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三日月君の公開対局問題

美乃の席でひなたとお昼を食べていると、唐沢がやってきて三日月に話しかける。

「奏、今度公開対局あるんだろ?」

唐沢君が言う。

「あ、今週日曜日のやつね。あるよ」

「公開対局って?」

ひなたが聞く。

「客の前で対局するんだよ」

「そんなのあるんだ、美乃知ってた?」

「ううん、知らない」

ひなただけが不思議そうにしている。

「三日月君、そういうの報告するっていう感覚ないから」

美乃はひなたに説明する。


「3人で行かない?いいだろ?奏」

唐沢が美乃とひなたを誘う。

「別にいいけど、囲碁の内容はちょっと二人には難しいかも」

「いや、囲碁じゃなくて、奏を見に行くんだよ」

「俺?ただ打ってるだけだよ」

「それでいいんだよ」

三日月君は不思議そうな顔している。


公開対局当日。

唐沢がチケットを手配してくれていた。

「ありがとう、いくらだった?」

美乃が財布を取り出す。

「いいのいいの、俺と奏で出したから」

「え、なんか申し訳ない…」

「気にすんなって」

唐沢は豪快に笑った。


「なんか緊張するね」

と美乃が唐沢とひなたに言うと二人とも全然、という。

二人はこういうところはさっぱりしている。


「美乃は三日月君が囲碁打つとこ初めて見るの?」

「うん。ネットで打ったことはあるんだけど、対面で打ったことないんだ」

「マジ?まあ、来年になればテレビで見れるよ。今期はもう負けたからないけど」

「テレビ…?」

美乃が驚いて聞くと、あぁ。と平然と唐沢は言う。

なんだかとんでもない世界に三日月君はいるんだな、と美乃は思う。


大きな拍手とともに壇上に三日月君が出てくる。スーツを着ていていつもよりも大人っぽく見える。

「スーツ着てると別人だね」

とひなたが言う。

「うん、ほんとだね」

かっこいいな、と美乃は思う。

学校で見る無表情でぼーっとしている様子とは違い、挨拶もちゃんとしたことを話している。

「ちゃんと仕事してるんだね。当たり前だけど」

というと、ひなたと唐沢はニヤニヤして美乃を見る。


公開対局が始まる。

そんなに近い席ではないので表情は見えないが、打っている姿は凛としてかっこいい。

「ほんとに三日月君なのか分からなくなるね」

ひなたも感心したように見ている。

対局の内容を、男性棋士と女流棋士の先生が大盤を用いて解説している。

「三日月5段はどんなかたですか?」

と解説の女性が聞く。

「努力家だな、と思いますね。勉強量がすごい。そして何より、読みが早くて正確ですね。彼と早碁は打ちたくないです」

と男性棋士が言うと笑いがおきる。

美乃にはどういう意味かはよく分からなかったが、三日月が褒められているのは嬉しかった。


三日月は学校ではほぼ机にうつぶせになっているのに、対局の時はずっと姿勢が良いな、と思いながら美乃は三日月の対局を見ていた。


勝ったのは三日月君で、自分の碁の感想やポイントとなった点を解説している。

「すごいなぁ、なんか遠い存在に見える」

「遠くないよ。近くでしゃべったら、あ、やっぱ奏だってなるから」

と唐沢は笑う。


公開対局が終わると、若い女性たちが話しているのが聞こえる。

「三日月先生かっこよかったね」

「早くプレゼント渡しに行こ」

「今日はしゃべれるかな」

「ね、早くいかないと」


「ファン…かな」

ひなたが言う。

「すごいね、三日月君」

「俺たちも行こうぜ?会えるかもよ」

「私は、行かない」

「どうして?」

ひなたが聞く。

「私は遠くからみれたからそれで十分………」

と言いながら下を向いているので唐沢とひなたはどうしたんだろうかと思う。

「なんて、本音を言うと、三日月君がきれいな人と楽しそうにしゃべってたら、モヤモヤしちゃいそうだからさ」

と美乃は笑った。 


いや、絶対楽しくなさそうな顔してるよ三日月は、と唐沢とひなたは思った。


「そこに乗り込んで彼女面しないところが音羽のいいところだよな」

「美乃、帰り甘いものでも食べて帰ろうよ。私と唐沢君でおごるからさ」

「甘いもの食べたい!でも普通に割り勘にしようよ。」

「音羽、ここは甘えとけ」

明るい二人と話していると美乃の心のもやもやも晴れていく。


「唐沢君、今日はありがとう。三日月君が対局している姿見れて、うれしかった。ひなたも付き合ってくれてありがとう。」

二人は笑顔で、またこういうイベント行こうと笑ってくれる。


夜、珍しく三日月からLINEが来る。朝起きたかどうかのLINEはよく来るが、それ以外の連絡はほぼない。


“内容ちょっと難しかった?”


三日月君は囲碁を見に来たのだと信じているようだ。


“難しくて分からなかったけど、三日月君が打ってるとこ見れて楽しかったよ”

“俺が打ってるとこ見てもおもしろくないでしょ?”

“ううん、いつもと違う三日月君見るの新鮮だった。対局の時別人かと思った”

“よく言われる”

“かっこよかった”

“ありがとう”

ここで終わりかな、と思っているとさらにメッセージが届く。

“来週の土曜日あいてる?”

“あいてるよ”

“うちに遊びに来ない?”


美乃はドキッとした。

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