第185話 ふわふわホットケーキは幸せを運ぶ。
「もう、お姉ちゃんったら最近意地悪ばっかりするんだから!!」
「私と一緒の時はコンビネーションがいいのに、なんで他の子になるとダメになっちゃうのかな?」
「それはお姉ちゃんだからだよ!! あとは心を許してる方だけ!! あとはもう知らない!! ぷんぷん!!」
私たちは体育が終わったので更衣室で着替え中だが、相変わらずサリアはぷりぷりと怒っている。
アヤさんとアヤさんで私たちと離れたところでぷりぷり怒ってるのが聞こえてるし、本当に仲が悪いのだろう……。
なんかいけないことしちゃったな。
そんな気持ちを抱えたままその後の講義を受けお昼休みになった。
お昼休みと言っても午後から授業がないので私たちはこれにて終了だ。
サリアは未だにぷりぷりと怒ってるし、講義の時に近くに座るニーナも尻尾が下に下がっていてなんだから気を使わせちゃったな。
こういう時には美味しいものを食べるしかないよね!!
「ニーナ、お昼なんだけど良かったらホットケーキ食べない? 部屋で焼こうと思うんだけど?」
「ほっとけーきにゃ?」
「?! お姉ちゃんホットケーキ作るの!! やった!! 早く作ろうよ!! 早く、早く!! あっ、ホットケーキというのはね、その名の通り温かいケーキのことなんだよ。すごい美味しくてほっぺが落ちちゃいそうになるんだよ!!」
「にゃ、にゃ!! よく分からないけど、それは楽しみにゃ〜。」
ニーナの尻尾がさっきと違い左右にぷらぷらと揺れ、すごく嬉しそうな顔をしている。
それだけ楽しみにしてくれるとなんだかこっちまで嬉しくなってきちゃう。
それにしてもサリアの切り替え速!! 寝て起きたレベルで忘れてるんじゃないの?
「そうと決まれば早く行くよ!! お姉ちゃん、ニーナ。早く、早く!!」
「行くにゃ!!」
「あんまり慌てないの。」
私たちは少し慌てて教室を後にした
午後からの授業は無いのでゆっくりホットケーキタイムだ!!
学食にも無いメニューなので私たちだけの特別メニュー……。
なんだかこういう特別っていいよね。
それにしてもサリアすごい嬉しそうだな〜。
「ホットケーキ♪ ホットケーキ♪ 楽しみ、楽しみ♪」
「サリアが歌を歌うなんて、それほど楽しみなんだにゃ。なんだかお腹が減ってきたにゃ!!」
「あっ、フルーツはどうする? もしかして収納魔法に入ってる?」
「もちろん!! 今回は生クリームも生地も入ってるから焼いてトッピングするだけ!! ここまで準備してあると食べたい時にすぐ食べられるからいいよね。」
「ね!! 作り置きとかもできるけど、やっぱり作りたて食べたいもんね。それと作るのもとっても楽しいし!!」
「にゃ、にゃ?! 作るのも楽しい料理にゃ? そんな料理見たことないにゃ!! 楽しみだにゃ〜。」
「ね!!」
私たちはルンルンの気持ちで寮に帰り、ニーナは1度自室に荷物を置いてから私たちの部屋にやってきた。
その間に色々準備してたので火をつけて温まれば準備完了だ。
「これがタレにゃ? 焼くだけ言ってたけど、薄くて食べずらくないのかにゃ?」
「大丈夫、見てて。まず私が見本を見せるから!!」
そういいながら腕まくりをして張り切っているサリア。
エプロンはお母さんとお揃いのカエルエプロンだ。
「まずはね、バターを引いてその上にこの生地を載せるんだよ。こんな感じ!! あとは蓋をして待つんだけど、表面がぷつぷつなってくるからそうしたら反対側にするんだよ!!」
「でも、蓋をしたから見れないにゃ!!」
「時間が経ったらちょっとずらしてこっそり見るんだよ!! ぷつぷつしてて可愛いから待っててね!!」
サリアは説明しながらバターを乗せ生地をひいて蓋を閉めた。
とりあえず待ちタイム!!
早くできないかな? と私は思ってしまいがちだが、サリアはこの待ってる間のドキドキ感もいいよね!! といつも言っている。
その言葉を聞いてからなんだか私もこの時間が好きになって今ではゆっくりと過ごすこの時間が大好きになっている。
待っている間にホットケーキについてすごく語っていたサリアだが、急に「今だ!!」と言い出し、少しだけ覗いたところぷつぷつなっているといったので蓋をオープンすることに!!
