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三日月君の昼食問題

「美乃、お昼食べよ」

ひなたがやって来る。ひなたとは高校で仲良くなったので日が浅いが、これまでで一番気の許せる友人だ。

「あれ、三日月君、お昼それだけ?」

ひなたが不思議そうに見ているので三日月の方を見ると、ポリポリと無表情でラムネを食べている。


「何食べようか迷ってたら決まらなくて、まぁいっかってあきらめた」

「そんなんじゃ午後からお腹すかない?」

「大丈夫。糖分補給すれば何とかなるから」

前から思っていたけど、三日月君は食べることに無頓着だ。

「ちょっと待ってて」

美乃は財布をもって走って教室を出る。

「相変わらずだなぁ」

とひなたは感心する。

10分ほどして美乃が戻ってくる。

「はいこれ」

息を切らせて焼きそばパンを渡す。

「ごめん、購買もうこれしか残ってなくて」

三日月は驚いている。

「ちゃんと食べないと、倒れちゃうよ。ラムネはご飯じゃないから、ね?」

「ありがとう」

三日月はパンを受け取る。そして財布から200円を取り出し渡す。

「いや、いいよ。200円はもらいすぎだし」

「でも、嬉しかったから、お礼もかねてってことで」

無表情だがどこか嬉しそうに差し出すので、美乃は受け取る。


三日月はぼ-とした顔で焼きそばパンをに食べている。

「明日からも、ちゃんと食べてね」

美乃が言うと、

「美乃に走らせるのは申し訳ないから、ちゃんと食べるようにする」

と三日月はきれいに微笑んだ。


その光景をひなたはニヤニヤしながら見ている。

「なにニヤニヤしてるの?」

美乃がお弁当を食べながら聞く。

「ううん、別に」


「あれ、奏がちゃんとお昼食べてる」

「あ、涼、美乃が買ってきてくれたんだ」

「お前また音羽に負担かけて」

「明日からはちゃんと自分で買ってくる」

なんだかんだ、唐沢君は三日月君を気にかけてるんだな、と美乃は思った。


美乃が放課後の教室で学級委員の仕事をしていると唐沢がやって来る。

「一人?」

「うん、みんな部活とか、帰宅したのかな」

「奏のこと、いろいろありがとな」

唐沢君の一言に美乃は驚く。

「友達思いなんだね」

唐沢はふっと笑う。

「まぁ、数少ない友達だからな。あいつ自分自身のことに無頓着だからちょっと心配で。」

「そうだね」

「囲碁のこと聞いた?」

「うん、プロなんだってね。びっくりした。」

「奏の師匠の家がうちの近所でさ、小学校の時転校してきた。囲碁のことしか興味がないからさ。心配してたんだけど、最近音羽になついてるの見てちょっと変わってきたなって思ってる」

「なついてる…」

「音羽、絶対奏と関わろうとしないタイプじゃん。すぐ面倒見るの放棄すると思ってた」


そういえば前まで関わらないようにしていたし、放棄しようと思ってた。


「奏には音羽みたいな人が必要なんだなと、最近思う。だけど音羽が自分を犠牲にすることはないからさ、何かあったらいつでも言ってよ。手伝うし」


あぁ、気遣ってくれたんだ、と美乃は思った。

なんだか近寄りがたい怖い人だと思っていたけど、それは自分が唐沢君を知らないだけだったんだ、と美乃は思った。

三日月君も最初は苦手なタイプだと思い込んでいたし、自分は見た目で判断していたのだと反省する。


「ありがとう。三日月君のこと、まだよくわからないから相談させてもらえると嬉しい」

美乃がそう言うと、唐沢はおう、と笑って言った。


次の日から、三日月君は毎日焼きそばパンを食べている。


「毎日それで飽きないの?」

美乃が不思議そうに聞く。

「うん、飽きない。それより毎日何を食べるのか考えるのがめんどくさい」

もっと栄養のあるものを買ってくるべきだったな、と美乃は後悔する。


三日月君はやっぱり変わっている。


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