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第155話 紗夜物語6

 「えっ。どこいった?」


 「魔力が完全に消えた。無詠唱魔法……」


 「待って、それってひと握りしかできないって言ってたやつでしょ。それを使えるとか何者なん? ほんとに。」


 「やっぱり関わらない方がいいんじゃないかな? 下手すると殺されちゃうかもしれないし……。」


 「はぁ。サイレントホール」


 「「?!」」


 十字路の端で隠れていたので私は転移で彼らの後ろに移動した。

 それにしても、いちいちうるさい奴らだな。と思っていたが、一つ一つの行動に対して文句を言ってくるとは。本来関わらない方がいいが、新聞の為しょうがない。

 それと、サイレントホールのおかげで私たちの声は外に盛れることもないし、大騒ぎにはならないだろう。

 それにしても、エルフが気づけるように魔力を消さずそのままこっちにやってきたのに気づかないとはね……。

 どれだけ初心者なものか。


 「はぁ。」


 「あわあわあわあわ。」


 「どっどうしよう。こんなの想像するわけないっしょ。」


 「やるしかない。それにこの魔法知らない。」


 「……。」


 「「リーダー!!」」


 「?! ああ。やってやるぜ!!」


 「暑ぐるしいのはそこら辺までにしてくれるかな? さすがに同じような光景を何度も見るのは飽きるからね。それで今回だけど、ギルドで新聞を買って欲しくてわざわざここまでやったんだけど、もちろんやってくれるよね? あなたたちのせいでギルド内でめんどくさい事になったんだから。」


 「罪を償えと。」


 「同胞は理解が早くて助かるね。ちょうどうるさい連中が帰ってきたから今行くとまた騒ぎになるから。はい、お金。余ったら自由に使っていいから。」


 「「……。金貨?!」」


 「早めによろしくね!!」


 私はその言葉の後に魔法を解除し、その場で待つことにしたが、金貨を見て一向に動かないパーティーズ……。

 それもそのはず。彼らのような初心者パーティーが金貨一枚稼ぐのに普通6年以上かかってしまうものである。


 そんな金貨をキラキラとした目で見ていたリーダーが、「あっ。」と発して、コソコソ話をするところ金貨を四人で囲んで周りから見られない体勢にしていたがそんなことよりも早く買いに行って欲しい。

 残高があまりない私が見栄を張って渡した金貨なのだから。正直あまり見たくないが。


 「激ヤバっしょ。私たちがどれだけ冒険すれば手に入るのかな?」


 「単発で金貨なんて高ランクしか無理。ざっと10年?」


 「相変わらずエルフの感覚はズレてな。何買おっか? 馬車? 食料? ちょっとだけいい宿泊まっちゃう?」


 「それよりも、早く新聞を買いに行くわよ。せっかくの機会が失うかもしれないからね。」


 「「賛成!!」」


 リーダーが金貨を大事にポケットにしまって、私のことをニコニコと見ながらギルドに新聞を買いに行ってくれた。


 とりあえずこれで情報ゲットっと。魔術本はざっと見るぐらいでいっかな。数千年前〜数百年前の本はだいたい持ってるし同じことが書かれてるだけだと思うから。

 でも、新規に魔法出てたらな〜。


 と考えていると、すごい幸せそうなパーティーズが帰ってきた。


 「こちら新聞です!!」


 「……。ありがとう。」


 私に対する態度が180°変わったパーティーズのリーダーから新聞を貰うがパーティーズがニコニコしすぎて気持ち悪い。


 用事も済んだし、さっさとパーティーズとお別れしてこの街でゆっくりでもするかな。と思い後ろを振り向いて歩き出すと何故かパーティーズも私の後を着いてくる。

 しっかり金もあげたし、これ以上あげるものは無い。しかも、弱い相手が金を持っていたのならせびるのもわかるが私はパーティーズよりも格上の存在。

 何をやっても100%負けるとわかっているはずなのに……。


 後ろでは、「早く言いなよ。」「リーダー」と言う掛け声が聞こえてくる。


 「すっすみません!!」


 「……。申し訳ございません。お話だけ聞いて貰えませんか……。」


 このガキは「すみません」といいながら私の手を掴んで止めようとしてきたのである。つい条件反射で腕を振り払い背後にわたり頭を掴む体勢になってしまった。


 「で、話って? さっきお金上げたよね。」


 「このお金の使い道ですけど、この金貨分修行して貰えませんか。お願いします!!」


 「「お願いします!!」」


 リーダーは頭を掴まれているので下げることは出来ないが、他のパーティーズは頭を下げお願いしてきた。

 エルフ一人だけ教えるならば暇つぶしにいいかな? と感じるが、さすがに四人はめんどくさいし、やったことがない。

 それに、教えた経験なんて里でワンツーマンで子供に教えた程度。


 金貨が帰ってくるのはありがたいがリターンが多すぎるから断るかな。

 はぁ。いちいちめんどくさい。


 「悪いけど、他当たってくれる? こう見えて忙しいんだよね。エルフって長生きするから暇に思われがちだけど忙しいんだよ。そっちのエルフはどうか知らないけどね。その金貨で良い冒険者でも雇うといいよ。じゃあもう行くね。」


 「「……。」」


 私はリーダーから手をどけると宿まで歩いて行こうとするが、リーダーが私の前まで走ってきて通せんぼをしてきた。

 何度言ったって同じ結果なのに。


 「さっきも言ったけど、修行はつける気はないよ。そもそも私はFランク冒険者。逆にあなたたちに修行をつけてもらうランクのはずなのでは?」


 「それは……。」


 「エルフは実力を隠すくせがあるからしょうがない」


 「では、君も隠しているんじゃないのかな? あなたの場合は、隠す暇があるから力を磨いた方が身のためだと思うけど。あなたの魔力量や動きからして初心者丸出し。エルフの固有名詞が全て消えていて、なんにも役に立っていない。自分を見つめ直した方がいいんじゃないの?」


 「それは……。」


 「落ちこぼれでも努力すればある程度までは上がれるはず。そこまで上がっていないということは、そういうことだよね。仲間を守れない存在なんて必要ないはず。それでもエルフなの?」


 「……。」


 「同胞よ。恥ずかしい生き方をしないで。私たちまで恥ずかしい存在だと思われるから。」


 「……」


 パーティーズのエルフは下を向きながらポツリポツリと涙をこぼしていた。


 パーティーズは反論しようとしたが、エルフが仲間の前に手を挙げて止めていた。事実だと実感しているからだろう。


 それにしても、このエルフの長老は誰だ? 後で色々と伝えておかないとめんどくさいごとになりそうだ。


 はぁ。


 私はため息をつきながら宿屋に向けて歩き始める。


 「お願いします……。お願いします。」


 彼女は泣きながらポツリポツリと呟いていたが私の心には響かず、その言葉を無視し宿屋まで向かった。

次回予告


 宿屋まで着いてきたストーカーパーティーズ。金があればなんでも出来るなんて思ってるんじゃない? 私だって暇じゃないんだよ!! と張り切って言ったが、魔術書ほぼ知ってるのしかなかった……。

いい暇つぶし見つけないと……。


次回、紗夜物語7

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