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第175話 S級ソロ冒険者ナギと決闘!!

 「これからどうする? 想像以上に早くオーブン見つかっちゃったけど……。」


 「それなら、街を出て手合わせでもしよっか。鵺を倒したと聞いた未だに信じられない。私も戦ったことがあるが、圧倒的なオーラやあの硬い皮膚。それを1人で勝ったなんて信じられない。本当にそれほどの力の持ち主なのかはっきりさせておきたいわ。もちろん遠慮なんてしなくて大丈夫よ。なんて言ったって私はS級ソロ冒険者なんだから!!」


 「……。では、そうしましょうか。」


 「ナギさん。冒険者ギルドでは、鵺はA級って聞いたんだけどS級のナギさんなら倒せるんじゃないの? なんで? なんで?」


 「サリアちゃん、それは鵺はパーティーで倒すように設定されてるからだよ。依頼の紙の右下に小さく数が書かれてると思うけど、それが目標人数。鵺の依頼は100人だから、A級冒険者が100人束になって戦う相手なんだよ。だからソロの私には無理なクエスト。そして、グリフォン相手しながら鵺とかはさすがに死んじゃうし……。」


 「そうなんだ……。」


 「よし、さっさと行ってS級冒険者の実力というものを見せてあげるよ!!」


 「「はい!!」」


 そうして私たちは街を出て少し離れたところにやってきた。

 ルールとして武器などは木製のものに変え、殺傷能力がある魔法禁止、それ以外はなんでもOKということになっている。

 ナギさんは自身が背負っている巨大な剣と同じサイズの剣を木製で作り、両手で剣を振るい少し動作確認をしている。

 なので、傷ついても瞬時に回復し、体制を持ち直すこともできるとなると……。

 これは終わりが来るのだろうか?


 そんなことを考えていると、ナギさんから追加の説明がありそれに従いお互いに距離をとる。

 距離にして50メートル程だろうか。


 「では、始めるわよ。準備は大丈夫?」


 「「うん!!」」


 審判はお母さんがしてくれることになった。

 お母さんなら私と同じぐらい強いし、ナギさんがどこまで強いのか分からないけど、お母さんが瞬時に現れたなら即辞めるだろうとの事だ。

 私たちはお互いに緊張からか向き合いながら唾を飲むがその瞬間合図が放たれた。


 「始め!!」


 「あがっ?! えっ、あっ、参った……。」


「やった!! お姉ちゃんが勝った!! 勝っちゃった!! やっぱりお姉ちゃんはすごいんだ!! お姉ちゃん頑張ればS級冒険者だってなれちゃうよ!! 一緒に目指そうよ〜。」


 サリアはジャンプをしながら調子のいいことを言っているが、ナギさんは目が点になっていて何が起こったのか状況把握ができてない様子。

 先程の戦いを解説すると、私は瞬時にナギさんの懐に近づくとその勢いのまま押し倒し、急所となる首元ギリギリに木刀をとどめた。

 ここまででわずか0.05秒ほど。


 さすがのS級冒険者のナギさんでも対応できず一瞬で終わったのだ。

 だが、0.05秒の間で倒れたというのに未だ意識がしっかりしているのはS級冒険者ということだろう。

 普通の生き物ならばその速さに脳や体が処理しきらず意識が飛んだり骨が粉々になったりするところナギさんは怪我の一つもない。

 これがS これがS級冒険者ということなのだろう。


 「あっアリアちゃん少しはやるようね。さっさっきは少し油断をしていたから、負けたけど次はそうはいかないよ〜。」


 「望むところです!!」


 「……。うん、そうだよね……。」


 その後何度か模擬試合をしたが2回目以降はナギさんの腰を引きながら攻撃していたので、届くはずのものも届かなくなっていたりと初心者ミスが連発しあっという間に勝負が着いてしまった。

 私に勝てないとわかると「サリアちゃんと!!」 と言ったがサリアは私以上に手加減をすることができず私と初めて戦った時ぐらいの速さで何本も倒していた。

 そんなことがあったナギさんは徐々に顔色が悪くなり今は覇気すら無くなってしまった……。


 「……。S級冒険者なんてただの肩書きだよね……。S級冒険者になったからって調子に乗ってたけど、上には上がいるもんね。それもこんなにも実力差を感じさせて負けるなんて……。やっぱり私冒険者向いてないのかな……。」


 「もう、ナギったら。自分が勝ったら相手をからかったりするくせに自分が負けるといつも落ち込んでみんなを困らせるんだから……。もう大人でしょ。もっと視野を広げて物事を捉えた方がいいわよ。」


 「お姉ちゃんは分からないんだよ。私頑張って唯一のS級ソロ冒険者になったんだよ。王様が直々に頼みをするレベルだよ。そのレベルの冒険者が全敗って、しかも私は本気でやってるのに、2人は赤ちゃんと遊ぶような感覚で戦ったり一瞬で試合が終わったりして私の心がポキって折れてるよ!!」


 「もう、ほんといつまで経っても変わらないんだから……。」


 「ねぇ、最後に1個だけ頼み聞いてもらってもいい?」


 「ほら、言ってみなさい。」


 「ディーロと決闘やらせて。ちょっと自信戻さないと落ち込んだままではいられないから……。」


 「もう、いいわよ。ディーロに負けたからってそれ以上にいじけるんじゃないわよ。」


 「うん……。」


 「えっ……。本当に試合する気か? ああああ。なんか急にお腹が痛くなってきたな。こんな状態の相手に勝ったところで嬉しくないだろ。よし、今日は試合中止ということでまた今度元気な時にでも試合をするか。せっかくだしもっと王都の観光でも」


