第168話 紗夜物語19
「やっと出られたっしょ。今日はふかふかのベッドで寝ること確定っしょ!!」
「とりあえず、もう帰りましょう。ご飯もいりませんから寝たいです。」
「だな。」
「うん」
やっと私たちはダンジョンから出れる。
予定通り10日間このダンジョンで止まり、最終的には第35階層まで降りることができた。
最後の方はカヤ以外は全く追いつけない感じだったが、それもしょうがないだろう。
だって中級冒険者レベルなんだから。
初級の初級冒険者が1ヶ月も経たないうちにそこまで行けたとなれば上出来だ。
なんでか分からないけど、このパーティーは吸収力が高く想像以上に強くなっていくからつい、ビシバシコースになっちゃうんだよね。
階層主は結局一匹も倒さなかったから次回に持ち越しかな。
「あっ。換金忘れるところだった。」
「そうっしょ。お金が無いと今日泊まる宿も取らないぐらい貧乏生活なんっしょ。こんだけ素材があるんだから奮発していい所泊まるっしょ。それで、ふわふわお布団♪」
「サナったら。でも、今日ぐらいは贅沢しても大丈夫よね。私もいい宿取っちゃお。ベッドで寝れるのがこんなに幸せなんて思いもしなかったわ。」
「とりあえず、二日間休んでその後元の街に戻る予定だから連泊しちゃいな。お金が足りなくなったらこっちが出すからさ。まぁ、多分足りると思うけど。」
「紗夜さん、優しい!!」
「何言ってるんだよカヤ。紗夜さんはいつでも優しいだろ。だから俺たちだってこんなに強くなれたんだ。いつか紗夜さんを超えることだって夢じゃないかもな。」
「さすがにそれは言い過ぎっしょ。でも、今日ぐらいはちょっとだけ大きなこといいたくなるのはわかるっしょ。」
「ね!!」
「やっと見えてきたよ。出口だ!!」
「「はぁ!!」」
おっと、日差しは私の天敵だからしっかりシャットダウンハーフをして浴びる日差しを半分にしとかないとね。
徐々に見えてくる外の景色はいい景色という訳でもなくただ単にバリケードと受付に並ぶ冒険者たちのみ。
だが、何故か安心するこの感覚がたまらないように感じる。今まではそんなこと無かったのに。
やっぱり誰かと一緒だと感じ方も色々変わってくるのかもしれない。
私の影響を受けて強くなって欲しいな。と思っていたけど、影響を受けていたのは私だったのかもね。
「「やっと出れた!!」」
「お疲れ様です。では、こちらで換金をお願いします。」
ダンジョン出てバリケードに近づくと、近くの従業員に話しかけられ指示に従って換金所に向かう。
運良く誰も並んでいないので、さっさと換金して宿屋でゆっくりタイムだね。
「……。換金のアイテムはお持ちですか?」
「あっ。これです。」
「?! 収納魔法?! すみません。初めて見るもので。鑑定しますので少し待っててください!!」
換金アイテムを出したトレーを持って慌てて裏に行って他の従業員と一緒に鑑定しだしたので私達は少しの間待つことに。
「そっか、収納魔法を当たり前に見てたから何も感じなかったけど、幻ぐらいすごい魔法なんだよな。」
「私だって使いたいけどいくら頑張っても使える未来が見えないわ。ほぼエルフの特権みたいなものだからね。」
「でも、私たちにはカヤがいるから問題ないっしょ。……。カヤって使えるよね?」
「まだ使えない。」
「「……。」」
「後でカヤに教えるから大丈夫だよ。」
「それって私にも教えてもらうことできませんか? ぜひお願いします!!」
「ごめん、カヤしか多分無理だと思うんだよね。収納魔法は魔力の性質によってできるか決まるんだけど、それがエルフとマッチしやすいんだよ。アマの魔力だとマッチしないからいくら頑張ったところでできないはず。」
