第107話 ひとりにしないで
あれから数日、いつも通り何も無い旅修行が続き今日も旅修行が始まった。
いつもなら、長老のところで修行するが、本日は休みのため早く旅に出られる。早く村などの建造物みたいな……。
旅が乗り気でなくなったサリアだったが、プリンが頑張ったら食べられる。 ということを頼りに今のところ頑張っている。
今は、紗夜ちゃんから言われた通り魔法をあまり使わなくり、しりとりをする余裕すらない。
エルフ特有の魔力視も紗夜ちゃんの魔法によって阻害され、他の種族と同じような感覚で旅をしている。
今まではどこら辺に的が現れるか一発で分かっていたから本当に大変だ。ドキドキが止まらない。
これも旅の楽しさなのかも……。
「二人とも魔力探知ができなかったり魔法を使えない感覚はどうかしら?」
「魔法に頼りすぎてたって言うのが分かるよ。でも、魔法を使えない頃に戻ったみたいで少し楽しいけどね!!」
「それもあるけど、やっぱり不安かな。何かあった時に対処が取れないから、ドキドキが止まらない感じだね。」
「それが旅よ。ドキドキ感が大切なのよ。場所によっては魔法が使えない場所もあると言われているから、今のうちに慣れとくといいわ。もちろん、私は行ったことないけど。」
「それってどこにあるの?」
「……。紗夜さん!!」
「厄介な魔王城ぐらいじゃないか。そもそも魔法を使えなくすること自体が相手にもふりに動くからね。」
「だから、体術とかも勉強したのか!! 私たち弱点無しだね!!」
「でも、魔法使えなくて結構キツくない?」
「キツイかも……。もっと頑張らなくちゃね!!」
私とサリアは周りの状況を確認しながら話していると、やっと遠くに村みたいなものが見えてきた。
……。
うん?
なんだか、煙が出てるけど大丈夫なやつ?
「紗夜ちゃん、あの村から煙が出てるけど、大丈夫?」
「? ちょっと待って。」
「……。」
「!! 急いであの村に行くぞ。距離的に転移するより自分の足で行った方が早いだろう。馬たちを契約魔法で戻し、馬車を収納魔法に入れて行くぞ。」
「「はい!!」」
私とサリアは急いで手綱で指示をだし、マウとユンを停止させる。
本当はありがとうと意味込めて人参でもあげるのだが、今回は緊急事態。
また後でね。
私とサリアが馬から降りて契約魔法上に馬たちを戻すと、お母さんが収納魔法で馬車を収納してくれた。
「お姉ちゃん……。」
サリアは悲しそうな顔で私のことを見る。
初めて行く村、街等がこんな状況に置かれているなんて想像すらもしなかった。想像していたとしても、現実として受け入れられないだろう。
実際に私は夢でも見ているかのような感覚だ。
だが、この感覚のままでは、人助けなんて出来ない!!
頑張れ私!!
「よし、行くぞ!!」
「「はい!!」」
私たちは身体強化して、急いで村まで向かう。
いつもの身体強化以上に魔力を注いだので、私たちが走り去ると突風も走り去る。
私たちは村に着くギリギリで、速度を落とし急いで村の中に入って救助へ向かう。
村には、魔物が入らないような塀があるが、木で作られていて、長い年月がたっているせいかすこしもろそうだ。
何ヶ所に大きな穴が開けられているのでそこから魔物が入ったのだろう。
もしかして、中の住人は挟み撃ちされている可能性が高い!!
急がなくては!!
私たちは村の中に入ると悲惨な光景が目の前に映る。
「……。何コレ。」
「……。」
家の前でオークが「お母さん。お父さん」と泣け叫ぶ子供を右手で捕まえ、左手に持った棍棒で家を叩き割る。
中から悲鳴が聞こえていたが、棍棒が地面に着くと同時に泣き終わり、子供の泣け叫ぶ声が辺り一面に広がる。
「二人とも、早く助けに行くんよ。覚悟がなければ助けられる命も助けられなくなる。むしろ、力があっても邪魔になるだけだわ。どうするかはっきり決めなさい!!」
「助けに入るから、二人は少し辺りを見渡しながら考えときな。」
お母さんと紗夜ちゃんはそういうと、私たちの傍から離れて先程棍棒を降ったオークを殴り殺した。
私にはこんな覚悟あるのだろうか。
力が着いたからってつい慢心になっていたのではないか……。
私は自分がどうしたらいいか分からなくなってくると同時に身体中から震えが止まらなくなってきた。
唾を飲むという、あまりに少ない時間でこの村の景色はあっという間に変わってしまう。
自分たちが幸せな時間を過ごしている時に、世界のどこかではこのようなことが起きているかもしれない。
私は目の前の光景を見ることしか出来ず、ただぼーっとたっていることしか出来なかった。
隣にいるサリアは、声を荒らげずにただただ泣いていた。
これを覚悟していくのが冒険者になるって言うことだ。
それは、初心者だからと言って甘やかされる状況では無い。
そんな中、こちらに気づいたトロールが私たちに向かって走り出した。
逃げなくちゃ、と頭で分かっていても動かない。
怖い。怖い。私も殺されるかもしれない。
サリアはどうなる。
私が殺された後に殴り殺されるのか。
自分が悲惨な目に合うのはまだ耐えられるが、大切な妹がそんな目にあうのは許せない。
動け!!
私は唾を飲み、腕に思いっきり力を入れ、トロールが近寄ってくるのを待つ。
ここに来るまでに意識をもっと変換しないと。
悠長な時間は無い!!
サリアやの為。いや、この村で生きている人々の為に!!
私は近寄ってきたトロールに向けて本気の一撃を腹目掛けて殴る。
殴った衝撃で、辺りに突風が巻き起こったが、それによる被害者は居ない。
トロールは足だけ残し他は細かくなって飛び散った。
私はトロールを倒すと同時に少しだけ気持ちの変化が現れ、サリアに話しかける。
「サリア、ここでゆっくり休んどきな。お姉ちゃん行ってくるから。」
「お姉ちゃん……。待って。行かないで!!」
「お姉ちゃん、村の方々助けないと。今救える命が助からなくなっちゃうから。」
「お姉ちゃん!! 一人にしないで……。」
「サリア……。ごめん。やっぱり行かないと。紗夜ちゃんやお母さんも頑張ってくれてるのは分かるけど、私も加われば少しでも救える命が増えるかもしれないからね。」
「……。分かった。うん。私も……。頑張るよ。」
「ありがとう。一人でも多くの方々を救おうね」
「うん。」
サリアから元気の無い返事を聞き、私は駆け足でその場を離れ、魔物を倒しながら人々を誘導させていく。
駆け足といっても足が恐怖などで震えているので、少しだけ歩き方がおかしいが、今は一人でも救うことだけに集中だ。
初めての残酷回です。
書いて見た感想は難しい。
いつも以上に気をつけなければいけない。情景を鮮明に伝える。これが難しすぎる。
全くできて無さすぎて泣けてきます。
これからも頑張るぞ!!
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