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第137話 間違えた魔物。

 「ポシカ、身体強化をかけたから前衛を頼む。いつも通り、支援魔法や攻撃魔法で援護する。油断せずに行くよ。」


 「はいはい。いつも通りでいいってことだろ。チル、お前はいつも通り俺の後ろに隠れてろよ。お前を失えば俺一人になっちまうからな。まぁ、俺一人でも勝てると思うけどな。」


 「相変わらず嫌な言い方をする。」


 私たちからすこし離れたところで、ポシカとチルが10m程ある猿の魔物と睨み合いをしている。


 それにしても、先程の言い方からしてチルさんは体術等の心得がないのだろう。後衛だからと言って前衛までとはいかなくてもある程度動けないと何かあった時に対応ができない。それでも勇者パーティーか?

 私はつい、ため息を漏らしてしまう。

 

 とりあえずお手並み拝見かな?


 私とサリアとおじいさんはポシカ達が戦闘する場から少し離れたところに集合し、防御魔法を展開する。

 期待はしていないが、どこまでできるかな? と思っていると、チルが詠唱を始める。


 「離れ離れ、我が身を持って真髄しどこまでも続け、分身分裂!!」


 短い詠唱が終わると同時に、チルの影からチルが二人現れれ、計三人になる。魔物たちは増えたからと言って何かをするということは無く、全く様子が変わらない。


 すると、一匹の魔物が前に出てきてチル、ポシカに向かってケツを叩いて煽り出した。


 分身した二人のチルは、前に出てきた魔物に向けて火柱の魔法を撃つと火柱の中から魔物の悲鳴が聞こえてくる。

 チルはその悲鳴を聞くとニヤリと笑い、急いで凝縮した火球を火柱目掛けて撃った。

 まだ油系の魔法の方がいいのでは? と思ったが、チルの狙いはそこではなかった。


 ? と思っていると、火柱から出てきた魔物がすごい苦しそうに胸を抑えている。


 ん?


 あれは……。そういうとか?!


 多分チルは悲鳴をあげた魔物の口に火球を勢いよく投げ入れ中から焼いていったのだろう。いくら強い魔物でも中を強化している魔物は少ない。

 その性質を上手く使ったいい技だ。


 魔物が苦しそうにしていることに気づいたポシカが、胸目掛けて何度も殴り魔物は足を着いたあとに倒れたが、他の魔物は仲間が死んでケラケラと不気味に笑っている。


 明らかに何かがおかしい。


 仲間がやられた。というのにあそこまでヘラヘラとしていること。そして、ポシカ達を見てもなお不気味な笑い方を維持している事だ。

 この違和感に気がついていないポシカは、魔物が目で負えないぐらいであろうスピードで、魔物たちの顔や腹目掛けて何度も殴る蹴るといった攻撃を繰り返す。身体強化をしてもらった分いい感じに見えるが、問題は一発一発の重みが無い上に全く魔物たちの魔力は減らない。なんだかポシカの技が効いていない感じがする。

 それなのに、魔物たちはわざと痛いふりをしているようにも見える……。


 相変わらずのポシカ達はそれがわかっていないのか、目を合わせて頷いたり、少しだけ余裕ぶった態度を取りながら攻撃を続けている。


 「アイスゾーン!!」


 「よし、これで楽勝だな!! こいつらバカだから、絶対に自分たちが不利になったことに気づいてないぞ。動きが遅くなったらこっちのもんだぜ!!」


 冷気と共に地面が少し凍ると魔物はすごい寒そうに手を体に押し当てて温めようとしているのが伺えるが、一匹がその格好をしながら少しニヤッと笑っている。


 またもやおかしな状況に気づかないポシカとチルが続いて攻撃を開始する。


 「ふふ。こんなの俺様の敵なんかじゃないぜ!! もっと強いものをよこしな。そうしないと格好がつかないってもんよ。」


 「ああ。本当にそうだな。」


 なんだか私は魔物との戦闘を見ている。と言うよりも劇を見ている。という感覚に落ちる。

 魔物と戦うとなると、相手からの強烈な殺意が放たれ緊張感が走る。だが、今回はそんな様子がない。


 「アアアアアアア!!」


 「猿が怒り狂って発狂したしたぜ。能無しは叫ぶことしか出来ないもんな。この程度じゃ、俺たちの実力が測れないじゃないか。つまんねぇな。さっさと終わらすかチル。」


 「分かった。」


 「お姉ちゃん、あの二人絶対に負けるね。それに余裕を見せすぎ。相手の戦い方がおかしいなって感じたらしっかり情報を集めないといけないのに、そんなこともしないし。そもそも、おかしいこと自体に気がついてないんじゃないかな? このままだと怪我して回復しないとだけど、お姉ちゃんどうする?」