 「娘たちの前でかっこいい姿見せてあげたら? もうすぐ学校にも行って中々会えなくなるんだから。」


 「……。えっ。」


 「お父さんとナギさんの決闘見てみたい!!」


 「みたい!!」


 「え!!!!」


 「大丈夫、昔みたいにコテンパンにはしないから。よし、やるぞ!!」


 私たちは期待の眼差しでお父さんのことを見ているが、お父さんはこの世の終わりみたいな表情をしている。

 それに、昔みたいにコテンパンにしないってことはそういうことだよね!!

 だから、今日のお父さんの元気がなかったわけか……。

 お父さん、紗夜ちゃんとの修行思い出して頑張って!!


 お父さんは、いやな顔をしながら私と同じように少し離れて立ち準備万端になった。


 「それでは始めるわよ。それとあなた、本気出しちゃダメだからね。」


 「えっ。」


 「それってどういう」


 「始め!!」


 「ぐっグラビティ、ボール!! 30!!」


 お父さんはいきなり襲いかかってきたナギさんの攻撃を避けながら魔法を展開させた。

 グラビティボールというとても悪質な魔法を。

 最後に言った30というのは初めてボールに触れると体重が元々の30倍に増加するという鬼畜な魔法だ。

 しかもこの魔法はそれだけで終わらなく、ボールを10個まで出現可能な上に2回目以降から1.5倍ずつ体重が増えていき、最大で1000倍まで増加するのだ。

 そして今回は、お母さんに手加減と言われているからか1個しかボールが出ていない。


 「こんなボールを出して私を倒せるとでも考えているのか? ほんとディーロにも舐められたもんだわ!! 一気に片付けてお姉ちゃんに褒めてもらおっと。」


 ナギさんは一瞬でグラビティボールに近づき、横から切り裂くように木刀を振り回しすが、グラビティボールに当たった瞬間木刀を手放しその場に倒れた。

 幸いなことに口が地面とついてなくしっかり呼吸ができているが相当苦しそうな顔をしているし、動けそうにない。


 勝負あったね。


 「ディーロの勝ち!! あなた、魔法解いてちょうだい。」


 「ああ。」


 「……。……。お姉ちゃん!! ディーロが私に勝てるわけないよ、絶対にズルしたに決まってる!! だって、全勝だったんだよ。お姉ちゃん、絶対ズルしてるよ。」


 ナギさんは起き上がるとお母さんに抱きつき顔をスリスリとしながら文句を言っている。

 今まで見せていた威厳が一瞬にして崩れた瞬間だった……。


 「もうこういうことはしないって言ってなかったかしら? それに子供たちの前なのにいいの?」


 「いいの!! 私のことをしっかり考えてくれるのは本当にお姉ちゃんだけだよ!! 冒険者やギルド職員だってランクしか見てないし、私個人を見てくれるのはお姉ちゃんだけ。お姉ちゃん!!」


 「「……。」」


 ナギさんは、感情が込み上げてきて少し泣きながらお母さんに抱きついている。

 まるで幼い子供のように……。

 あんなに自己紹介する時にかっこよく見せ張り切っていたのが嘘のようだよ……。


 「よしよし、ほら、もう泣かないの。これから私たちの家に行くんだから。お父さん達にもしっかりと顔出すのよ。」


 「うん。そうする。もう、私冒険者辞めちゃおっかな。お姉ちゃんと一緒にいたい。だって、こんなに小さい子にも負けちゃうんだよ。それでS級冒険者とか恥ずかしいもん。」


 「もう、ナギったらすぐに拗ねちゃうんだから。どこかでナギのことを待ってる方がいるかもしれないわよ。」


 「お姉ちゃん以外いらないもん!! 早く家にいきたーい」


 「お金を貰った後にすぐに行きましょうか。」


 私たちは冒険者ギルドに戻りお金を貰った後、いつもの森にいき転移することになったが、さすがに玄関では人数的に狭いので今回は里の森の中に決定した。

 それにしてもナギさんがお母さんに甘える感じ、なんかサリアに似てるな。

 もしかして、エルフの妹は姉に対してこういう存在なのか?


 エルフの森に帰還したあともナギさんはお母さんにべったりとくっつきながら私たちの家に到着した。


 「早く入りましょう。ナギ、しっかり手洗いうがいするのよ。いつもみたいに省略!! とかも禁止ね。」


 「そんなに子供じゃないよ、お姉ちゃんったら。」


 「「……。」」


 そんな感じで自宅に入り手洗いうがいをしてリビングに行ってくつろいだ。


 ナギさんの視界にはお母さんしか入って無さそうだ……。


 ナギさんのこと楽しみにしてたのに……。

次回予告


ナギさんが家に来てからというもののお母さんにベッタリで徐々にお父さんの表情が悪くなっている様子。

それに、私たちもナギさんに気を使ったりして家なのになにか落ち着かない気分……。

なんか疲れたな……。

家族なのにそんなこと思ってもいいのかな?


次回、ナギと暮らす日々……。 お楽しみに!!

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