよ。」
「告げ口良くない。」
「そっちが悪いんだもん!! あっ、そうだ!! ナギさんこの後時間あるなら私とお姉ちゃんとニーナと一緒にクエスト受けようよ。私たちEランクだから受けられるクエストなくて困ってたんだよ!!」
「……? Eランク? えっもう1回言ってくれる? 何ランクなの?」
「Eランク!!」
「……。嘘でしょ? だってあんなに強いんだよ、そんなのありえないでしょ。もしもそうならギルド自体がおかしいでしょ。えっ、本当なの?」
こうなったら、Aランクの件を言わなければいけない。ニーナと一緒って感じで喜んでたけど、しょうがないよね。
私は少し申し訳なさそうに言葉を発する。
「本当です。本当に私たちはEランクなのですけど、ギルマスからは上げたい時に声をかければAランクまでは上げられると言われてます。」
「にゃにゃ?!」「Aランク?!」「ありえない!!」
「やっぱりそうだよね。2人の実力だったらSランクだって狙えるもんね……。あっ、狙えるはず!!」
「それでさっきのお願いなんだけど、いいかな?」
「もちろん、3人でも5人でも何人でも問題ない。」
「違う、ナギさん含めると4人!! 間違えちゃダメだからね!!」
「わかった。」
「アリアちゃん、サリアちゃん、私たちもダメかしら? 絶対に邪魔もしないし、アヤが暴れそうになったら止めるから。どうかな……。」
「私からもお願い。」
マヤさんは申し訳なさそうに、アヤさんは少し堂々とした感じで言うが、こればかりはやっぱりサリアが合意しないとだからね……。
それを聞いたサリアはまだプンプンしているがどうするつもりだろう?
そもそも、低ランククエストを受けるつもりだけどそれも大丈夫かな?
「ナギさん、受けてもこのゴブリン数匹とかそういう系になりますが大丈夫ですか?」
「えっ、そういうクエスト?!」
「ごめんなさいにゃ。私が初めてのクエストだから、ナギさんにも迷惑かけちゃうにゃ……。」
元気だったニーナの尻尾はちょこんと落ち込んで下に落ちていった。今まであんなにブンブン降って元気だったのに。
「大丈夫。誰しも初めてはそういう経験を積んで強くなっていく。私だって初めは採取のクエストやゴブリン退治をしっかり積んでから今のランクまでやってきたんだから。何にせよ焦っちゃダメ。焦ると怪我の元になるから。」
「はいにゃ!! ありがとうございますにゃ!!」
「サリア、どうするの? サリア次第でいいよ。」
「お願いサリアちゃん。」
「さっきは悪かった。だからお願い。」
「やだ。今日は絶対に4人でクエスト受けるんだもん!!」
「分かったわ。急なお願いしてごめんなさい。」
「……。」
「こっちこそごめんね。」
「気にしないで。私たちはもう少しここでゆっくりしていくわ。」
「……。やっぱり連れて行ってもいいよ!! なんかサリア悪いみたいで嫌だもん!! その代わりもうあんな意地悪なことはしないでね!!」
「あれはそもそも、」
「アヤちゃん!!」
「ごめんなさい。もうしない。」
「よし、ではゴブリンのクエストを受けるぞ。」
私たちはFランクのゴブリン退治のクエストをもって受付に行き受注した。
クエスト内容はゴブリン1部(同じ部位)を5体分との事だ。
仮に耳を取ってくるなら両耳を5体分持ってくると受付嬢の方が丁寧に教えてくれた。
そんなカットめんどくさいから収納してそのまま持ってくるつもりだけどね。
「では、近くの森まで行こうか。」
私たちは王都の時に転移するいつもの森に向かっていった。
次回予告
初めてクエストを受けるニーナ。
しかも、いきなり討伐クエスト?!
初めてのモンスターを狩るという恐怖に打ち勝たなければいけない上にゴブリンという少し人似ている存在。
大丈夫かニーナ!!
次回、頑張れニーナ。 お楽しみに