第122話 魚ぶっ刺さりパン……
「すごいよ、すごい!! お母さん、お姉ちゃんすごいよ!! 早く見て、見て!!」
「慌てちゃダメだよ。」
「分かってるよ……。」
私たちがやってきたパン屋さんは、フルーツサンドといったデザート系から見慣れているものまでなんでも揃っているパン屋さんだった。私達は先程ケーキを食べたので、デザート気分だからつい目が奪われてしまう。
フルーツサンドか……。
これは買わないとね!!
私たちはトレーを個々に持って欲しいパンを選んでいく。
まずは苺が入ってるフルーツサンドでしょ。王道の卵サンドでしょ。ここは、漬物サンドがないのか……。じゃあ、こっちの野菜マシマシサンドでも買っていこっか!!
私がサンドイッチコーナーなら目が離せない状況が続いていると、ふとサリアから話しかけられる。
「お姉ちゃん!! もしかして、これって生クリームじゃないの?! しかも、中の生クリームを隠す蓋もパンでできてるみたい!! 私これに決めた!!」
「?! もしかして……。」
私は振り返りサリアの方を見ると、そこには懐かしの物がサリアのトレーに置かれていた。
?!
もしかして!! と思い商品名を確認するとシュークリームと書かれている。しかも、私が好きなシュークリームの方!!
疑似体験でもあったが、絞って中に入れるタイプとパンの部分、生クリームや苺、パンの部分と言った感じの層になっている二種類があって、このお店では後者が置いてある。
食べると生クリームがこれでもか。と言うぐらいはみ出る感じがたまらないんだよね!!
私もこれ決定!!
あとはどれに……。
どうしよっかな? と迷っていると、何故だか後ろから圧を感じる……。
これは威圧系では無い……。
誰かに見られている訳でもない……。
お前の正体はなんだ!!
私は、急いで振り返るとここにもあのパンが置かれていた……。
あの街しか出会わないと思っていたのに。しかも、人気No.5って書いてある札付きだ。
その名は、魚ぶっ刺さりパン!!
名前の通り、ロールパンみたいなものに秋刀魚のような焼き魚が刺さっている独特なパンなのだ。
以前食べたところ、想像以上に美味しかったが、もう出会うことはないだろう。と思っていた為少し驚いている……。
もしかして、こっちの世界ではこのパンが人気なのか?
それとも、どこかの種族がこれを目当てにパン屋に通うほどなのか?
未だ謎が増えるばかり……。
私はそんな魚ぶっ刺さりパンを無意識に自分のトレーに入れ他に欲しいパンを探す続きをした。
「ありがとうございました!!」
「せっかくだから、街の外に行ってピクニック感覚でパン食べない?」
「「賛成!!」」
私たちは街から少し離れた草原に敷物をしき、そこでパンを食べることになった。
いつも見慣れている光景だが、なんだか今日は別の光景に見れる。
ひと段落ついて安心したからかな?
私はパンを収納魔法から出して、食べようとすると……。
「!! お姉ちゃんまたそのパンにしたんだ。相変わらず独特の見た目だね……。味は美味しかったから、謎のパンって勝手に呼んでるよ。頭まで食べるんだから、本当に変わってるよ……。」
「そうわね。それにしてもアリアがそんなに気に入っているのなら、里のパン屋さんにも売ってもらうように交渉でもしたらどうかしら? ピザを教える代わりに。とか言えば絶対にやって貰えると思うわ。」
「……。多分私しか買わなくてその内なくなりそうだよ。」
「それもそうね。今度、街までパンの視察しに行くって言ってたから、戻ってきたらあるかもね。」
「そんなこと言うと、本当に売りそうだよ」
「えー。絶対ヤダ。」
そんな何気ない会話をしながら、私は魚ぶっ刺さりパンを頬張る。
うん。相変わらず美味いが、どこか認めたくないんだよね……。
私がなんとも言えない気持ちで魚ぶっ刺さりパンを食べていると、お母さんとサリアが「私も食べたくなってきた!!」 と言って自分の収納魔法から魚ぶっ刺さりパンを取り出し食べ始めた……。
我が家では大人気商品になりつつある謎の魚ぶっ刺さりパン……。
なんとも言えない気持ちで私はパンを食べ終え、本日の修行終了になった。
「ほとんど街観光で終わっちゃったね。」
「それも旅の楽しみだから、しょうがないだろう。とりあえず、ディーロが帰ってきたら試験日決めるか。」
「「はーい」」
お父さんが帰宅後試験日を決めたが、なんと明後日になった。
ペーパー何も勉強してないよ!! と言ったが、エルフなら誰でも通過できる試験になっているから大丈夫との事で、どんな問題が出るなどは一切教えてくれなかった……。
とりあえず、明日から前乗りする予定だ。
よし、試験頑張るぞ!!
あるアニメを一度見ると止まらなくなってしまう。
そんな小説を書きたい。書きたいんだ!!
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