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三日月君のプレゼント問題

付き合ったからと言って何かが変わるわけでもなく、以前と何ら変わらない日々が続いていた。

時々、三日月は帰りに校門で待っていて一緒に帰ることはあるが、それは以前からのことだ。


「そろそろOGS13路にしない?」

帰り道に三日月が言う。

「私打てるかな」

「大丈夫だと思う」

三日月が13路で対戦を申請してくる。

「初心者って、対局以外でどうやって勉強したらいいのかな」

美乃が三日月にこういう相談することは皆無なので三日月は驚いた。

「今時間ある?」

「うん」

「本屋行こ」


本屋で三日月が手に取ったのは【世界一やさしい手筋と詰碁】という本だった。

詰碁って名前からして難しそうと思ったが、最初の数ページをみると、

「これ私でもわかる!」

と美乃は嬉しくなる。

「よかった」

と言って三日月君はその本を買って、はい、と美乃に渡す。

「お金払う」

美乃が財布を取り出そうとすると、

「いいよ、囲碁に興味持ってもらえるのは嬉しいし、美乃は彼女だから」

とさらっという。


ありがとう、と言って受け取る。あまりに普段通りだったから忘れてないかと思っていたけれど、ちゃんと彼女と認識されていたようで美乃は安心する。初めてもらったプレゼントだな、と美乃は嬉しい気持ちで本をギュッと抱きしめる。

「この本いっぱいやる」

「うん全問迷わず答えられるようになったら教えて。次考える」

「分かった」

美乃は本を大事にカバンにしまう。


「駅まで、手、つなぐ?」

三日月が手を差し出す。

「うん」

美乃が三日月の手を握る。

「手つなぐと歩きづらい」

三日月のあまりに素直な感想に美乃は吹き出してしまう。

「三日月君らしいね」

「デリカシーなかった?」

「よく気付いたね」

「女の人に良く言われる。」

三日月は苦笑いしている。

「つなぐのやめる?」

美乃が聞くと、「このままでいい。」と三日月はギュッと美乃の手を握る。


寒くなってきたから、つないだ手の暖かさが心地よいな、と美乃は思う。


通勤の空き時間や、勉強の気分転換に三日月君がくれた本で囲碁の勉強をしてみる。

美乃にも分かる問題が多く、解説もわかりやすいのでストレスなくできた。

問題が易しいからかすぐに解き終わるので、何度も繰り返しやってみる。

だんだんとパッと見ただけで答えが分かるようになるのがうれしくて、楽しいと思うようになっていた。だんだんと、ここは危ない、ということが対局でも分かってくることが多くなった。


勉強の合間にOGSを開くと、三日月が次を打っていた。

最近厳しい手が増えてきた気がする。


“最近厳しいね”

とコメントを打ってみる。


次の日の朝に確認するとコメントと共に三日月から返ってきている。


“強くなってきたから甘やかすのやめた。”


三日月が選んだ本のおかげかな、と美乃は思った。

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