番外編 メリークリスマス
「なんかね? 最近お姉ちゃん変なんだよ。自分の部屋で、小さな物音たてながらなにかやっててね。私が入るとすぐにそれを隠すんだよ!!」
「確かにそれは怪しいわね。今までそんなことがなかったけど、彼氏でもできたのかしら?」
「……。そんなこと聞いてないぞ!! アリアには、まだ早いと思うな。」
「絶対そんなことはないよ。だってお姉ちゃん家族大好きだから、絶対にないもん!! 絶対にそれは無いんだけど、怪しいんだよ……。」
「何かしらね? もしかして、私たちにサプライズだったり?」
「サプライズ!?」
「うん。何かしら、プレゼントだったり、驚かせたりする準備とかかな?」
「それならいいんだけどね。なんか秘密があるって、少し寂しいね。」
「それはしょうがないわよ。サリアもお姉ちゃんになにか秘密あるでしょ?」
「そんなのないよ?」
「「……。」」
「とりあえず、そのうちわかると思うわ。多分お母さんから言っても教えてくれないと思うし。」
「分かった!!」
「おはよう。みんななんのお話してたの?」
「ナイショだよ!!」
「……。」
私は、起きてそうそうリビングに入ろうとすると何やら話し声が聞こえてつい盗み聞きをしてしまった。
今日は大事なクリスマスイブ。
色んな準備があるからコソコソやっていたが、それが不安材料になっていたとはな……。
明日からは何も無いから安心してね!!
私はそう心に思いながら、リビングに入ってコップにお茶を注ぎ座ってゆっくり飲む。
エルフの里では、クリスマスという文化自体が普及していないので家族皆知らないだろう。
私だって、疑似体験をする前は一切知らなかったのだから。
昨日紗夜ちゃんに聞いたところ人族には文化があるが、そのほかの種族はあまりクリスマスの文化がないらしい。
クリスマスがないなら、お正月文化とないのかな? と思ったが、お正月はどの種族でもあるとのことだ。
本当に不思議だ。
たまたま今日はお父さんはお休みで、修行もたまたまおやすみなので豪華なご飯を作ってみんなでクリスマスを楽しむ予定!!
プレゼントは、アリアサンタからのお楽しみってことでね。
ふふ。
「今日は何の日か分かる?大事な日なんだよ!!」
「「!!」」
「やっぱりそうなのね……。なんだか寂しいわ。」
「お姉ちゃんに限ってそんなことないもん!! お姉ちゃん早く教えてよ!! 早く!!」
隣に座っているサリアは、私のことを揺らしながら催促してくる。
「大丈夫」と言いながら、やっぱり不安なのだろう。
可愛いやつめ!!
「今日はクリスマスイブだよ!!」
「「クリスマスイブ?」」
「そう。みんなで豪華な食事をワイワイ楽しく食べる大イベント!! 今日がクリスマスイブで明日がクリスマス当日!! クリスマスイブは豪華な夕食を食べて、クリスマス当日の朝にサンタさんからプレゼントが貰える幸せなイベントだよ。人族のイベントで、子供はこの日を楽しみに1年を過ごしているんだよ!!」
「プレゼント?」
「うん。いい子にしていたら、プレゼントがサンタさんから貰えるんだよ。」
「!! 楽しみ!!」
「それはいいイベントね。大人にはプレゼントはないの?」
「大人はだいたいないけど、貰える時もあるよ。子供も大人も悪いことをしないで、いい子にしているとサンタさんがプレゼントを置きに来るんだよ。」
「!! そんなに素晴らしいイベントがあるなんて!!」
「それだけじゃなくて、イルミネーションも醍醐味のひとつだよ。家などにカラフルな電球をつけてそれを見た子供たちを楽しめることもするんだ。クリスマス当日だけではなくて、クリスマスがある週はだいたいどこもやってるみたい。」
「今度、人族のところにお邪魔するか。」
「「賛成!!」」
「とりあえず、今日は豪華な食事だったな。どんな料理を作るんだ?」
「それはね。ピザだよ!! 最近作ったら、みんな好評だったでしょ。クリスマスといえばピザや、チキン。あとケーキ!!」
「すごいよ!! そんなにいっぱいのご馳走夕食で食べてもいいの? 贅沢すぎる!!」
「もうピザ以外は作ってあるから、みんなでピザ作ろっか。」
「「分かった!!」」
そうして、朝食を食べた後にピザ作りを開始した。
生地や上に載せる具材などと材料は、前回作った時のが残っているのでそれを使うことに。
〜〜
