第174話 ついにオーブンと対面?!
「サリアちゃんね。お姉ちゃんの方は?」
「あっアリアです!! ナギさんですよね。」
「そう、私はS級ソロ冒険者ナギ!! ソロで唯一のS級の凄腕冒険者とは私の事!! それにしても、なんで2人はこんなに歓迎されてるの? ギルマスなにかわかる?」
「ガハハ。色々あったってもんよ!! 詳しい話はエルフ同士で聞くことだな。ちなみにこの嬢ちゃんたちは俺が活躍してた時代に戻っても手足も出ないレベルだぜ!! 下手するとナギよりも強いかもな!! ガハハ!! 」
私の視界はナギさんに遮られていたのでターロさんが受付にいるなんて知らなかったが、私の声が聞こえれば来るよな。ということでどこか納得してしまう。
勇者事件があったが、それ以前はターロさん専用の冒険者だったからね……。
未だに怖がってる受付嬢もいるし……。
「そんなに強いんだ。後で一緒に模擬戦でもしよっと。もちろん手加減もするし、お姉ちゃんの許可を取ってからするから安心してね。何かあると怒られちゃうからね……。」
「もう、ほんとに戦うことしか頭にないんだから。それより2人ともお金を貰ってきちゃいなさい。」
「「はーい!!」」
私たちはナギさんの横を通ってギルマスがいる受付に向かうが、ナギさんも興味津々で私たちの後ろでソワソワしている。
そして、他の冒険者はワクワク。
「ずいぶんまたせたな。取ってくるから待っててな。」
「「はい!!」」
「それにしても、ギルマスが直々に持ってくるんだから相当な金額のはずだけど、どんな魔物を倒したんだ? 大丈夫、S級ソロ冒険者だから何言われても驚かないから。」
「鵺です。」
「……。は?」
「お姉ちゃんと私で1匹ずつ倒したんだよ。あっあとグリフォンもいたっけ。換金に時間がかかるって言われたからずっと待ってたんだよ。」
「……。えっ? マジで?! 鵺ってあの鵺?! Sランクレベルの魔物で、しかも特殊な森でしか生存しない上に鵺と戦っているとグリフォンなどがやってきて相当大変なはず。この世にあるパーティーでもそれをこなすなんて2、3組程度だろう……。本当に倒したの?」
「はい。そもそもクエストがグリフォンなので鵺はついでみたいなものですけど。」
「……。意味が分からない。」
「またせたな。」
「……。マジか。」
ターロさんはトレーを持ってやってきたが、その上に見たことの無い硬貨と大金貨が数枚積まれてる。
「しっかり確認してくれよ。白金貨1枚に大金貨8枚だ。さっさと受け取ってくれ。白金貨なんて持ちたくないんだよ。無くしたらこの世の終わりだからな。」
「はっはっ白金貨だって?! 私でも稼いだことがないのに……。」
「何言ってんだ、俺なんか見るの自体初めてだぞ。届いた瞬間から緊張が止まらなくて夜も眠れねぇし、盗まれたもんならギルドいや、この街自体が終了を迎えるなんて思ったら頭の片隅から消えやしねぇ。あっ、そうだ。そうだ。換金以外に王都で勇者パーティーを助けたって分も入ってるって言ってたな。また詳しい話は暇な時でも教えてくれ。」
「はい……。」
「お姉ちゃん、この硬貨すごいキラキラしてるね。こんなに綺麗か硬貨はじめてみたよ!! お家に飾ろうね!! リビングに飾ろうよ!! ねっいいでしょ。」
「一旦家族会議したあとね」
「はーい。」
「ありえない、ありえない……。ギルマス、なんでこんなに金額が多いいんの。さすがの鵺でも多すぎやしないか?」
「状態が良かったからオークションで値がはってな。さすがに王都から報告が来た時には手が震えたってもんよ。初めてだよ、換金の金が入ってくるなって思ったのは……。そうそう、嬢ちゃんたち。ナギさんがこの金をもってきてくれたんだ。さすがにSランクでないと運べねぇからな。感謝しろよ。」
「「ありがとうございます!!」」
「あっ。うん。」
ナギさんは魂が抜けてしまい、指1本でも触れたら倒れてしまいそうな感じだ。
それとは真逆なターロさん。私たちに硬貨が渡ってすごいニヤニヤしてる。本当に夜も眠れなかったんだな。
「とりあえず、サリア収納魔法に入れといて。」
「はーい!! お姉ちゃん、これでオーブン買えるよね?」
「100個買っても余裕でお釣りが出てくるレベルだよ。」
「良かった。早くオーブン買いに行こうよ!!」
「まっ待って!!」
「「?!」」
後ろにいたお母さんがいきなり大声を出したので私とサリアは驚く。
冒険者たちは、白金貨と聞いた瞬間ナギさんみたいに魂が抜け静かな時間が過ごしている。
「ターロ、大金貨なんて持ち運びが悪いは、2枚全て金貨に変えてくれないかしら? 2人ともいい?」
「確かにそうだね、ターロさんお願いします。」
「します!!」
「おいおい、金貨200枚がこんな街にあるわけないだろう。せいぜい頑張っても100枚までだ。それでいいか?」
「お願いします」「します!!」
「時間かかるから、また後で来てもらってもいいか。だいたい1時間ぐらいだ。」
「「はーい」」
サリアは収納魔法から大金貨を取り出しターロさんに渡すとギルド裏にいった。
それまでは、家族で観光しながら新たにオーブンが入ってきてるか確認しないと。
あるといいな。
「じゃあ、行こっか。ナギさんも行くんだよね?」
「あっうん。」
私とサリアの後を普通に歩くお母さん、魂が抜けてるナギさんとお父さんが着いてきた。
私たちが出ていってもギルド内は静かでなんだかいつもと違って変な感じ。いつもみたいに騒がしくないとギルドっぽくないからね。
それに、ここは勇者パーティーズが現れないから安心安全。
ふっふっふ。私は最強!!
