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第164話 紗夜物語15

 「少し距離取って……。開始!!」


 私の開始合図で二人の決闘は始まった。

 アマは残り少ない魔力をねり始めるが、サナはそんなものを待たずイノシシのように向かってくる。

 もちろん持っている武器は私が用意した木材でできているものだ。

 これでは後衛のアマが魔法をそのまま撃てるので有利なのでは? と思うかもしれないが、アマはなんと言っても魔法を撃つまでの時間が長すぎるし、疲れが出て集中出来ていない。

 多分サナが圧勝して終わりだろう。


 「身体強化!!」


 イノシシのように進むサナの背後に急いで移動したはいいが、肝心のサナは進んだままなので攻撃が当たらない。


 アマの存在を感じとったサナが少し手だけに身体強化をし、アマの顔目掛けて木のナイフを投げる。

 ナイフを避けようとするが、サナのナイフがほっぺをかすりとろりと血が流れる。


 手で血を拭いてしまったが為、視界からサナが消え周りを見ていると背後から首に向けてナイフを突き出し何時でも殺せる体制になっていた。


これで終わりかな。と思ったが、サナは少しだけナイフを首に当て軽く意識を取ろうとしたので慌てて終了の合図を出す。


 「終了!! 終わり、終わり!!」


 「みっともない後衛ってこういうことっしょ。」


 「そもそも後衛はそういう仕事じゃないから……。」


 「負け惜しみっしょ。紗夜さん。お願いします!!」


 「その前に離れよっか……。」


 離れてもらった後サナにかかっていたグラビティを解除する。


 「やっと楽になれたっしょ。ってか、今までこんなに体が軽かったんだって自覚出来たから自室ラッキーっしょ!! マジ最高!! 火事場の馬鹿力に感謝ってしょ。」


 「……。」


 そんな暗い空気の中、私たちは前に進んで行った。

 その後は魔物と出会うことをせずに進むだけだったのであまり問題はなかったが、空気が悪すぎる。

 アマとサナがギクシャクしているのに加え、カヤとリーダーは二人に気を使いなんとも言えない感じになっている。


 元々サナが原因を作ったが、今はアマだけが罰が与えられなんだかアマが発端のようにも感じる。

 とりあえず、今日はアマとサナのセットで夜の見張りの時間を作って少しは改善してもらわないとね。


 そんなことを思いながら進んでいると、少し暗くなってきたので、私たちはここで野宿することに決定した。


 「やっと休憩だ!! グラビティがかかってないからって楽に思われがちだけど、これでも結構きついんだぜ!!」


 「リーダーは初めてだから、そう感じる」


 「もう少し褒めてくれてもいいだろ。さすがにきつかったんだからさ。」


 「それなら、アマを褒めるべき。グラビティ1.5なのに頑張って着いてきたから。」


 「まぁ、そうだな。」


 「それなら私もっしょ。途中までグラビティ1.5だったんだから。」


 「そうだな。ホントみんな頑張り屋さんだな。」


 四人いるはずなのにアマは話に加わらず三人の輪になってしまっている。

 私は料理の支度等があるのでそっちをやっているので話に加わることはないが流石に「パーティーメンバーだろ。」っと突っ込みたくなる時は多々ある。


 はぁ。ほんとどうなるんだかこのパーティー。

 この先やって行けるのか……。


 私の準備が終わるまで少し話を続けていたが、結局アマは一言も喋らず落ち込んでいるままだった。

 リーダーとカヤは何とか元気になってもらおうと頑張ってはいたが、話が上手くないカヤと他者があまり見えないリーダーでは全く意味がなかった。


 もっとも、引きこもりである私が言っても意味ないんだけどね。


 よし、夕食の準備完了。キノコソテーとサイコロステーキ。それとキノコスープ。

 やっぱり森はキノコがいっぱい生えてていいね。無料で取り放題。死ぬことがありえない状況だからね。


 「食べるよ〜」


 樹木で出した机に並べ私たちは夕食を頂いた。

 みんなが起きてる時は私が結界を貼っているため何も引き寄せられることはないが、パーティーズが見守ってる時はきるつもりなので、魔力感知が使えないものは結構きついだろう。


 夕食を食べている内に暗くなって来たのでスイカぐらいのライトを5個ぐらい出しといた。

 こちらは、私が寝ていてもつけとくようになっている。


 夕食後はゆっくり感想でも言い合うのかな? と初め期待していたが、みんな意識はギリギリ現実みたいな感じですごい眠そう……。

 これから見守る大事な仕事があるのにね……。


 「朝も行ったけど、順番で起きて魔物が襲ってきた時に起こしてもらうから。まず初めはサナとアマ。その次にリーダーとカヤ。そして最後が私って感じね。もちろん異論は認めないからね。」


 「紗夜さん知ってるっしょ。」


 「サイレント」


 「んんんんん!!」


 「異論は認めないって言ったよね。とりあえずよろしくね。途中で寝ていたら、魔物に襲われてエルフ以外死ぬことになるから。もちろん私は助けないよ。自業自得だからね。襲われる前に助けてくれれば別だから、よろしくね。」


 「「……。」」


 なんとも言えない空気が流れたところで、私は収納魔法から、テント(組み立ててある)を人数分取り出し説明をした後テントの中に入る。


 もちろん今晩は寝ないつもり。

 彼女達の関係性や魔物が襲ってきた時の対処をするからね。

 私って優しい!!


 「「……。」」


 彼女たちは話すことなくただただ寂しい夜が続く。



 残り1時間。未だ会話はないが……。


 「アマ……。」


 「なに……。」


 「ごめんなさい……」


 「……。」


 「アマだってキツいのに自分のことばかり言って、正直あの後後悔したっしょ。でも、自分が楽になれば。そればかりが頭に流れてつい思いもしないこと言っちゃったっしょ。ダメダメと心では分かってても、口には出なくて……。」


 「……。」


 「今日一日通して本当に悪いと思ってる。ごめんなさい……。後衛であるアマのキツいのに……。ほんと私ってダメダメじゃん。」


 「そっそんなことないよ。」


 「えっ。」


 「だって、サナは私のことを初めて救ってくれたんだから。私あの時すごい嬉しかったんだよ。今まで何も無かった道が暗かった道が明るくなって、希望まで見えたの。ほんとサナのおかげなの!! だから、つい助けてほしくなっちゃった……。みんな辛いのに……。みんなリタイアしたくないのに……。私だけじゃないのに……。」


 アマは泣き声になり、涙をこぼしていた。


 「アマ……。あの試合の時も、自分のことしか考えなかった……。紗夜さんに提案すれば何か形は変わっていたのかもしれないのにね……。ほんと、後悔ばっかな人生っしょ。でも、これからはそんな後悔がないように頑張るしかないっしょ!! アマ、一緒に頑張ろうね!!」


 「うん……。ありがとう。」


 その後また無言な時間が続き交代になった。

 カヤとリーダーの時はくだらない話をしていて終了。

 私に声をかけてきたので、防御魔法を展開し「おやすみ。」と言うとなんとも言えない顔をされた……。

 今まで起きてたんだから、ゆるしてね。

次回予告


最後の森に通ることになるが、アマが鵺を見たと言い出す。

私にとっては雑魚だが、パーティーズには一瞬で殺されるような魔物。

震えが止まらないアマ、大丈夫か?


次回、紗夜物語16 お楽しみに

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