囲碁って楽しいね
三日月と蓬沢が囲碁を打っているとインターフォンが鳴る。
「あ、美乃来た」
三日月が玄関に向かう。しばらくして美乃を連れて蓬沢のところへ来る。
「あ、初めまして。音羽美乃です。」
「あ、どうも、はじめまし…」
蓬沢は美乃を見て驚く。黒髪のロングヘアにモデルみたいに背が高くてすらっとして、服装からしていかにもいいところの子と言う感じだ。
「え、三日月、めっちゃまともそうな子やん」
「どんな人だと思ってたの。美乃、この人蓬沢。関西棋院の所属の囲碁プロ棋士」
「どうも、関西棋院の蓬沢秋斗です。美乃ちゃん、よろしゅう」
三日月は馴れ馴れしく呼ぶなよと言う顔をしている。
「よろしくお願いします」
三日月が自ら誰かを紹介してくれるのは初めてで美乃は少し照れて緊張してしまう。
「美乃ちゃん、囲碁打てるん?」
「えっと、まだ初心者なんですけど少しだけ」
「へぇ、棋力どれくらい?」
蓬沢が三日月に聞く。
「15級くらいかな」
前よりちょっと上がった、と美乃は嬉しくなる。
「じゃあ、俺と打たへん?」
美乃は驚いた顔をする。
「蓬沢が打ちたいって言ってるから、打ってみたら?」
「え、良いのかな、そんなプロの先生に」
美乃がおどおどする。
「なんや、謙虚な子やな。そんなん気にせんでええから」
「じゃあ、よろしくお願いします」
美乃と蓬沢が打ち始める。
「二人が打ってる間に俺なんかお昼買ってくる」
三日月が財布を手にして言う。
彼女と男二人きりにして買い物行くとか警戒心のない奴やな、と蓬沢は思った。
「あ、俺マクドがいい」
「マクド?あぁ、マックな。美乃もそれでいい?」
「うん」
三日月は買いに出かける。
「美乃ちゃんは三日月のどこが良かったん?」
「え、えっと、私とは正反対の性格で…私にないものをたくさん持ってるとこです。三日月君といると前向きになれるっていうか。あと、囲碁打ってるとき本当にかっこいいなって思います…」
自分で言っていて恥ずかしくなり美乃は顔が赤くなる。
「美乃ちゃん顔真っ赤やん、かわええな」
蓬沢が笑うと、美乃はさらに顔が赤くなる。
「囲碁棋士ってこれから大変やで。囲碁界景気良くないからな」
「ネットでみました。棋戦の規模縮小したり、碁会所もつぶれたりしてるって」
「知ってたん?」
「三日月君と付き合うようになって、囲碁界のこと調べたりは多少…」
「不安定やし、将来は考えられへん相手やろ?囲碁棋士って」
蓬沢は少し意地悪っぽく言う。
「将来は何があるか分からないので何とも言えませんけど、囲碁棋士に限らずどの職業でもリスクはあるものだから。それに、三日月君がこんなに囲碁に真剣に取り組んできたことは変わらないし、三日月君は三日月君なので職業でどうこう考えることはしたくないです。」
美乃は穏やかな顔をしてゆっくりと話す。
「何よりも、三日月君がずっと大好きな囲碁ができるように応援したいです。」
美乃は笑顔で言う。
「えぇなぁ、三日月はそこまで思ってくれる彼女がいて」
「いえ…偉そうにいろいろ言っちゃったんですが、つらいときに気の利いたことも言えませんし、私は何もできないんです。応援することくらいしか」
蓬沢は三日月が居心地のいい子、といった意味が分かった気がした。無理に共感したりせず、ただ、味方でいてくれる存在は心強いし安心できる。
「美乃ちゃん予備校行ってるって三日月から聞いたけど大学行くん?何学部?」
「はい、私は、理工学部に行きたくて。」
「へぇ、美乃ちゃん理系なんだ」
「はい、私数学が好きなのでもっと勉強してみたくて」
整地の計算めちゃくちゃ早そうだな、と蓬沢は思った。
「ただいま」
三日月が戻ってくるとすぐに盤面を見る。
「美乃、しっかり打ててる」
と嬉しそうに笑う。
「始めて数か月にしてはきちんと打つよな、美乃ちゃん」
美乃は二人に褒められて嬉しそうに笑った。
その後三人で今打った碁の検討をする。
「ここって、もしこう打ったらどうなるかな」
「そっちの方がいい手だね。少し進めてみようか」
まだ初心者の美乃の考え方を二人は尊重して教えてくれる。
次はこう打ってみたい、この手を試してみたい、そんな気持ちで美乃はワクワクしてくる。
「囲碁って、楽しいね」
「だろ?」
美乃の言葉に三日月も蓬沢も笑顔で同意した。
読んでいただきありがとうございました。
書きたいことをすべてかけたのでここで終了です。




