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三日月君と福井さん

「こんにちは」

「奏、今日はよろしくな」

今日三日月は福井の碁会所で指導碁の日だ。


「この前、涼が奏の同級生連れてきたよ」

「うん、聞いた。美乃は福井さんに打ってもらったって言ってた」

「美乃?あぁ、音羽さんか」

そういえば音羽さん、奏のサインずっと見てたな、と思い出す。

「奏は音羽さんと仲いいの?」

「うん、彼女」

と平然と言う。


そうか、あの本を選んだのは奏だったのか、と福井は気が付く。


「奏に彼女ができる日が来ると思わなかったよ。興味ないかと」

「よく言われるし、俺も付き合うとかめんどくさいと思ってたんだけどね」


三日月は今日の指導碁の人数などを確認している。

「そうか、良かったな」

そういえばぼさぼさだった髪も清潔感のある感じに変わったし、微妙なセンスだった服装も改善されてるなと福井は気づく。


「今日、人数多いね」

「あぁ、最近奏は女性人気高くて、半分女性」

「…ふーん」

「音羽さん、心配になっちゃうな」

「なんでそんなことで心配になるんだろう」

「違う人のところに行っちゃうんじゃないかって不安になるんじゃない?」

「そんなことはあり得ないのに」

と三日月が平然というので福井は笑ってしまう。


「美乃はさ、囲碁でもそうなんだけど、ちゃんとできててもなんか自信なさげなんだよね」

「あ、それは俺も思ったかも。踏み込んでこないというか、控えめというか」

「あれ踏み込めたらもっと強くなれるのに」

今絶対囲碁の話してるな、と福井は苦笑いする。


「音羽さんとよく打ってるのか?」

「時間合わないから、基本OGS。だからあんまり数は打ってない」

「奏はOGS好きじゃないと思ってた。時間かかるし」

「うん、あんまり好きじゃないけど、美乃と打つには都合いいから使ってる。スキマ時間に打てるし。」

「OGS使ってでも打ちたいんだな、音羽さんと」

「うん」

マイペースなのは相変わらずだが、三日月は少し変わった気が福井はしていた。


「そろそろ準備する?」

三日月が言うとそうだな、と福井が言って二人は机を動かしたりと準備を始める。


今回の指導碁は一度に4人を相手に打つ。今回は3回に分けて行うので、指導碁の順番待ちの人たちは参加者同士で対局をしている。


三日月は淡々と指導碁をこなし、終わった後に女性参加者から話しかけられてもいつも通りの感じで無表情で対応している。三日月は身長も高いしすらっとしているしきれいな顔をしているのでそりゃあ女性人気高くなるだろうな、と福井は思いながら眺めていた。


何人かから差し入れという名のプレゼントや手紙をもらっている。

おそらく手紙に連絡先も書いてあるのだろう。この先三日月はさらに活躍するだろうから、人気も高くなる。


美乃にはなんとかうまく乗り越えて欲しい、奏の活躍のためにも、と福井は思った。



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