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三日月君のクリスマス問題

期末テストが終わった。

「奏どうだった?」

「全部大丈夫だった」

三日月は前回の追試で美乃から借りた問題集を自分で購入し、美乃に範囲を教えてもらって珍しく全教科勉強していた。

「まあ、ほぼ1夜漬けだけど。」

あの量を1晩で何とかするのすごいな、と3人は思う。


「もうすぐクリスマスだけどどっか行ったりするの?」

とひなたが美乃と三日月に聞く。

「俺、24,25仕事」

仕事ならしょうがないか、と美乃は少し寂しく思う。


「いいの?クリスマス」

二人でお昼ご飯を食べながらひなたが美乃に聞く。

「三日月君、クリスマスとか興味ないだろうし」

「そうじゃなくて、美乃はどうしたいのかって聞いてる」

ひなたがいつになく厳しい感じで言うので美乃は驚く。

「でも仕事じゃしょうがないし」

「美乃はさ、わがままとか言わないのは偉いと思うんだけど言ってもいいと思うんだよね。三日月君は言わないと分からないし。そういうのがすれ違いにつながっていくと思う」

たしかに…と思うが、仕事の邪魔はしたくないしな、と美乃は思った。

ひなたが自分のためを思って言ってくれていることは分かっていたので、それはとても嬉しかった。


明日は終業式で、冬休みに入る。そうすると、約束しない限り三日月とは会えない。

三日月君は年末年始北海道に帰省するのだろうか。とりあえず予定だけでも聞いてみようかな、と美乃は思う。


今日は帰りが一緒にならなかったのでLINEしようか迷っていると三日月からLINEが来る。

“明日終業式後、時間ある?”

“うん、特に予定ない”

“じゃあさ、福井さんの碁会所行かない?休みだから誰もいない”

“休みなのに入れるの?”

“俺、鍵持ってるし、今許可とった”

“分かった”


終業式が終わって、一緒に碁会所に向かう。

「冬休み入るからさ、美乃と囲碁打とうと思って。」

三日月君らしいな、と美乃は思う。

慣れた様子でお店のシャッターを開けて中に入り、暖房をつける。

「三日月君はここで指導碁を打ってるんでしょ」

「うん。僕だけじゃなくていろんな棋士が来てる。福井さんは人望厚いから」

「すごく物腰柔らかくて優しい人だった」

「うん、そうだね」

と優しい顔で言った。

「ここで打とう」

と三日月が言う。9子置いて対局を始める。途中美乃の手が止まり、しばらくして最初に思った場所とは違うところに打つ。

「そこは、美乃が打ちたい場所なの?」

三日月の問いに美乃は驚く。

「迷ってるみたいだったから。」

「えっと、ほんとはここに打とうと思ったんだけど、入りすぎかなって」

「そっか、踏み込むの怖い?」

「…うん、怖い」

「打ちたいと思ったところに打ってみて」

三日月が美乃が打った黒石を持ち上げて美乃に渡す。美乃は恐る恐る最初に思った場所に打ってみる。そのままうち進めていくと、

「あ、ここ、陣地になった」

三日月は美乃に笑いかける。

「最初は怖いけどさ、踏み込んでみると新しい発見あるんだよね。たとえそれが失敗でも。」

踏み込んでみないと失敗かどうかも分からないままなのか、と美乃は思う。


少しだけ、踏み込んでみようかな。


「私ね、冬休みも三日月君に会いたい。」

美乃からそういうことを言うのが初めてで、三日月はすこし驚いた顔をする。

美乃はドキドキしながら下を向いている。

「いつにする?」

美乃は顔をあげると笑顔の三日月が見える。

二人で笑い合い、会う日を決める。


「1月1日は?」

三日月が言う。


「年末年始、北海道に帰らないの?」

「うん、家族みんな仕事だし、俺もこっちでやりたいことあるし」

「そうなんだ」

一人で過ごすのかな、と美乃は複雑に思う

「家族とは、毎年お正月に電話してる。みんなバラバラだからさ」

「そうなんだ。」

これが三日月君の普通のお正月なんだな、と美乃は思う。

「じゃあ、1月1日、初詣行かない?」

「いいよ」

と三日月は笑う。


「あ、そうだ。クリスマス、仕事って言ってたから…これ、クリスマスプレゼント。いつも、囲碁の本くれるお礼もかねて」

美乃がカバンからきれいに包装された包みを渡す。

「ありがとう、あけていい?」

「うん」

「あ、マフラーだ」

「三日月君、いつも首元寒そうだから」

三日月は室内にもかかわらずマフラーを巻き、

「ありがとう、使う」

と嬉しそうに笑う。


「もう一回打つ?7」

と三日月が聞くと、美乃も打ちたい、と答える。

次は素直に打ちたいと思った場所に打ってみよう、それがたとえ変な1手でも、三日月君が相手なら大丈夫、そんな気持ちで1手1手を打っていく。


どこに打とうか考えるのは楽しいし、自分の陣地ができたり、うまく守れたりすると嬉しい。


クリスマスに会えなくても、恋人らしいイベントの過ごし方ができなくても、一緒に囲碁を打ったり、話したりする時間があれば自分は十分だな、と美乃は思う。


「ここ、自滅した」

三日月君がいたずらっぽく笑って打つ。盤面を見るとさっきまで生きていた美乃の石が死んでいる。

楽しそうに笑う三日月を見て、本当にこの人はデリカシーのかけらもないな、と美乃は笑ってしまう。


「戻ってやり直してみようか」

そういって、三日月はやり直しができる場面に戻す。

「さっきはここに打ったけど、どうする?」

三日月が聞く。

「そっか、ここに白がいるから、この場面は踏み込むと危ないんだ」

「そう、じゃあ、どうしたい?」

「こっちがまだどっちも強くなさそうだし、スペースがたくさんあるからからどうにかしたい」

「おぉ、その考え方、いいね」

三日月が笑う。


間違っても、失敗しても、こうやってどうしたら良かったのか考えて次に活かせばいいんだな、と美乃は思った。



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