「そうだったんですね……。」
「その代わりサナはできるけどね。何故か魔力の質が普通の人族とちょっと違うんだよね……。あっ。ごめん、これ言わない方が良かった?」
「問題ないっしょ。それにしてもなんで私が使えるのか謎すぎっしょ。私の両親普通に人族っしょ。先祖でもエルフとか聞いたことないし。ほんと謎っしょ。」
「勇者の末裔かもね」
「へぇー。」
全く関心がないサナだったが、パーティー的にも二人いた方がいいだろう。ということでサナも参加することになった。
収納量は魔力に関係するのでカヤと比べればサナはサナ小さくなってしまうが、私が泊まっていた宿屋ぐらいの大きさ使えるはず。
それにしても、体質は前衛向けなのに魔力も前衛以上にあるし、収納魔法も使えるようになるし、本当に勇者の末裔なのかもね。
それとアマだが、サナが使えると聞いた時は驚いていたが、妬みではなくすごいという尊敬の目をしていたのでここも問題は無いだろう。
「お待たせしました。大銀貨8枚と銀貨が5枚、大銅貨が5枚になります!! 分割の方はこちらでできませんのでパーティー内でお願いします。」
「「ありがとうございます!!」」
「また何かありましたらお願いしますね。」
そうして私達はダンジョンがある区域から良い宿がある区までやってきた。
王都で言うちょっとした貴族区みたいでどの建物も豪華になっているのでパーティーズはオドオドしながら私の後を着いてきたが、恥ずかしいのでしっかりするように言ったが変わらなかった……。
これは慣れだよね。
お金の分散だが、部屋代を一気に払いあとは私が持っていることになった。
パーティー内で誰かが持つとつい使ってしまうかもしれないという懸念があるかららしい。
「ここでいい? おすすめされたところなんだけど。」
「こっここに泊まれるんですか俺たち……。豪華すぎだろ。」
「こんなの夢しか見たことないっしょ。」
「夢じゃないよね、サナちょっとつねってみてよ。ゆっ夢じゃない!!」
「ふふ。嬉しい。」
「いつまでもそこにいないではいるよ。一応冒険者が泊まる宿屋だから汚れてても全然大丈夫だから。」
「「はーい!!」」
外観はどこか金持ちの別荘みたいな小さなお城みたいになっている。
私は金に余裕がある時はいつも高い方に泊まっていたのでこれぐらいじゃなんとも思わないんだよね。
こんなに新鮮な気持ちが出るなんて羨ましいな。
中に入ると上には小さなシャンデリアが付いていて、白一色で統一されていて豪華感をすごい出している宿屋。
ちなみに一泊大銀貨一枚なのでダンジョンの報酬で二泊は難しいので私が二泊目を出す感じにする予定だ。
「お待たせしました。ようこそおいでくださいました。本日は何部屋ご用意致しましょうか? どの部屋でも一泊大銀貨1枚とさせていただいてます。」
「五部屋でよろしく。」
「かしこまりました。先払いシステムですが大丈夫でしょうか?」
「はい。」
私は先程頂いたお金で支払いを済ませ、部屋まで案内してもらって貰った。
大銀貨1枚が宿泊と知らず聞いた時目が飛び出でるような4人を見るのは少し楽しかったが、まだ実感が湧いていない感じがある。後で明日の分の予約と支払いに行かないと。
でも、今日中の方がいっか。
私は転移魔法でいつもの街に戻りギルマスに伝え金額1枚のみ前借りして戻って受付に頼んで私以外二日目も泊まることになった。
パーティーズにはあとから伝えれば大丈夫だよね。元々そう言ってたし。
次回予告
800年振りに自宅に帰る紗夜。
月日がたってしまっているので里にいる子供達は知らないエルフが来たプチパニック?!
村長には100年に1回帰ってこいって言われるし、なんなのこの里!!
次回、紗夜物語20 お楽しみに