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第156話 紗夜物語7

 「おかえりなさい……。後ろの方はご友人ですか?」


 「いや、ただのストーカーだから気にしないで。」


 「そっそうですか……。すみませんが、後ろの方々は用事がないのでしたら帰って貰えますか? 泊まりに来る方々もいらっしゃるので大勢ですと少し迷惑になりますので」


 「「すみません……」」


 とぼとぼと歩きながらパーティーズは帰っていったが、なぜだか胸が苦しいような感じがした。決して私が同胞を泣かせたからでは無いはずだ。

 うん。絶対に違うはず。私も幼い頃色々と言われたから……。と言いたいが、言われたことなかったわ。


 ほっといたら元気になってどうにかなるでしょう。そんなことよりも部屋に戻って新聞読んで情報入れないと。


 「お昼ご飯は正午頃には準備出来てますので楽しみにしててくださいね!!」


 「ありがとう。部屋でゆっくり新聞でも読んでるから、ご飯できたら呼んでくれる? また寝ちゃうかもしれないし。」


 「おまかせあれ!!」


 リオは胸を張って堂々とした態度で発言した。この頼もしさもなんだから重なるな。

 なんだから会いたくなってきちゃうよ。やっぱりエルフって嫌だな。会いたいな。と思う相手がどんどんと周りから居なくなる。エルフ同士ならだいたい大丈夫だけど、他の種族はほぼ無理。急に悲しくなったり寂しくなったりするからね……。それの影響で里から出ない子供も増えてるぐらいだし。別れはやっぱり寂しいよ。

 私はそう思いながら部屋に戻り新聞を読んでいるが、対して重要なことは載っていなかった。

 この店が美味しいだとか、誰のランクが上がったとか、領主の政治話などだ。



 はぁ。いつの時代もな。


 私は両手あげながらベットに仰向けになりため息をつく。

 これなら暇つぶしに魔法のひとつでも教えてあげれば良かったかもな。あと三週間ほどいる訳だし。それに寝すぎると心配してこないだみたいな事件も発生するしな……。

 とりあえず、午後は魔法書でも少し漁るかな。いいのがあればいいけど!!


 と楽しい気持ちでいたが、新聞同様知りたい情報はひとつもなかった。あと、お昼ご飯はThe和食で美味しくいただきました。


 ……。


 行く場所なくなっちゃったな。連れ回した時も街の中を観光したってこともなかったからあの時代との比較もできないし、何か楽しいことないかな。あっ。そうだ魔法の研究をって、それは時間忘れて大変なことになるよね……。


 はぁ。


 先程のパーティーズみたいに気力をなくし下を向きながらトボトボと歩いていると、私の視界に誰かが入ってきた。

 しかも、私が止まっているというのに相手は一切動かず私の邪魔をするという変出者だ。

 こういう相手は関わらないのが一番だからね。下を向きながらスっと横に移動しようとする。


 「魔法を教えてください!!」


 「……?」


 顔を上げるとそこにはこの前のパーティーズのエルフがたっていた。しかもおひとり様だ。


 先程まで泣いていたのでまだ目が赤くなっているのが伺える。

 暇つぶしで教えてもいいけど、ただ教えてもつまらないからな……。

 はぁ。どうするかな?


 「お願いします。大変なことでも頑張ります。お願いします!!」


 「……。」


 私が悩んでいると彼女はまた泣きながら「お願いします。」と頼んできた。はたから見たら絶対に私が悪い存在になっちゃってるよね。さっさとこの場を退散するか。あと暇つぶしもね。


 「わかった、わかったから。落ち着いて。とりあえず、どれぐらいできるか知ってから判断でもいい?」


 「あっありがとうございます!!」


 「じゃあ行こっか。」


 「はい!!」


 私の今日の予定は全部潰れこのヨワヨワエルフがどれだけできるのかを検査することになった。ギルド内でのことを考えると全然ダメダメだが、エルフ特有の隠しがあるかもしれない。まぁ。これポッチも期待してないけどね。あくまで暇つぶしだから。


 そう言い聞かせながら街の外まで出て森の中までやってきた。今日中に戻れば何か言われることもないだろう。なんて言ったって心配性のテルナードの意思を引き継いてる方々だからね。


 「ここまで来れば大丈夫かな? とりあえず、魔力を全力で練ってくれる? その後強力な技を私に撃って終わりって感じね。」


 「はっはい!! 大丈夫、ですか?」


 「大丈夫、大丈夫。とりあえず喋り方も敬語とかいいよ。仲間と同様に話してくれる? そうじゃないと緊張で何も出来なさそうだし。もしも何も出来なかったら教えるつもりはないからね」


「はっはい!!」


 彼女が深呼吸をした後に魔力を練って徐々にあげて行く。急激に全力を出したからか額から汗が少し垂れてきている。


 「今が全力です!!」


 「あっこれがね……。とりあえず、撃って来てくれる?」


 「はい!!」


 「炎よどこまで天高く登っていくのか? そして何を目指して行くのか。 私を信じ着いてきて欲しい。火柱!!」


 詠唱終了と共に私の足元に赤い魔法陣が発生し、0.1秒ほど経ってからそこから火柱が発生する。直径1m程の火柱が50mほど上空まで上がっているのがわかるが、肝心なのは攻撃性があるかないか。


 この魔法は10秒ほど続くので、とりあえず全部食らうことにするが、私がまとっている服などは燃えることスラもない。私自身が魔法をかけているのでそこら辺の魔法ぐらいでは全く意味が無いのだ。布がないところでもこれぐらいはなんの問題もないし。正直言ってこんなもんか。って感じ。


 この魔法は徐々に自分の魔力が減っていく。少し間違えれば途中で終わるし体を崩すこともあるが、そこはわかっていたのかすごいギリギリ魔力を残して終了した。


 「どうでしょうか……。」


 額からすごい汗を出しながら息切れしている彼女。満足気の顔をしていると思ったが、絶望の顔をしていた。


 「そうだね……。なんでこの魔法を習得しようと思ったの?」


 「火柱から抜け出せないからです。」


 「……。えっ。それだけ?」


 「はい……。ごめんなさい……。」


 「別に謝らなくてもいいんだけど……。あなたの里ではこういうことを習うのかなって気になっただけだから……。里が違えば中身も違うんだね……。」


 「私は落ちこぼれですから……。」


 「あっ。」


 下を向きながらポツポツと涙をこぼす彼女。本当に落ちこぼれだったとはね……。とりあえず暇つぶし修行してあげるかな。可哀想だし


 「とりあえず、名前は?」


 「カヤです。」

次回予告

なんやかんやあってカヤに魔法を教えることになった紗夜。ふぅ。今日はここまで!! とその日の修行が終わり次の日の朝、なんとパーティーズが宿屋に乗り込みにやってきた?!

リオ、どうなってるの!!


次回、紗夜物語8 お楽しみに

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