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第121話 サリア初めてのケーキ

 「……。もしかして、ここは……。」


 なんで忘れていたんだよ。あの存在を……。


 私はあるお店の前に出ている旗を見て体が止まってしまう。目が奪われて体が無意識に動かなくなってしまうこの感覚……。忘れていたよあの存在を。

 そう、疑似体験時に好きで好きでしょうがない上に、ストレスが溜まった時に食べるとすぐに解消してくれる最高の一品……。


 「そうなんだよね。お姉ちゃんはどう思う?」


 「……。」


 「お姉ちゃん?」


 私以外の二人は私が止まっていることに気が付かずに歩いていたが、私に話しかけても返事無いことに不安がって振り返る。

 二人が振り返ると、私が目を輝かしてのぼり旗を見ているのを見て、サリアが慌てて私の隣にやってくる。


 「お姉ちゃんがそんなに気になるなんて、絶対にこのお店何かあるよ!! お母さんも早くこっちに来て!!」


 「走ると転ぶわよ。」


 「大丈夫だよ。お姉ちゃん、このちょこケーキ?って何? ケーキはこないだ美味しそうだねって話した料理だよね?」


 「そうそう。私たちが見たのはショートケーキ。それは生クリームを多く使ってるんだけど、こっちはチョコレートケーキでね。甘いチョコレートがケーキとの相性抜群だし、口の中でゆっくり溶けて口いっぱいにチョコの風味が広がっていく感じが忘れられなくなるんだよ。それに、このお店はチョコケーキ以外にも色んなケーキが売ってるみたいだし。ちょっと寄っていかない?」


 「生クリーム?! 賛成!! お姉ちゃんがそんなに好きな料理なんだから絶対に美味しいよ!! 早く食べたいな。お母さんもいいでしょ?」


 「もちろんよ。」


 「パン屋の前にちょっと寄り道。出発!!」


 「「おー!!」」


 そんな感じで私たちはケーキ屋さんに入ることになった。


 「いらっしゃいませ!!」


 「おお!! すごいよ、お姉ちゃん!!」


 目を光らせながら興奮するサリアだが、だれでもそうなってしまうだろう。なんて言ったって、目の前には多種多様のケーキがガラスケースの中に飾られているのだから。

 それにしてもすごいな。ショートケーキを始め、チョコケーキ、ミルフィーユ、モンブランまである。


 おっ。あれはショートケーキの一番下の層をタルトにした私が好きなケーキ!! チョコケーキと迷っちゃうな。


 私たちが入口で迷ってると、後ろからお客さんがやってきたので、急いではけて三人でガラスケースの中のケーキを楽しみながら見る。


 「食べてもおいしそうなのに、こんなに綺麗な見た目をしているなんて……。全く想像もできないわ。これが、アリアが言っていたチョコケーキね。」


 「お姉ちゃんが言ってたのは黒色だね。私はこっちの本で見たショートケーキが食べたいかな? だって、こないだのホットケーキの時に食べた生クリーム美味しかったんだもん。今度家で作る時にどっちが美味しかったか競いたいもん!!」


 「お店で作ったケーキは、私たちが考える以上に美味しいんだよ。職人さんが一つ一つ丁寧に作ってるからね。あと、秘密のレシピもあるらしいよ。」


 「秘密のレシピ!! なんかケーキ屋さんはかっこいいね!!」


 サリアは店員さんの顔をみて、「なんかかっこよく見えてきた!!」 と興奮気味で言っていた。

 疑似体験時では、女の子のなりたい職業ランキング上位なぐらい人気職だからね。私にもなりたかった時期があったぐらいだし。まぁ、あのころは毎日ケーキが食べられる!! しか考えてなかった気もするけど……。

 それにしても迷っちゃうな。冒険者ギルドでお金も入ってる事だし沢山買えるけど、迷う時間も楽しいし……。今回は一人三つまでかな?


