第141話 さよなら、ポシカ
「帰ってきやがったか。」
「やっぱり勇者がいないと王都は寂しいからな。」
「そう言いながらお前、全く心配してなかったじゃないか。」
「それは言わないお約束だろ!!」
先頭の勇者がギルドに入るだけで、ギルド内は大騒ぎ。歓迎の言葉があちらこちらから聞こえてくる。
私たちに対しても何か言ってくれるのかな? と思いながら入るが、何故か急にシーンと静かになる。
「……?」
「嬢ちゃん、ポシカのことじゃよ。」
「ああ!!」
勇者への感激の声を聞いてポシカボールを持ってきたことを、すっかり忘れてたよ。
とりあえず、みんなが静かになってる今がチャンスだしさっさと受付に行って対応してもらっちゃおう。
私たちが受付に向かうと先程の歓声でリロが帰ってきたことに気がついたギルマスがやってきた。私たちはそのままギルド内にある応接室に通された。
応接室で席に着くと同時にギルマスが、「ポシカ様のことでしょう。何かあったかお聞かせ願いますか?」 と話を振ってくれたが、ギルマスと同じ種族であるポシカのこと悪事をこれから定時するのは少し躊躇しそうになった。
「嬢ちゃん、こやつはポシカと同じ種族だがしっかりと話のわかるやつじゃ。同じ種族だからと言って優劣をつけることも無く、皆平等に接してくれる。躊躇わなくて大丈夫じゃ。悪いのはポシカなのじゃから。」
「……。分かりました。」
私はダンジョン内でポシカにされたことを簡潔に話したあとに、録画しといた動画をギルマスに見せた。
ギルマスは、私の話を聞いた感じでも切れていたが、録画を見終わった時ブチ切れて私達とギルマスの間にある机を叩き真っ二つに割った。
「すみません。私たち犬人族の象徴とも言える方がこのような行動を取っていたなんて恥でしかありません。誤解して欲しくはないのですが、犬人族はみんながみんなポシカ様のようなキレやすく、他人を無下にする性格ではありません。どうしても種族として見られてしまうことが多いですからね……。今回の件、ギルマスとして、犬人族の代表として謝罪させて頂きます。申し訳ございません。」
ギルマスはそう言いながら頭を深々と下げた。
そこにリロが駆け寄り、ギルマスをどうにか背後のソファーに座らすが、座ってもなおすごい申し訳なさそうな顔をしている。
疑似体験で犬がシュンと落ち込んだ顔に似ていて、ポシカとは大違いと思ってしまう。
「こちらこそすみません。私がポシカを誘ってしまったばっかりにこのような事になってしまいまして。」
「それは勇者様に非はございません。勇者様、今回ポシカ様がこのような結果になってしまいましたが、私たちギルドは、今後も勇者様を応援しております。頼りないかも知れませんが、何かあったらいつでも頼ってきてください!!」
「ありがとうございます。」
「後、ポシカ様の処遇なのですが、さすがに勇者様のパーティーということもあって国王の方にお話を通さなければなりません。国王様に先程のお話、そして私が見た映像を見せたいのですが、大丈夫でしょうか?」
「私は大丈夫ですが、アリアさん。その魔法の映像を見せる為に少し国王とあっては頂けませんか? 私を救って頂き、そしてお願いまでして厚かましいと思いますが、これが最後のお願いだと思ってお願いします。」
勇者は頭を私に向かって深々と下げ、その後慌ててチルも頭を下げてくれた。が私としては国王なんて会いたくない。
今回のことで少しは耳の片隅に私とサリアのことが入るかも知らないが、私が目指しているのは国王から好かれる冒険者では無く、縛りなく、自由に羽ばたく冒険者。
そのために今回の学校だって行くことになっている。その学校も今から楽しみでしょうがないんだけどね。
国王との関係を誰かから広がってしまえば、私の学園生活はむちゃくちゃなものになってしまうだろう。
そんなことは絶対に許せない。
もしもそんなことをするのなら、記憶消失魔法でもかけて私たちのことを忘れさせるつもり。
だったら、どうやって解決するのか? となってくるが、この魔法には譲渡というお得なもの付きなのでそれを利用し、ギルマスが順次この映像を見せられるようにするつもりだ。
「譲渡……。さすがはエルフ。ギルマスである私が知らない魔法ばかり使いますね。ランクはどれぐらいなのでしょうか? あっ。すみません。今回勇者様を助けていただいたのですから、ランクをあげないと行けませんね。ってもうSランクでしたら、あげられないんですけど……。」
ギルマスは私が高ランク冒険者であるように話すが、私は最低のEランクだ。しかも、ほぼ作りたてで身分証明書としての役割ばかり……。
私がスっと冒険者カードを提示すると共に、ギルマスの目ん玉が飛び出そうになるぐらい驚きながら私の冒険者カードとにらめっこする。
「あなたがEランク? どこでこの評価を受けたのですか? そこのギルマスに文句の一つでも言わないと気がすみません。本当にどんな神経をしているのか……。ん? 少し待ってくださいね……。えっ。えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
カードと私を何度も交互に見た後、一歩二歩と下がりながら足がガクガクと震え出した。
私たちは何が起こったのか? という表情を浮かべながら顔を見合わせるが誰もわかっていない……。
本当に何があったと言うんだ?
