第144話 大人気ピザ
やっと今日家に帰れるよ。
たった二日間だったが、サリアがお母さんに向かって少し反抗。テトラというクソガキと出会い、その兄のリロがダンジョンに残されそれを助けに行く。そして、ポシカがギルドにて捕まる……。色々ありすぎたね。
今日は家に帰る前に校長先生達にピザの作り方を教えるつもりだから、あまり王都内を観光できないかな。
学校に通った時の楽しみと考えればいいけど、せっかく来たんだからみんなにお土産とかも買っていきたい。
時間があったら、サリアとブラブラしよっと。
そんなサリアだが、ベッドが二つあるのに何故か私のベットで一緒に寝ている。
……。なんで?
昨日はしっかりと別々のベッドで寝ていたはず。しかも、夜布団がめくられてサリアが入ってくる様子を感じなかった……。
謎すぎる……。
「サリア起きて。校長先生に挨拶してピザ窯とか作りに行くよ。」
「お姉ちゃん、もうちょっとだけ……。」
私が体を起こすとサリアは太ももに抱きついて「にひひ」と笑いながらゆっくり目をつぶった。
いつもなら、このままでもいっかな。となるが、今日は予定がいっぱいいっぱいだから起こす予定だ。
もしもゆっくり寝たかったら、明日以降にしてね。
「ほら、サリア起きて。今日は家にも帰るし、それにやることいっぱいなの。ピザの作り方終わったら、みんなにお土産も買いに行かないとでしょ。それと、美味しいお店があったら一緒に食べてもいいし。」
「えー。いつもと違うところで寝てるから、なんか新鮮なんだよ。だから、もっとお姉ちゃんにくっついていたいよ。ねぇ。おねがい!!」
サリアは上目遣いで私のことを見てくる。しかも、キラキラとした目で。
やめて!!
そんな目で見られたら大体のことを許してしまうから!!
私は必死にサリアの目を逸らして言う。
「ダメ。今日やることをやらないと後で後悔することになるぞ!! 夜、やらなかったな!!って怖いお化けができゃうぞ!!」
私は両手を少しあげてお化けポーズでサリアのことを見るが、サリアは笑顔で「可愛い。」と言うだけで何一つ変わらない。
やっぱり、いつも通り私がしっかりしないとね。
「ほら、起きるよ!!」
「んっ。急に剥ぐと寒いよ。」
「ほら、起きた起きた。校長先生もう校長室で待ってるから早く着替えて行くよ。」
「あっ。ほんとだ。今日は朝から出来たてピザ♪ピザ♪ピザ♪楽しみピザ♪」
サリアは急に調子が良くなってピザの歌を歌いながら着替え始める。
そこで、私はショッキングな事件と激突する……。
「はぁ。もうブラちっちゃくなっちゃったよ。成長止まったと思ったのにな……。」
「……。」
そう。私は紗夜ちゃんの修行場所で数年いても一切変化はない上にその後も何も変わらない。
最近では縮んだのでは? と考えてしまうほどに……。
ほんと、サリアと私の差はどういうことなのか……。
「よし、着替えも完了。お姉ちゃん行こってどうしたの? なんかさっきよりも元気ないよ?」
「……。大丈夫だから、ピザ作ろっか。」
「うっうん。ん?」
サリアの頭の上には何個と?が並び全く私の心情に気づいていないご様子……。
大丈夫。だって校長先生と私は貧乳同盟なんだから!!