 「お母さん、一人三つまででいい?」


 「そんなに少しでいいの? 時間が進まない収納魔法があるんだから、好きなだけ買えばいいじゃない。しかも、こんなにも綺麗なのよ。里で誰かにおっそわけしたら驚かれるわ。」


 「そうだよ、お姉ちゃん。いっぱい買おうよ。」


 「それもいいんだけど、また来る楽しみになるでしょ。それに、その方が旅も頑張れるかな? って思って。」


 「お姉ちゃんすごい!! 賛成!!」


 「ほんと、アリアはよく考えるわね!!」


 そうして一人三つ買うことになったが、問題は何を買うかだよね。チョコケーキと下層がタルトになってるショートケーキは決定っと。

 あとはなどうしよっかな?


 私が迷っていると、サリアはガラスケースに顔を近づけて、「これが美味しそう。いや、こっちも。」とすごい楽しそうに選んでいる。

 お母さんも子供みたいに少しはしゃぎながらケーキを見ているのが印象的だ。


 その後、私たちはじっくり考えて各々ケーキを選んだ。


 「こちらにイートインコーナーありますが、どう致しますか?」


 「「イートインコーナー?」」


 「はい。買っていただいた商品を食べるところです。2階がイートインコーナーになっておりますので、良ければお使いください。」


 「「はい!!」」


 「早速ケーキが食べられるよ。楽しみだね!!」


 サリアはすごい嬉しそうな顔で私たちのことを見てきた。それほどケーキが楽しみなのだろう。

 初のケーキ!! 私もあの感覚に戻ってみたいな。まぁ、目の前に初めてケーキを食べる方がいるのだから、それを見れる私も相当な幸せものだろう。


 「では、こちらがケーキです。ありがとうございます!!」


 サリアかケーキが入っている箱を受け取ると、胸元まで持っていき、「ふふふ」とつい声が漏れている。


 「早くイートインコーナーに行きましょうか。」


 「「はーい。」」


 「ケーキ♪ケーキ♪可愛いケーキ!!」


 サリアはルンルンな気分で階段を上がり机が並んでいるイートインコーナーにやってきた。ちょうど階段から上がった席が空いていたのでそこでケーキをいただくことに。

 このお店のイートインコーナーは、店員さんがお皿やフォークを持っ来てくれて、各自一階で買ったケーキをお皿に乗せるシステムになっている。

 私たちはお皿を貰い、これからケーキを乗せる。


 「私はね。ショートケーキを今食べるんだ!! みんなは?」

 「お母さんは、このモンブランにするわ。」


 「私は、フィユタージュにしよっと!! もちろんみんなでシェアするよね?」


 「「うん!!」」


 私は迷った結果生クリームといちごが間に入っているフィユタージュにした。フィユタージュとはなんぞや? という方に向けて説明すると、パイとパイの間に生クリームやいちごを挟んだケーキなのだ。


 「では、」


 「「いただきます!!」」


 フォークでケーキを切るとサクッという音と共に1口サイズに切れる。パイが少し崩れてお皿に散らかるのを見ると、何故か安心するような感覚を覚える。


 パクっ。


 ん!! 美味しい!!


 ケーキ本来の美味しさもあるが、このサクサク感がたまらないんだよね!!


 もう一口、また一口と手が止まらなくなる、この感動感!!


 ああ。幸せ。


 私だけでは無く、サリアや、お母さんも自分のケーキを食べ、幸せそうな顔を浮かべていた。


 その後、みんなでシェアをし幸せな時間を過ごしたのであった。


 「よし。パン屋に行くぞ」


 「「おー!!」」


 私たちは幸せな足取りでパン屋に向かったのであった。

 やっぱりケーキは幸せをくれる最高の食べ物ですよね。

子供の頃はお祝いごとしか食べられずすごい特別感がありましたが、成長するにつれて食べたい時に食べられるものになってしまいました。

あの時の感覚を取り戻したい。あの喜びと美味しさ。なんと言っても記憶のピースとして刻まれる。


大人になるって寂しいな。と思いました。



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