 「一回やらせてみればいいんじゃない。見た感じ、勇者なしじゃあれぐらいの魔物にも勝てないみたいだし。それを理解させる為にも。」


 「わかった。サリアはお姉ちゃんの隣でしっかりと待ってるね。」


 「よくそこまでわかったのう。最初の魔物を倒せたのはまぐれじゃろう。まぐれのせいで自信が付き、冷静に判断できていないのう。ワシとの修行中にもあれだけ注意したのにまだ治ってないとは、これは先がおもいやられるわい。」


 「おじいさんも大変だね……。」


 「はぁ。ほんとにのう。リロがいれば少しは結果が変わってたかもしれないが……。いや、あいつがいても変わらなかっただろう。勇者になったからと言って慢心して修行をサボっていたな。は本当に困ったもんじゃな。」


 「そうですね……。」


 魔物たちは発狂したが、発狂しただけで他に何もしなかった。ただのエンタメようにしたような感じがふる。

 魔物たちはその後も弱いふりを続けわざと攻撃をあたりにいき、ついに身体がボロボロになってきた。

 ポシカ達はわざとされていることに気づいた様子がなく、相変わらず余裕をかましながら攻撃をする。


そんな時、魔物がとんでもない行動に出る。


 「キィィィィ!!キッキィ!!」


 「キキ!!」


 「おいおい、命乞いか?」


 魔物たちは土下座をして命乞いと思われることをしだしたのだった……。


 ……。


 どうして……。


 ポシカ達は魔物が土下座してきたことをいいことに、ポシカは魔物の頭に足を置き足をグリグリと動かし魔物の頭を地面に擦り付ける。


 一応言っとくけど、勇者パーティーだからね……。現状理解しているのかな?


 「チル。ここらで終わりにするか。案外楽勝だったな。こんな魔物程度なら、俺たちの相手じゃないぜ!!」


 「ポシカ、魔物相手でもそれはやりすぎだ。もっと誠意を持って相手するべきだ。慢心していると、いつか痛い目に合うぞ。」


 「合うわけないだろ。だって俺は勇者パーティーのポシカだぜ。ここらの魔物ぐらいじゃ、指一本で倒せるって。ハハハハ。」


 完全に油断している事を確認した瞬間、地面に顔が擦り付けられてる魔物の顔が一変し今まで見たことが無いスピードで起き上がりポシカの顔面にパンチを一発食らわす。

 しかも、ポシカのパンチとは違い、しっかりと重み、スピードを兼ね揃えてるパンチだ。

 慢心していたポシカは気づくことも無く吹っ飛ばされ、壁にぶち当たりそのまま倒れる。


 「ポッポシカ?! アッ!!」


 ポシカだけではなく、異常なスピードでチルの目の前にやってくると同時に腹に強烈なパンチを左右連打で入れる。

 計六発ぐらい高速で入れられ、チルは吹き飛ばされる。

 魔物はと言うと、片方の拳を前に出した状態でその場に残ってカッコづけていた……。


 「大丈夫か!!」


 おじいさんはすごい心配しそうな声を発すると共に私の決壊から出そうしたが、私の決壊はそんな簡単に壊れることなくおじいさんは結局助けに行くことが出来なかった。


 「おじいさん、大丈夫だから。」


 「何が大丈夫なんじゃ。あれじゃ見殺しにしろと言ってるのと変わらないじゃないか!! 確かにお嬢ちゃんたちに嫌なことを散々してきた彼らじゃが、殺すまでする必要があるか?!」


 「大丈夫、大丈夫。危なかったら、私が助けるから。」


 「それが今なんじゃよ!! 早く助けなければ命が!!」


 「分かったよ……。助けに行くから、絶対にこの決壊から出ないでね。それと、二人には死なないように回復魔法とかこっそりかけてるから大丈夫だから安心して。」


 「えっ。」


 魔物たちを見ると、一瞬シーンと静かにした後に両手に上にあげて馬鹿みたいに手を叩きながら笑いだした。


 「キィキィ。キッキキキィ。」


 「キッキッキ!!」


 「「キッキッキッキッキ!!」」


 はぁ。やっぱり私たちが着いてきて良かった。私たちが居なかったら、勇者を助ける前に死んで生還者0で終わってたよ。


 私が決壊から出ると同時に、ポシカの方がチルより先に起き上がる。


 立ち上がった瞬間、魔物が勢いよく走ってポシカの腹を膝蹴りを高笑いする。

 普通ならポシカが飛ばされると思うが、ポシカの後ろは壁。しかも、ポシカの力が抜けて倒れないようにポシカの背中の服をしっかりと持っている。


 「グボぅ。」


 口から血を出すポシカに対して、ケラケラと笑いながらポシカを空中に投げバク転をして顔面に飛び蹴り。


 それを見た仲間がケラケラと笑いながら拍手喝采。


 せっかく回復したポシカだが、何もしなくても後数分で死んでしまうぐらいボロボロになっていた。


 近くでポシカの様子を見たチルが怯え出すが、それを楽しそうに魔物達は見て、餌食が変わる。


 高速でチルに近づき、チルの頭を持って壁にめり込ませながら走り回る。チルは一瞬で意識がなくなり、体から力が抜ける。途中でそれに気づいた魔物はつまらなくなったのか、ポシカと同じところにチルを投げた。


