第111話 悲しみは吐き出さないと……
私たちはサリアとお母さんがいる森の中に戻ったが、サリアは泣き止まず子供の時のようにおかあさんにぎゅっと抱きつきながら話さない状況だった。
「おかえりなさい。今日はもう帰ってもいいかしら」
「そうだな。このまま帰るとしよう。さっきアリアにも言ったが、当分旅はお休みにするつもりだ。魔物とあまり戦ったことがない状況でこんなことに巻き込まれるとはな……。」
「そうですね……。」
話が終わると紗夜ちゃんが詠唱を始め、その後いつも通り自宅の玄関に到着した。
サリアはお母さんに抱きついたまま転移したがその後すぐ泣きながら自室に戻って行ったが、すごい悲しそうな背中だった。
こういう時どういう言葉をかけたらいいのか……。
「とりあえず、私たちはリビングに行きましょう。」
「……。うん。」
アリアとウサと紗夜(ぬいぐるみ状態)はそのままリビングに行きいつものテーブル席に座る。
いつもなら明るい雰囲気を醸し出しているが、現在はなんとも言えないドロっとした空気感が漂っていて、誰も話しかけられる雰囲気では無い。
少しでもサリアに元気になって欲しい。
私が何かサリアのためにできるとなったら料理だ。
まだサリアがまだ食べたことの無い美味しい料理、好きな料理を作って少しでも落ちついてもらうしかない。
ただ、料理美味しい料理を食べたからってあの事件を忘れられることでもない。
それは、私だってそうなのだろう。
思い出すだけで寒気が止まらない。
こんな気分で作ったら美味しいものも美味しくなくなる。
頑張れ私!!
私は気分を変え、料理本をペラペラめくっていると、プリンに目が止まる。
そういえばこないだ頑張ったご褒美で作るって話したっけ。
よし。
これに決定だ!!
待っててサリア!!
私はお母さんと紗夜ちゃんに提案しプリンを作ることになった。
その際紗夜ちゃんから時空間魔法を教えてもらったので、料理の待つ工程が無くなり以前よりスムーズに進めることが出来た。
一気に四個作れる工程を4回繰り返し、計16個作ったので、ピッタリ分けても4回は食べられる。
生クリームや果物は前回のものが残っているのでそれを代用するつもりだ。
結局お昼ご飯も食べられていなかったので、私はプリンアラモードを作り、それを持ってサリアがいる部屋にノックする。
「サリア、お姉ちゃんだよ。お腹すいてると思ってプリンアラモード作ったんだけど、食べる?」
「……。」
「入口のところ、中に入っても大丈夫?」
「……うん。」
私はプリンアラモードを持ちながら中に入るとサリアはベットの上で布団にうずくまっていた。
返事もいつもと違い小さくよわよわしい返事……。
私はプリンアラモードを机に置いて、サリアの顔の近くまでやってきた。
「お姉ちゃん……。お姉ちゃん!!」
サリアは泣きながら私に抱きついてきた。
いつもより強く抱かれているはずなのにどこか弱々しい。
サリアの「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と言いながら泣き叫ぶ声が部屋いっぱいに響いた。
それにどう反応をしたらいいか分からずにいた私だが、次第にサリアの頭を撫でながら「大丈夫。大丈夫だよ。」と言いながら慰めていた。
私も疑似体験の時に辛い思いをした時、誰かに慰めて欲しかった。
一人になりたい!! と思っていたが、それは自分を強く見せるための自分への嘘であり本当は心細かった。
信頼している方に「大丈夫」たったその言葉だけでいい。
それが聞きたい。
聞かせて欲しい。
安心させて欲しい。
私をこの渦から救って欲しい。
助けて。
そう感じていた。
姉妹で同じ事を考えているのなら、サリアもそうだと思う。
今は、焦らず私の胸で思うがまま泣いて。
その泣き声はリビングまで聞こえており、お母さんは少し安心したような、寂しいような、悲しいような顔をしていた。
紗夜ちゃんは未だ自分がぬいぐるみ姿であることを忘れるぐらいサリアのことが心配であった。
「紗夜さん。私はやっぱり親に向いてないのでしょうか? 娘二人も悲しい思いをさせ、母親として助けられませんでした。結局サリアを助けられたのはアリア……。私は……。私は……。」
「母親だけが全ての答えを持っている訳では無いから安心して欲しい。姉妹だからこそ解決出来ること。分かち合えること。そんなことも子供の時あっただろう。二人が心配なのはわかるけど、それを自分のせいにしないで欲しい。私は孤独の身であったが故に誰かを育てる大変さを理解しているつもりだ。長年生きていれば嫌でも話を聞くからね。それを全うしているウサは立派な母親だよ。」
「そうでしょうか。」
「ああ。ここはアリアに任せて、サリアが降りてきた時、元気になり始めた時にいつも通りの母親の姿を見せた方がら安心するのではないか? 母親の姿ってなんだか安心するからな。」
「そうですね。私も今まで忘れていましたけど、母親の姿ってなんだか安心して心が温かくなりますね。私もそっちの存在になっていたのですね。」
「ああ。頑張れアリア。」
目に涙を浮かべながらぎゅっと我慢したウサに、紗夜は小声で「大きくなったな。」と少し悲しそうに言った。
サリアの様子だが、アリアに抱きついてからずっと抱きついたままで声を上げて泣いている。
心というものは強く見せたがるが、本当はガラスのようにすぐにヒビが入り弱い存在なのかもしれない。
最近ぼちぼち手直ししてますが、特別編はしない予定です。
これは、その場のテンションを大事にしたいというただの私のわがままです。クリスマスverなら、クリスマステンションで書いてますので、そこを修正するのはな……って感じですね。
もうすぐ、念願のピザ作り予定!!
乞うご期待!!
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