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三日月君の遅刻問題

次の日、1限が始まろうとしているのに三日月は登校してこない。

美乃はヒヤヒヤする。結局1限が始まり、2限が始まり、3限になった時、教室の扉が開いてあくびをしながら三日月が入ってきた。

美乃は青ざめる。


「おはようございま~す」と言ってのんきに席に着く。

「お前今何時だと思ってるんだ」

教師が当然のように怒る。

「えっと、もうすぐ11時です」

と時計を見て三日月が答えるとどっと笑いが起きる。


美乃は頭を抱えてしまう。


「どうして遅刻したの?」

休み時間に三日月に問うと、

「起きたら10時だったから、急いできた」

と平然と言う。

「どうして?アラームかけたりしないの?」

と問うと、

「昨日ネットやってたら寝落ちしちゃって。かけ忘れた」

忘れたじゃないでしょと美乃はあきれる。

「ご家族は起こしてくれないの?」

「それは無理」


美乃はあきれる。

「モーニングコールするから連絡先教えて」

三日月は驚いた顔をするが、

「ありがとう、音羽さん」

と言って携帯を出す。

交換後に自分から連絡先を聞いてしまったことに恥ずかしくなったが、これは先生に頼まれているからだと自分に言い聞かせた。


その後も授業中に眠っている三日月を起こしたり、先生にあてられても気が付かない三日月に声をかけたりし続け、すべての授業を終えると美乃はクタクタだった。

もう無理だ。

まだ二日目だけどもう限界だ、と思っていると、机の上にコロンと飴玉が置かれる。


誰だろうと見上げると、

「いろいろとありがとう」

と三日月が言った。

美乃は一瞬ドキッとしてしまうが、すぐに正気を取り戻し

「先生に頼まれたから。でも、飴、ありがとう」

という。

なんだかソワソワして汚れてもいないメガネを外してメガネ拭きで拭く。

すると三日月は美乃を覗き込む。


「メガネもかわいいけど、メガネ外すともっとかわいいね」

と少し微笑んで言う。


美乃は不意打ちだったこともあり顔が真っ赤になる。男の子から可愛いなんて初めていわれた。

美乃は身長が170cmあるのがコンプレックスだった。背が低くて可愛らしい女の子を見るとうらやましいと思った。

かわいいなんて言われる日が来るなんて。


三日月はそのままふら~っと帰っていく。


次の日の朝、美乃は三日月にモーニングコールするか迷っていた。昨日のようにまた遅刻してきたら、退学に1歩近づいてしまう。

もうどうにでもなれと電話をするが出ない。

何度もかけていると、4度目でようやくつながる。

「もしもし」

明らかに寝ぼけている声だ。


「三日月君?音羽だけど、もう起きないと遅刻よ。いい?起きて支度してね」


お母さんみたいだと美乃は自分で思って悲しくなる。


「おはよう、美乃。ありがとう。今日は徹夜してないから遅刻しないようにがんばる」

名前を呼び捨てで呼ばれ、驚いて動揺する。


「おっ!三日月今日は遅刻しなかったじゃん」

登校してきた三日月君を見てクラスの男子が声をかける。


「美乃がモーニングコ―ルしてくれたから」

三日月君は平然とした顔で言うとクラスの全員が驚いて美乃に注目する。


「ち、違うの、先生に頼まれているから」

焦る美乃をよそに三日月君は席に着く。


その日の三日月君は授業中にほぼ寝ることもなく、先生にあてられてもきちんと対応している。

なんだ、夜更かしさえしなければ大丈夫なのか、と思う。


「奏、めずらしく真面目に授業受けてるじゃん」

同じクラスの唐沢涼太が三日月に話しかける。

唐沢は三日月と同じくらい背が高くて、ガタイが良く、ツリ目で、基本一人でいることが多く怖い雰囲気がある。


「涼、おはよう。美乃がせっかく起こしてくれたから、ちゃんとしようと思って」

隣で聞いていた美乃は驚いて動揺する。

「へぇ、奏が名前覚えたんだ」

唐沢はニヤニヤしながら美乃を見る。

「か、唐沢君は三日月君と仲がいいの?」

「まぁ、小学校5年生からいっしょだからそこそこ」

「じゃ、じゃあ、三日月君にモーニングコールしてあげてくれない?」


「やだね」

と唐沢が即答するので、美乃は硬直する。

やっぱり怖い人なのか。


「俺じゃ起きないよ、奏は」

唐沢はニヤッと笑う。

美乃は呆然とする。


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