 ふぅ。ここまでかな。


 魔物達はニヤニヤしながらあえてゆっくりと進んで来る。


 「すまんが、ワシか処理させてもらう。これ以上二人が傷つくのを見たくはない。助けられる命も助けられなければ元でも勇者として恥じゃ!! そもそも、こやつらは本来40階層から現れる魔物。ここにいる時点で運の尽きじゃ!!」


 「おじいさん慌てすぎ!! ほら、お姉ちゃんがもう二人の前にいるでしょ。絶対に大丈夫だから。それにまた回復魔法してあげてるし。おじいさんこそ、すこし冷静になって。そうじゃないと疲れちゃうよ」


 「……。えっ。いつの間に……。」

 頑張ってお姉ちゃん!!」


 「……わかったよ。」


 魔物は女が来たと舐めているのか、手を叩きながら爆笑……。

 本当にイラッとくる笑い方にそのウザイ顔。

 一生見たくないな。

 はぁ。


 猿って動物的本能か備わってるって聞いた事あるな。

 ちょっと試して見よっと。


 後ろの二人は意識がないから多分影響を受けないはずだから大丈夫だよね。私は今まで小さくしていた魔力を出力させる。いつも隠している魔力だが、こういう時に便利なのだ。

 どちらが上なのかを一瞬で判断できるいい材料。


 私が魔力をあげていくと、魔物たちの顔は暗くなり最終的に怯えながら一歩、また一歩と後方に下がって行く。

 ここから逃げ出す訳にも行かないので、私は一瞬で決壊魔法を貼り私たちがいる空間から出れなくする。


 ふぅ。よくわかってるじゃん。対抗してはいけない相手というもの。もしかしてポシカの何倍も賢いんじゃないのかな?


 そう思いながら次の工程に移る。


 私は一瞬で身体強化をするが、足だけ他の部位より二倍かける。

 そして、魔物たちが全てはいる横一直線目掛けて勢いよく蹴りを入れ、足から出た魔刃が魔物に向かって飛んでいく。


 最初の一匹目に当たった瞬間、上半身と下半身を真っ二つになるが、それの様子に気づき逃げようとする魔物たちを次々と上下別れさせ魔物退治終了。

 魔物たちを斬る時に魔刃の勢いが良すぎて魔物たちの血がこっちに飛んで来たので私はテレポーテーションでサリアのいる位置に移動し返り血はポシカとチルにドバっとかかった。


 私が出番になった罰ということでね。


 「……。これで終わりなんじゃな……。あの魔物がいとも簡単に倒すとは、ワシが本気を出したところで軽く足なわれるだけじゃな。それにあの魔刃、ワシも思いついてやってみたが、なかなか出来ず、結局何十年もたってやっと完成させたものとほぼ同じじゃ。才能の差というもんかのう……。もしかして、こっちの嬢ちゃんもできるのか?」


 「こっちの嬢ちゃんじゃなくて、サリア!! もちろんできるけど、あれぐらいの魔物ならあのぐらいがちょうどいいよ。それにしても、あの二人弱すぎじゃない? 本当に勇者パーティー?」


 「勇者の加護のおかげじゃろう。一緒にパーティーを組んでる者の体力や魔力その他もろもろを上げる効果があるのじゃ。それに頼っている内はまだまだひよこじゃのう。」


 「お姉ちゃんが一応回復魔法かけてくれたから、意識覚ますまでほっといていいかな? さすがに自業自得だからね。目を覚ますまで休憩して、覚ましたら出発にしようよ。」


 「ああ。そうするかのう。」


結局二人とも目を覚まさないので、魔法で無理やり目を覚まさし状況を伝えすぐに出発した。

二人共すごい疲れて足取りが悪くなっていたが、そんなの関係ないよね。


 その後魔物はぼちぼち現れたが、私とサリアが倒したのでその時間二人はゆっくりできたはず。


 次は28階層か。


 どうせ30階層の主はこっちで倒すんだから、それまでまたやってもらうかな。

 倒されないといいけど……。

次回予告


あんだけ大きな口を叩きながらボコボコにされたポシカ。相変わらず学習能力がゼロでまた私たちに噛み付いてくる。

ああ、ほんと鬱陶しい!! またあのボールの中に入れてやる!!


次回、またポシカボールへ。 お楽しみに!!

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