第125話 勇者の弟テトラ参上?!
「二人とも気をつけるのよ。頑張ってね!!」
「ありがとう!!」
「……。ありがとう。」
サリアは未だに不貞腐れていて、お母さんに対する対応も素っ気ない感じで別れを告げ学校の正門に私たちは向かっていった。
ここで収納魔法を出すと色々とまずい。との事だったので、私とサリアはここに来る前に受験票(謎の石)を手に持っている。
はぁ。あの事件があったから、ちょっとサリアとも気まずいな……。それに、私に対してもいつもよりも素っ気ない感じだし。
私は、そんな考え事をしながら正門にある受付に到着する。
「すみません。試験を受けに来たものですが。」
「試験ですね。それではこちらの石に受験石をかざしてください!!」
「はい。」
私は受験石と言う受験票をかざすが、何も表示されていなかった。
疑問に思い、一度話した後にもう一度かざしてみても何も反応もない……。
受験出来ない事件?! と私が焦っていると
「大丈夫ですよ。表示はこちらでされていますので!!」
「良かった。ありがとうございます!!」
「いえいえ、それではもう一方お願いします」
「はい。」
サリアも受験石をかざし、受付の方がOKを貰ったあとに校内の案内図と部屋の鍵を貰った。
「では、頑張ってくださいね!! 良い一日を」
「「ありがとうございます。」」
そうして私たちは受付から離れて地図に記載されている学生寮に向う事になった。
「サリア、もういじけないの。サリアの意見もわかるけど、」
「もういじけてないもん!! だってみんなのことを思ってやったどけなのに。なんでサリアか怒られなくちゃいけないの? もういいもん!!」
「サリア……。」
絶賛怒り中のサリアはほっぺを膨らましながら、私の前を先行して少し早歩きで進んでいく。
はぁ。今日は一緒の部屋で寝るから少し気まずいな。
それにサリアは一日寝たぐらいじゃあ気分を変えないから明日も少し怒りながら参加するだろうな……。
力の加減とかミスとかみすらなければいいけど……。
気まずい雰囲気の中女子寮に向かっていると、何やら男と女が揉めている声が聞こえてくる。
……。
今サリアで体いっぱいだから、私に気づいても反応しないで欲しい。という気持ちを抱きながら近づいていくと、声が鮮明に聞こえてくる。
「俺はあの勇者の弟だぞ!! 何故俺の部屋に女の一人や二人いないのだ!! さっさと手配しろ!! 俺ら兄弟の顔に泥を塗るつもりか?!」
「そうはおっしゃいましても、学校側としてこれから入ってくる生徒を守らないといけません。いくら勇者様の弟君でも」
「この王都出身のリロの弟だぞ!! この王の名を受けて勇者になった弟だぞ!! 俺に逆らうとどうなるかわかっているのか? 学園の一つや二つ潰すことぐらい容易いんだぞ!!」
「それは……。」
「「……はぁ。」」
私とサリアはため息をした後に顔を合わせて苦笑いをした。
なんぱ野郎(勇者)は性格的に最悪と思っていたけれど、まだマシだったんだな……。
自分の家族がすごいとそれを自分のように誇示する存在がいると聞いたことがあるけど、本当に実在するとは……。
関わりたくないが、未だに女子寮の前で揉めているので、絶対に私たちに飛び火するだろうな。
それにエルフは美貌で狙われやすいってお母さんとか言ってたし……。
はぁ。
「お姉ちゃん、やっぱり勇者は嫌いだよ。」
「勇者の家族は勇者以上に嫌いになりそう。まだ何もされてないけど。」
「分かるよ。ほんとにね。」
私たちがコソコソと話していると、勇者の弟が私たちに気づきニヤケながらこちらに向けて歩いてきた。
サリアが対応すると、事件発生するから私が対応しないとか。
私は先行しているサリアより少しだけ前に出る。
「君たちも試験を受けに来たのかい? もし良ければなんだけど、今晩ゆっくり勉強会でもどうかな? 先程の声が聞こえてしまっているかもしれないけれど、私はあの勇者の弟でね。小さい頃から教養をつけられてきたのだよ。もし私が教えても成績で落ちてしまったら、こっそりと受からすこともできるが、どうかな?」
「「……。」」
勇者の弟は、私たちを見ながらいやらしい顔でニヤニヤとにやけている。
そんな勇者弟は、サリアの体型を凝視すると「ナイスバディ!!」とか言いながらすごいエロい目で見てきた。
何がナイスバディだよ。
私はイラッとすると同時にお母さんに言われた実力を隠せという言葉を思い出す。
お母さんがサリアに言ったみたいに、自分の実力がバレてしまう魔法は使えないし、ここで威圧をしたら先生もとばっちりを受けてしまうかもしれない。
はぁ。やっぱりあの魔法しかないか。
「イルージョンファントム」
「……。はぁ。はぁ。はぁ。ああああああああぁぁぁ!!」
先程までにやけていた顔が、一気に真顔になりその後膝をつきながら頭をむしり悲鳴をあげ始めた。
先生は何が起きたのか理解出来ず慌てているが、私が私は小声で幻術魔法を唱えたのだ。
幻術の内容は、今まで関わってきた女がゾンビになり勇者弟を襲ってくるというたわいもない内容。少しイラッとしたので誰かが勇者弟を殺しにくる幻術にしようか迷ったが、お母さんの言葉を思い出して却下した。
こんなに反応するんだったら、どちらでも変わらなかったのでは?
「はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。」
息も上がって来てる上に、先生が「大丈夫ですか!!」という心配の声も一切ない届いていない。
「ああああああああぁぁぁ!!」
「テトラ君!!」
テトラ(勇者弟)は、顔を上げながら顔、頭をむしり続けている。
その光景自体も恐怖映像だが、先生はなんでこんなことになったのかが理解出来ていないので、すごい慌てている。
とりあえず、医務室の先生でも呼んでくるかな。
「医務室の先生はどちらにいますか?」
「男子学生は男子学生寮にありますので私が運びます!! 協力ありがとうございます!! バルバルーン!!」
先生は、テトラを浮かばして急いで男子学生寮に向かっていった。
……。やりすぎたかな?
次回の予告
テトラと言う変人のおかげで、自分がどんなことをしてしまったのか気づいたサリア。テトラが原因っていうのは許せない気持ちと、サリアが気づけて嬉しい気持ちで少し悩んでしまうアリア。そんな彼女達は、一切勉強をしていないテストに向けて時を進めている。
大丈夫なのか?!