特別回 七夕様
七夕
「紗夜ちゃん、これで準備完了だよね?」
「もちろん。みんなに喜んで貰えるといいね!!」
「ね!! 浴衣と甚平も用意したから絶対に喜んで貰えるよ。ありがとうね。紗夜ちゃん!!」
私は紗夜ちゃんと秘密の会議を自室にて実施していた。なんと言っても今夜は七夕。織姫様と彦星様が年に一度会う日なのだ。エルフの里でも天の川を見ることができるが、特に注目されるイベントではない上にあまり気づいていない方が多いらしい。
せっかくの大イベントなので、私はこっそり紗夜ちゃんと話し合ってお祭りを実施することに決めたのであった。
それにしても、人族がそうめんを食べていて本当に良かった。唯一用意できないと思っていたものなので、正直心配だったが、紗夜ちゃんが見つけてきてくれたのだ。天の川を見立てるためにあれ準備もできてるし、みんなの楽しい顔が楽しみだな。
ドンドン
「お姉ちゃん、入るよ!!」
ガチャ。
「もう、返事があってから入るようにっていつも言ってるでしょ。」
「えっ。もしかして、お姉ちゃん私に隠したいことでもあるの? 絶対にダメだからね。姉妹なんだからなんでも共有なんだからね。それで、もうすぐ夕ご飯の時間になってくるけど、大丈夫なの? なんにも準備してないけど……。」
「もうそんな時間か……。」
ついつい紗夜ちゃんと話し込んだり、ちょっと遠くで準備をしていた為、あっという間に時間が過ぎて外は暗くなり始めもうすぐ夕食の時間になってきている。
「サリア、これを着てお母さん達を驚かせよっか。」
「?! なにこれ可愛い!! お姉ちゃん、早く着替えてお父さんとお母さんに自慢しに行くよ!!」
サリアはキラキラと目を輝かせながら私と一緒に紗夜ちゃんに教わりながら着ていく。二人とも水玉がポツリポツリと書いてあり、色違い浴衣なのでサリアはすごい嬉しそうにしてくれた。
「お姉ちゃん、見てみて!! すごく可愛くない? それに腕の所のヒラヒラ!! ご飯の時大変だと思うけどすごい可愛い!! お気に入りになっちゃったよ。」
「サリア見てみて!!」
少し興奮している私は、ヒラリと一回転して浴衣全体をみせるとサリアはすごい嬉しそうにニコッと笑った。
「もう。お姉ちゃん可愛すぎだよ!! 絶対に私から離れたらダメなんだからね。」
「もうサリアったら。お母さん達にも早く見せよっか。」
「うん!!」
私とサリアがリビングに到着すると、お父さんとお母さんは瞳孔を開いて驚きながら私たちの服装を見てくれる。
「じゃじゃーん!! 見てみて、可愛いでしょ!!」
「可愛いわ!!」
「どうしよう。娘たちが可愛すぎて感動してる。なんでこんなに娘たちは可愛い上にかわいい服が似合うのだろう。いつまでも見ていたいな。」
「あなた。娘ばかりじゃなくて少しは私のことも見てよ。」
「もちろん。ウサはいつ見ても見とれちゃうからな。」
「あなた……。」
お父さんとお母さんが二人の世界に入ってしまったので、私は慌てて二人の浴衣と甚平を持つ。
「お母さん達の分も準備してあるから着替えてきて。お父さんがこっちで、お母さんがこっち。お母さんは私たちと色違いだからね。」
「こんなに可愛いの着れるなんて楽しみだわ!!」
「なんだか俺のだけ違うんだけど……。」
「お父さんのは浴衣じゃなくて甚平。かっこいいから絶対に似合うよ。」
「娘にそう言われちゃうと嬉しいな。よし、着替えてくるか!!」
お父さんとお母さんが着替えに行った間私とサリアは笹を準備したり、短冊を机に置いたりと七夕に大事な準備をら開始する。
サリアには浴衣に着替えた時に説明したので、順調に準備してくれてお母さん達が帰ってくる前に準備をしっかり終わらすことが出来た。