「あっ、そういえば、王都がどうとか話して思い出したけど勇者パーティーのポシカが捕まったらしいね。なんでも自分の利益ばかり考えて勇者を襲ったとか。せっかくパーティーに入れたのにもったいないよね。ほんと、あんなんがいるから冒険者の価値が下がるんだよ。」
「その事件ね、お姉ちゃんが解決したんだろ。ほんと急に襲ってくるから驚いちゃったよ。」
「サリアだって頑張ってくれたじゃん。」
「えへへ。」
「……。えっ。勇者リロとも知り合いなの?」
「……。そうですよ。」
「でもね、絶対に近づいたらダメだよ。だってねお姉ちゃんのことパーティーに入らないかって誘ってくるんだよ。その後も仲間が少しうるさいし、しつこいし、もう会いたくないもん!!」
サリアはぷりぷりしながら言うが、ナギさんは驚いて魂が抜けた返事をくれた。
そんな声を聞いて微笑ましいお母さんと未だに緊張が解けないお父さん……。
お父さんがそんなに緊張する理由が分からないな……。
「あっ!! お姉ちゃんここのお店は? 魔道具、家具屋って書いてあるよ!! こないだここに行かなかったからあるかも!!」
「行ってみるか。」
「いらっしゃいませ!!」
人族の方の店員さんが大きな声でこっちまで元気が貰える気分になる。
よし、おめあてのものはここにありますかな?
当たりを見渡すと、あるところで目が止まる。
パン屋でも使える巨大オーブン!! 他の料理でもしっかり使えますが、パン屋なら買うべき!!
とポップがはられている……。
これは買わないと!!
しかも、値段は金貨2枚。沢山お金を貰った私たちなら余裕で買える値段だが、大金貨なんて使えない……。
それに、クエストの代金は各自1枚ずつ自室に飾っているので持ち合わせが無い……。
取り置きできるかな?
「あっ。オーブンあるよ!! お姉ちゃんあれであってるの?」
「うん、それでいいんだけど、大金貨じゃあ多分買えないんだよね……。両替が終わったらまた来る感じになるかな……。」
「大丈夫よアリア。ここはお母さんに出させてちょうだい!!」
「お母さん!!」
「すみません、オーブン頂けますか?」
「あいよ!! 値段は金貨2枚だが、大丈夫か?」
「はい、お願いします!!」
お母さんは収納魔法からカエルのがま口財布を取り出しそこから金貨2枚支払ってくれる。
後ろにいるナギさんはなんでこんなことに金貨を出すんだ? と不思議そうな顔をしている横でお父さんは喜びながらうんうんと頷いている。
交互に見ると面白くてなんとも言えなくなる。
「どこまでお運び致しますか? 送料は無料でやらせていただいてます。」
「大丈夫ですよ。収納魔法があるので。」
お母さんが一瞬で収納魔法にしまうと、店員さんは小声で「凄っ」って言っていた。
家具屋などをやっていれば、喉から手が出るほど欲しい魔法だからね。たまにエルフ(収納魔法あり)で求人をギルドに出しているが月収が他の職業と比べて桁違い。
店主はすごい羨ましそうに見ていたが、それをほっといて私たちはお店を出た。
サリアの喜びジャンプは禁止していたのでやっていないし、ここでは少し大人しかった。
「お姉ちゃん、お母さん、お父さん!! ついにだよ。ついにオーブンをゲットしたよ!! 私ね、しっかりジャンプ我慢したんだよ。あそこで喜んじゃうと絶対にジャンプしちゃうから頑張ったんだからね!!」
「もう、そんなに無理しないでいいのに。」
「だって、お姉ちゃんだけにジャンプは見せるんだもん。えへへ。」
私はサリアの頭を撫でるとすごい嬉しそうな顔をしてくれた。
それを見ていたナギさんは微笑ましく私たちを見ていた。
やっぱり家族っていいね。
次回予告
予定以上に早く見つかり何をしようと迷っていると決闘をしようと言い出すナギさん……。
別にいいけど、S級冒険者だから結構やってくれるよね!!
紗夜ちゃん程では無いと思うけど楽しみだな!!
……。あれ?
次回、S級ソロ冒険者ナギと決闘!!