第153話 紗夜物語4
「では、ご案内します!!」
「よろしくね。」
ギルドの二階で少し待たされたあとに先程の解体場の子がやってきて宿まで案内してくれることになった。
それはありがたいんだけど、みんなが驚いていたオークとかそのまま置きっぱで大丈夫なのかな?
気絶でもしてくれれば傷つけられることもないんだけどね。
「それにしても、自分が生きている内に案内できるなんて思ってもいませんでしたよ。祖先からは、丁重に扱うように。ということしか教わっていなかったので、皆半信半疑でしたからね。」
「それにしても、よくお金を残しましたね。普通ならどこかで使ってしまうと思うんだけど……。」
「敬語はやめてください!! 私たちは助けられたという伝承。それだけあれば信じる種族ですから」
「? 人族ではないの?」
「はい。言ってませんでした? 精霊族だって……。ここら辺の方には内緒でお願いします。バレると色々厄介なので。」
「それならいいけど……。」
「それと、今回案内するお部屋は朝晩の二食もついてくるのでご安心くださいね。ちなみに、私も同じ所に住んでいるので何かあったらすぐに言ってくださいね。その際は対応しますので!!」
そう張り切って言ってくれたが、従業員でもない方にそこまでやってもらうのはなんとも言えないので頼み事はしないつもりだ。それにしても、精霊だったとはね……。人族と同じぐらいの寿命しかなかったから全然気づかなかったよ。それに、魔力も人族とほぼ変わらないし。どんな違いがあるのやら……。
ついて行きながらボソボソと考え事をしていると、少女は急に止まり、「ここです!!」 と自信満々で言ってくれた。
扉の上に木製の細長い看板があり、そこに「ゆっくり所」と書かれていた。
二階建てで、ボロいということもなければ新しいということも無い木造建築。
「どうぞ、どうぞ。お入りください。」
「なんだか店員さんみたいだね。」
「言ってませんでしたか? ここ実家です!! なんでも、祖先テルナードが助けてもらったエルフ様が泊まる場所に困った時用に建てたと伝承があるぐらいですよ。」
「……。もしかして、わたし?」
「おそらくそうかと。この建物も祖先テルナードがあなたから貰ったお金で建て、代々感謝を忘れないように。ということも伝わっております!!」
「……。そんなに思い出ないのに……。」
何か思い出があったか返って見たが、計数ヶ月連れ回したりしたぐらいだ。彼からしたら長く楽しい一日だったかもしれないが、私にとっては短いいい思い出。そこまで感謝されることでもないと思っていたので正直驚いている。
そういえば、最後に会った時次回来た時はここに訪れてくださいと言って紙渡されてたな。多分机の引き出しでも探したらあると思うけど。
「お母さん、ただいま!! エルフ様連れてきたよ!!」
「……。えっ。エルフ様?」
「お邪魔します。」
「その耳!! ホントじゃないか!! あなた早く早く!! エルフ様がやってきたよ。私たちの代で見ることができるとはね。」
「なんだよ。せっかく寝てたのにって……。マジか。どっどうぞ。おいでくださいました。おっお金はもう貰っておりますので、好きなだけ泊まってくだしい!! もちろんご飯も二食、いや三食出させて頂きます!!」
「……。ありがとうございます。」
困惑した感じに言ってしまったが、少女の両親は頭をカウンターにつけ深々と下げているのだ。
こういうことろはなんだか似てる気がするな。声がでかくて、大事な時は頭を90度下げ深々とお辞儀をするところ。そんな所が可愛くてつい連れ回したんだけどね。
そういえば、私たち種族はエルフ様と一緒に過ごせること感謝します。みたいなこと言ってたな。精霊族ってそういう種族なのかな?
「あっ。とりあえず、お部屋を紹介してくるね。」
「一番奥部屋が空いてたと思うから、そこに案内しておくれ。」
「待ってくれ。掃除がちゃんと行き届いているかもう一度確認するべきだ。」
「そんなことしていたら、待たせてしまうでしょう。そっちの方が失礼よ。」
「それよりも、ほこり一つでもある部屋に一瞬でもいるってだけで素晴らしい時間を最悪な時間にしてしまうかもしれない。リオ、見てきてくれ。」
「待たせちゃダメって言ってるでしょ。掃除は毎日してるし、そんなに汚れていないと思うから、お部屋に案内してちょうだい。リオ。」
「お父さん、お母さん……。」
「「リオ!!」」
私の部屋見たらなんて言うんだろう……。本棚に入らない本が散らばっているしホコリ満載。掃除なんて引っ越してから数回しかしてないという最悪な環境だ。
今年掃除しただけで十分なのに昨日掃除したのが気になるなんて言われたら私の立場が……。そんなに尊い存在じゃないよ。エルフって!!
それに、エルフ様っとか呼ばれてるし。ただ単に寿命が長いだけ。
どうしたらいいの!!
「お父さん、お母さん!! こんなところで揉めてる方が失礼だよ!! エルフ様、お部屋にご案内しますが、何かありましたら直ぐに言ってくださいね。掃除でもなんでもしますので。比較的綺麗にはしてますが、何か気になることがあるかもしれませんので。」
「はっはぁ。それと、エルフ様ってやめて貰えないかな? エルフってだけでそんなに偉くないし、紗夜って名前があるからそっちの方が分かりやすいし。」
「紗夜様?」
「呼び捨てでいいけど。」
「いけません!! 紗夜様でお願いします!!」
少女はそういうと後ろの両親も同じく頷いていたが、ここは様を却下させせめて「さん。」にしてもらおう。
「紗夜さんでいいかな。」
「……。どうしよう!!」
慌てながら両親を見るが両親もすごい困ってる顔をしている。押せばこのままいきそうだしおしていこう。
「紗夜もしくは紗夜さんで。それ以外認めないから。」
「でっでは紗夜さんで……。」
チラッと両親を見るが両親は冷や汗をかきながらなんとも言えない表情をしていたら。
私はにっこり笑顔で「うん。」と頷くと少しだけ空気が和やかになったので、そのまま部屋に案内してもらった。
「では、ここがお部屋になります。お腹がすきましたら何時でも降りてきてくださいね。あっ。夜の12時〜6時まではお休みですので注意してくださいさいね。」
「分かったよ。ありがとね。」
「では、失礼します!!」
「はい。」
ふぅ。疲れた。とりあえず、寝てから色々考えよう。
次回予告
久しぶりに外に出たから疲れたよ。ちょっと一眠りっと。そんな感じで一眠りに着くが事件発生?!
しかも、大丈夫ですか? みたいな声が廊下から聞こえてくる……。ということは……。
えっ。そういうことだよね?
次回、紗夜物語5 お楽しみに