「どうかしら。お父さんは可愛いって言ってくれたんだけど……。」
「お母さんすごい似合ってる!!」
「ね!! お母さんもヒラリと一回転して、して!! お姉ちゃんがね。浴衣着ながら一回転してくれたんだけど、すごい可愛かったんだよ!!」
「それなら、するしかないわね!!」
そうして一回転してくれたが、お父さんがお母さんの虜になってしまってる。結婚して数百年たってるとは思えないほどのラブラブぶり。ほんといつまでもすごいな。
「あなたも似合っていつもより輝いて見えるわ。」
「うっそうか。」
お父さんはお母さんに言われてほっぺを赤くしながら少し照れるがそれがまた可愛らしい。
その後もみんなで浴衣や甚平を見ながら感想を言い合い幸せな時間が続いた。
「あっ、そうだ。短冊書かないと!!」
「そうだよ。短冊はね。願いを書いて外にある笹に飾るんだよ。さっきね。何も書いてない短冊を笹に飾ったんだけど、見てみて。すごいいいよね。」
「綺麗ね。私たちの願いがここに飾られてより綺麗な存在になると考えると楽しみてましょうがないわ。」
「よし、俺たちの願いも飾るぞ!!」
「「おー!!」」
私たちは席について短冊を一枚一枚思いを込めて書いていく。
「お姉ちゃんなんて書いてるの?」
「それは内緒。」
「えーっ。後で見ちゃうもんね!!」
「それなら、明日みんなで見るのはどうかしら? 今日だけじゃなくて明日にも楽しみがあるって素敵じゃない?」
「「賛成!!」」
私たちは迷いながら椅子に座り願いを込めて短冊を書いていく。
もちろん私の願いは「これからも家族仲良くいられますように」だ。
恥ずかしくて直接言葉にして言えないけれど、こうやって紙に書いていると伝えられることってなんかいいよね。
みんな書き終わってソワソワしだしたので、私たちは外に出て笹に短冊を飾り始める。
「なんだかいつも以上に星が綺麗に見えるわね。」
「今日は七夕だから、天の川が見れるんだよ。」
「天の川?」
「そう。織姫様と彦星様が一年に一回だけ会える日。あの天の川があるからこそ会えるんだよ。」
「一年に一回か。意外と会ってるんだね!!」
「でも、人族の寿命で考えると、生まれてからたったの100回程度しか会えないんだよ」
「たったの100回!! それは寂しいよ……。」
「しかも、織姫様と彦星様は好き同士。それがたったの一年に一回しか会えないって考えると……。」
「もしかして……。私がお姉ちゃんと一年に一回しか会えないのと一緒……。今日は大事な日だね。」
「そうね。私たちもこんなに可愛い格好してるんだから、二人もオシャレしてあって私たちみたいに褒めあっているはずだわ。必ず幸せになって欲しいわね。」
「そうだね。」
私たちは顔を見あげて星空に夢中になってつい夕食のことを忘れていた。
今日は七夕だから、天の川見立ててそうめんにしてある。しかも、流しそうめんだ。
楽しみながら、七夕をしっかり感じないとね。
収納魔法から予め作っておいた流しそうめんの台とそうめんを出し準備OK!!
水とそうめんを流すのは紗夜ちゃんがやってくれることになっている。
そして、私たちは楽しい流しそうめんタイムに突入した。
「行くよ!!」
「「はい!!」」
「もう、取れないよ!!」
「あっ、アリアに取られちゃったわ!!」
「次は俺の番だな!!」
私たちはおなかいっぱいになるまで流しそうめんを楽しみ、その後明日なんの短冊を書いたのか楽しみにしながら就寝した。
みんなどんな短冊を書いたのか楽しみだな。
結局ギリギリまでほぼ書いてなかったので慌てて書きました。今日中に間に合ってほんと良かった。
久しぶりのほのぼの回。
サリアたちはなんて願いを書いたのかな?