「見ててね、見ててね!!」
「もちろんにゃ!!」
「オープン!!」
「にゃ、にゃ!! 本当にぷつぷつなってるにゃ!! なんだか可愛いにゃ〜。」
「でしょ!! このぷつぷつがなったら次の工程に移るんだけどそれがすごい難しいんだよ。見ててね!!」
そう言ってサリアはヘラを両手でもってホットケーキの下にひきいっきにびっくり返す。
今回も成功し、綺麗にフライパンの中に入ることができた。
それを見たサリアはすごい嬉しそうにしながら蓋を閉め「ここからまた待ちタイム!!」と言った。
「すごいにゃ!! よくあんなに綺麗にひっくり返せるにゃ!! できるか心配にゃ。」
「大丈夫、初めてなんだから失敗してもへっちゃらだよ。私なんて初めての頃はフライパンからはみ出して色々大変だったんだから。」
「アリアにもそんなことがあるとはにゃ。よし、頑張るにゃ!!」
ニーナは目が燃えるように張り切っているのが伺える。
もう一度蓋を開けるまでエアーでびっくり返す練習をしていたのが可愛くてしょうがなかった。
「もうそろそろかな。お姉ちゃん、どう?」
「そうだね、時間的に多分大丈夫だけど、刺しとく?」
「うーん。刺すのはね……。でも、心配だからやる!!」
「どういうことにゃ?」
私が箸をサリアに渡すとサリアがホットケーキを刺した後すぐに上げた。
「にゃ、にゃ?! これはなんの意味があるにゃ!! せっかく綺麗に焼けたのにもったいないにゃ!!」
「そうなんだけど、これで中がしっかり焼けてるか確認するんだよ。半生状態だとお腹壊しちゃうからね」
「それは重要な作業にゃ!! ホットケーキを刺すのはちょっともったいないけどにゃ……。」
最後ポツリと呟いたニーナ。
私はそれに同感しながらうんうんと頷いた。
「お姉ちゃん、できたからお皿出してくれる」
「もうここにあるよ!!」
「ありがとう!!」
サリアが綺麗にお皿にホットケーキを乗せて1度火を切ったあと私が収納魔法から出したフルーツと生クリームをトッピングする。
サリアが生クリームを乗せるのでたっぷりと生クリームがお皿の端に載せられてるのが可愛くてしょうがない。
パンにも合うし、ニーナ欲しがりそうだな。
「いくよ、せーの」
「「完成!!」」
「それにしてもこの白いの何にゃ? 見たことないにゃ?」
「!! それはね生クリームだよ!! 普通だとビーフシチューとかに入れるんだけど、砂糖を入れて混ぜるとすごい甘くて美味しくなるんだよ!! 1回食べるとやめられなくなってね。すごいんだよ!! そのままでも美味しいけど、パンにも合っていま1番好きなトッピングなんだ!!」
「早く食べたいにゃ!!」
「それじゃあっちで食べよっか。1枚みんなで食べたあと各自焼く感じで。」
「「はーい(にゃ)!!」」
サリアがホットケーキを持って私たちは机があるリビングまでやってきた。
ほんと今更だけどこの寮1部屋1部屋でかいよね。
玄関入って少し右にキッチン、反対側にお風呂とトイレ。廊下をそのまま進むとリビングでその隣の部屋に寝室(2人一緒)だからね。
私たちは仲がいいからよかったけど、仲が悪かったら結構大変なはず。ニーナはそこら辺どうなってるのかな?
「お姉ちゃんカット係よろしくね。」
「はーい。ちょっとまっててね。」
私はみんなの分のナイフとフォークを用意したあとにホットケーキを1口サイズにカットしていく。
この時しっかりとどのホットケーキを食べてもシロップとバター(溶けた物)が均等に乗せてあるようちしないとだからなかなか指南の技だ。
「よし、OK!! じゃあ食べよっか。」
「うん!!」「にゃ!!」
私たちは1口サイズのホットケーキをフォークで刺しいざ実食!!
もちろん初めの一口目なのでフルーツや生クリームは乗せていない。
本来の味を知った上でトッピングと一緒に食べるというのが1番楽しめる味わい方だからね。
パクッ。
「?!」
ニーナは口にくわえた瞬間尻尾が急に上に向かって真っ直ぐに伸び、毛並みたち始めた。
サリアはやっぱり美味しいよねって感じの顔をして全く気づいていないが、これは一体……。
「美味しいにゃ!! 美味しすぎるにゃ!! 言ってた通りにゃ!!」
「でっしょ〜。美味しいんだよ!! 次は生クリーム乗せで食べてみよう。」
「わかったにゃ!!」
目がキラキラと輝くニーナが生クリーム乗せホットケーキを食べ喜びからか体が左右に揺れる。
こんなにも美味しいということを見るだけでわかるなんてホットケーキを紹介して本当に良かったと思う。
「美味しすぎにゃ!! ホットケーキだけでも美味しいのに、もっと美味しくなったにゃ!! 次はフルーツと一緒に食べるにゃ!!」
フルーツと一緒に食べた時もすごい感動してくれて、あっという間に1枚目をみんなで食べ終わった。
食べ終わったニーナは早く次が食べたいのかすごいうずうずしている。
猫にまたたびならぬニーナにホットケーキだ。
そこから私たちはキッチンに戻り順番にホットケーキを焼いてリビングで食べた。
ニーナはひっくり返すのが初めてで、ひっくり返す前緊張していたが成功するとまた尻尾が真上に伸びてすごい嬉しそうにしていた。
ほんとニーナを誘って良かった。
サリアも機嫌も完璧に直ったし。
みんなしていっぱいホットケーキを食べおなかいっぱいになったので休憩した後、予定が空いていたので冒険者ギルドにでも行ってみようとなった。
ニーナと行くのは初めてだけどし、何かいい事ありそうだな!!
次回予告
ニーナと初めて行くギルドだが、今日サリアと色々あったあの子と遭遇?!
しかも自分のランクの方が上だからと言って少しめんどくさいことに!!
頑張れサリア!!
次回、久しぶりのギルド お楽しみに