「このカード作る時、何か困ったらギルマスに見せるようにって言われませんでしたか?」
「?」
「お姉ちゃん言われてたよ!! 私も言われたかったんだけど、あの時は魔力が少なかったからね……。」
「そうだっけ?」
「そうだよ!! もう。忘れっぽいんだから。」
「「……?」」
勇者やおじいさんも私たちの話に全くついていけず頭を少し傾け頭上にクエッションマークが浮かび上がる。
「失礼致しました。ランクの方はどう致しますか? このままにしますか? それとも上げますか? 最大でAランクまではあげられます。Sランクからは国王様に申請し、国王様から授与という形になりますが。」
「そのままでいいかな? あっでも、高ランクの依頼が受けられないのか。どうしよっかな?」
「そうですね。我々ギルマスは見れるしようですが、受付の方々は見れませんのでどうしてもEランクが中心になってきてしまいます。」
「お姉ちゃんどうする? しばらく学校に通うんだから、あげたい時にあげてもらえばいいんじゃない?」
「それもそっか。」
そうして私のランク上げに関するお話は終了した。未だ勇者とおじいさんは知りたそうな顔をしているがこればっかりは黙っているつもりだ。
「はい。しっかりとポシカ様の映像受け取りました。学校が始まるまではこちらにいらしていないのですか? 事情をもっと知りたいと国王様がいいますと、聞かなければいきませんので。」
「そうですね。学校の試験が終わったのでしばらくは自分が住んでいる里にいるつもりです。」
「そうですか。勇者様、先代様はどうでしょうか?」
「ワシ達はしばらくいるつもりじゃ。こやつももっと鍛えないといけないからのう。」
「師匠。」
「わかりました。何かございましたらお願いします。」
私たちがギルド職員に言って退出することになったが、ここに来た道と違う道を通ってる。
ん? なんでかな? と思ったが、裏口に通されギルド職員から「こちらからどうぞ。表では皆さんにバレてしまいますので。」と言ってくれた。
「「ありがとうございます!!」」
それにしても、ダンジョンを出た頃は夕方だったが、王都に戻ってから色々あったせいで綺麗な星空が眺められるぐらい真っ暗になっている。
なんだか今日一日色々ありすぎたな。と思いながら学校に向かうのだが……。
何故かおじいさんに勇者、そしてチルが私たちの後をついて来ている。
まだこっそり着いてくるなら気持ち的に理解出来なくもないが、堂々と私たちの後ろを着いてきているのだ……。
ギルド内でのやり取りだと、当分会わなくていい感じだったからおじいさん以外は会わなくて大丈夫かな?って期待してたのに……。
私とサリアは「なんでかね?」と小声で話しながら歩いている内に学校の前までやってきたので、そのまま受付に進む。
「すみません。学校内に入りたいのですけど。これ受験石です!!」
「おかえりなさい。しっかりと覚えてますので、受験石出さなくても大丈夫ですよ。もう時間も時間ですので、食事を取るなら少し急いだ方がいいですよ。」
「お姉ちゃん、急がないと大事なご飯が無くなっちゃうよ!! 早く行こう!!」
私とサリアは受付の方にお礼を言った後小走りで食堂に使った。
途中気になって後ろを振り向くと、なんと学校内まで勇者達は着いてきていた……。
もしかして、本格的な私たちのストーカーになったのか……。
おじいさんも……。
次回予告
なんと、学食でハンバーガー発見?! 疑似体験以来で久しぶりの再開を果たす。なんて幸せなんだろう。とうつつを抜かすのもつかの間、校長室でおじいさん達と一緒に行くことに?! もしかして、何か悪いことやっちゃった?!
次回、よく話す校長先生 お楽しみに!!