「お姉ちゃん、生地がいっぱい手にくっついちゃうよ。」
「生地がくっつかなくなるまでしっかりと混ぜてり叩いたりするんだよ。」
「わかってるんだけど、つい焦っちゃうよね。」
「そんなこと言っている合間に、私は完成しちゃったよ。」
「お母さん早いよ!! 」
「お母さん、一回しか作ったことないのに習得早すぎ!! てか、お父さんすごい手についちゃってる。」
「やっぱり生地作りは、難しいな。具材を載せる担当がいいんだけど、今回は一人一枚作るからな。みんながあっと驚くような美味しいピザを作りたいもんだよ。」
「お父さん。材料は同じなんだから変わらないよ。」
「違うぞ。こないだお母さんと一緒に作った時、俺の生地の味がいまいちだったんだよ。だから同じ材料でも、生地から勝負だな!!」
「? そんな日あったっけ?」
「あ……。」
「「お父さん!!」」
私たちは、こっそりピザを食べていたお父さんのことを羨ましく見ながらピザ生地を完成させ、発酵させる。
発酵後はしっかりと具材を載せ、夕食の時間になるまで収納魔法で保存だ。
いくら収納魔法で時間が進まないからと言っても、数時間前に焼いたピザを食べるより、直前で食べた方が美味しく感じるからね。
〜〜
「こっちはOK!! みんなは?」
「大丈夫よ。」
「うん。大丈夫!!」
「こっちも!!」
人数分の釜を作ったので一人ずつお皿にピザを載せて、裏庭から急いでリビングに向かう。
リビングに着くと机の上にピザを載せ、収納魔法から、チキンを出し準備完了。
「せーの。」
「「いただきます!!」」
「ん!! 美味しい!! こんなに幸せな時間がいつまでも続けばいいのに!!」
「ね!! それに、アリアが作ってくれたこのチキン!! 味付け最高だわ!!今度教えてね。」
「もちろん。」
「こんなに美味しい食事の後にケーキが待っていると考えるだけで幸せだな。」
「ね!!」
私たちは、幸せいっぱいな顔で夕食、その後のケーキまで平らげ幸せな気持ちのまま就寝した……。
が、アリアサンタはこれで終わらない!!
サリアがなにかコソコソしていると言っていたが、それはみんなにプレゼントを作るためなのだ!!
クリスマスといえば、靴下!! ということで、私お手製の手編み靴下をみんなにプレゼントする予定。
一切魔法を使っていないので、気持ちがいっぱい詰まっている。
……。
ここを強調すると少しキモくなってくるが、関係ない!!
みんなが喜んでくれる笑顔を想像するだけで、ここまでやってこれたんだ!!
紗夜ちゃんから、事前に阻害魔法などを教えてもらったのでそれを自分にかけ、いざプレゼントを置きに行くぞ!!
〜〜
「お姉ちゃん。お姉ちゃん!!」
「いつも言ってるでしょ。返事があってから、ドア開けてって。」
「プレゼントがあったんだよ!! 見て見て!! 手編みの靴下!! すごい可愛いし、温かいの!! 私のお気に入りになっちゃった!!」
「!! 私のところにもある!! サンタさんがやってきたのかもね!!」
「!! 家にもやってきたんだ!! お父さんとお母さんはどうかな? 早くリビングに行こう。」
「うん!!」
私たちは急いでリビングに向かうと、お父さんとお母さんも靴下を持っていた。
「二人のところにもサンタさん来たんだね!!」
「そうなのよ。いい子にしてたからかな。」
「うん!! 絶対そうだよ。みんなプレゼント貰えて幸せだね!!」
「「ね!!」」
「私ね。この靴下お気に入りになったんだ!! 昨日の余ったピザも、朝から食べちゃおっと。」
「「いいね!!」」
お父さんとお母さんも嬉しそうだったが、それ以上にサリアの幸せな顔が見れて本当に良かった。
メリークリスマス。
久しぶりの投稿です。
本来であれば明日投稿予定ですが、内容的に今日に変更になります。
クリスマスのお話を書きたい!!とずっと思っていたので、書けて嬉しいです。
危うくコロナのせいで、台無しになるところでしたので……。
体調も順調に回復してきてます。
やっぱり元気が一番ですね。
昔のクリスマスの時のことを思い出しながら書きました。
あの時貰うクリスマスプレゼントは、今では一生手に入ることができない素晴らしいもの。
しかし、その偉大さを気づくことには貰えない年になっていて、少し悲しいです。
皆さんのクリスマスが素敵な一日になりますように。