勝手に作っちゃったけど、大丈夫。貧乳同士は争わないから……。急に大きくならない限り……。
はぁ。
私はため息をつきながら持ってきたものを収納魔法にしまい、部屋を出て校長室に向かった。
私たちが校長室に近づくのを感知した校長先生が、もう校長室前で待っている。
それだけ楽しみにしてくれているのだろう。
私たちが校長室から見える距離になると校長先生は手を振りながら迎えき来てくれる。
「もう、十分待ったわよ。どれぐらい待ったって? ピザが楽しみすぎて一睡もできない程よ。ホントなんなのあの食べ物。お皿を洗ってしまったことを後悔したわ。お皿を洗ってなかったら、ピザが乗っていた跡を眺められたのにって。はぁ。途中何度も起こしに行こうか迷ったのよ。ってこんなこと話してる場合じゃないよね。早く作りましょう。釜も作るから、外の方がいいかしら? いや、外で作りましょう。調理場の近くに少し空間が空いてるからそこにピザ窯を作りましょうか。そうすれば、収納魔法を持っていない従業員でも苦労しないからね。よし。行きましょうか。他のみんなには、そっちで待機してもらうように連絡するわ。」
「「……。はい。」」
校長先生は表情を豊かにしながら伝えてくれた。
相変わらず元気な上に話が長い。エルフがこの学院に校長先生しか居なかったら、みんながおしゃべり大好きだと思われるよね……。実際にニーナさんにも間違えられたからね……。
そこから私たちは学食を作ってくれてる従業員の方々と合流し、楽しくピザ窯、そしてピザの作り方を教えた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていきもうピザ作りも終盤。
それにしても、ピザ窯を完成させた時の校長先生のキラキラとした目はまるで子供がおもちゃを見ている目と一緒で微笑ましかったな。
「お姉ちゃん、そろそろいいんじゃない?」
「うん。時間的にも、見た目的にも完璧!! よし、お皿に乗せてみんなで食べよっか!!」
「「はーい!!」」
私たちは個々にお皿にピザを乗せ校長先生が魔法で出してくれた机に置いて席に座る。
今回のピザは、昨日校長先生が食べたものを一人一つ作った。上の具材を変えたりするのは、学食を作ってくれてる従業員の方々が自分たちで作りたい。との事だ。
おっと、そんなことを考えてる時間があったらピザが冷めてしまうから、食べないと。
「せーの。」
「「いただきます!!」」
「!! 美味い。この見た目、香り、食感、味、全てに関して最高だ。これをどんなアレンジにするか考えることが楽しみでしょうがない。これを超えるピザを作るぞ!!」
「よし。その調子だわ。数十年後にはこのピザが学食として当たり前になって種類も豊富になるはずだわ。そうなれば、この学院にもずっと居れるし親戚にもオススメできるし、ほんとありがとう。学費免除だけじゃ足りないわ。なにかして欲しいことあるかしら。なんでも言って!!」
「学費免除も大丈夫ですよ。強いていえば、新作の試食を発売前にしたいとか、ですかね。」
「!! お姉ちゃんそれいいね!! 色んなピザが食べられるよ。もう考えただけで楽しみだよ!! お姉ちゃん、私達ももっと料理上手くなって自分たちで考えた料理作りたいね!! いつかお店も出してもいいし。」
「それいいわね!! そしたら絶対に常連さんになるわ。この学院から遠かったら引っ越してでも通うかもしれないわ。だって、こんなに美味しいピザを教えてくれたんですもの。もっと美味しい料理が出てきてもおかしくないわ。楽しみだわ。首を長くして待ってるわ。」
「もう、校長先生考えすぎ!! いつかお姉ちゃんと旅に出た時にお金稼ぐのに、少しだけ販売って形にする予定なの。それでね。それでね。余ったら、いっぱい食べるんだ!! いいでしょ。」
「ずるいわ!! その旅私も行きたいな。だって美味しい料理食べ放題なんでしょ。こないだ里帰りしたけれど、全く料理とか変わってなくて安心はしたけれど、もっと斬新な料理食べたい!! ってなったわ。そこに現れたのがこのピザ。止まらないわ。」
私たちは意見を交換したりしながらピザを美味しく頂いた。校長先生は、自分で作った一枚では足りず今日はここに籠ってひたすらピザを作って収納魔法にしまうらしい。
ほんと食いしん坊なんだから。
「私たちはそろそろ帰りますね。帰る前にお土産とか買わないといけないので。」
「あら、もう行っちゃうのね。学校が始まる前でもいつでも遊びに来ていいからね。待ってるわ。気をつけて帰るのよ!!」
「「ありがとうございました!!」」
私達は校長先生達にお別れをつげ学校を出ていった。
お母さんはお昼すぎぐらいに来るらしいので、それまでは王都観光だ。結局勇者のせいで観光所じゃなくなっちゃったからね。
よし、楽しむぞ!!
次回予告
学校での用事も終わり王都をブラブラしていると、なんと謎のエルフと出会ってしまう。校長先生と今回といい、王都ではエルフとの遭遇率が高い!!
しかも、そのエルフは紗夜ちゃんの知り合いだという……。なにか怪しい……。
次回、謎エルフ参上 お楽しみ