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美乃の初囲碁イベント

お昼、天気がいいので美乃とひなたは校庭のベンチでお昼を食べていた。

「囲碁、やってみたいなって思ってるんだけど」

ひなたはニヤニヤしながら聞いている。

「いや、三日月君がそこまでのめりこむ囲碁ってどんなのかなって」

「ちょっと分かる。この前、習字の練習したとき、私も興味持った。」

「ネットとかで調べて、ルールとかはなんとなく分かったんだけど、その先どうしてよいのかよく分からないんだよね」

「三日月君に習えばいいじゃん」

「うーん、囲碁でご飯食べてる人にクラスメイトだからタダで教えてっていうのはなんかちょっと違う気がして。ほかの人たちはお金払って教えてもらっているのに」

「でた、まじめ思考。まぁ、そういうところが美乃のいいとこなんだけど」


ひなたが携帯を取り出して検索を始める。

「ねぇ、これなんてどう?」

ひなたが見つけたのは近くの囲碁サロンでやっている初心者イベントだった。

「プロの先生が教えてくれるんだね。それに初めての人歓迎って書いてある」

「行ってみようよ、美乃」

「でもこんな石も触ったことない初心者が行ってもいいのかな」

「ダメそうだったらお茶して遊ぼ」

ひなたのこういうとりあえず飛び込んでみるところを美乃は尊敬している。


イベント会場の碁会所はモダンな雰囲気で清潔感があり、想像していた囲碁サロンとは違って驚く。

「こんにちは!イベントに申し込んでくれた方ですか?」

優しそうなほんわかした女性が出迎えてくれる。

「はい、申し込んだ音羽と柴田です」

「音羽さんと柴田さんですね、わぁ高校生なんだ!私はスタッフの倉田です。何かあったらいつでも声かけてね!」

倉田さんの明るさとほんわかした雰囲気に、美乃の参加して良いのか、という不安が打ち消されていた。ネームプレートに名前を書いて服に着ける。

会場には20代くらいの女性が2人と、20代くらいの男性が3人いた。


「そろそろ始めようか~」

とカウンターの奥から2人の女性が出てくる。

「初めましての人もいるから自己紹介から。まず私は、春木美里です」

「こんにちは、東原由美です」

「私はここの囲碁サロンをやってる倉田さくらです!こちらの春木先生と東原先生は囲碁のプロなんですよ~」

明るい雰囲気で始まった。。

「えっと、柴田さんと音羽さんは今日が初めての参加だよね?」

春木先生が声をかける。

「はい、そうです」

「棋力はどれくらいかな?」

棋力ってなんだ、という顔を美乃とひなたはすると春木先生はそれを察してくれたようで、

「囲碁を打ったことはあるかな?」

と優しく聞き方を変えてくれる。

「一回もやったことなくて、ネットでちょっとルール見たけどあんまりぴんと来なくて」

美乃が答えるとひなたは隣でうんうん、と頷いている。

「こんなに若い子が興味持ってくれてうれしいな。どうして囲碁をやってみようと思ったの?」

「えっと、知り合いが囲碁がすごく大好きで。そんなに好きになる囲碁ってどんなんかな、って興味を持ちました。」

美乃が言うと、ひなたも私もですと言った。

「それは嬉しい理由だね。今日は二人にも囲碁の楽しさが伝わったらうれしいな。準備してくるから少し待っててね」

そういって春木先生は一旦席をはずす。

「囲碁のプロって三日月君みたいな感じかと思ったら、全然違うね」

「うん、しかも春木先生も東原先生もきれいでおしゃれだよね」

囲碁のプロを三日月君しか知らない美乃たちには驚きだった。ほかの参加者は19路盤で対局をしていて、東原先生がぐるぐると様子を見て回りながら、時々アドバイスをしている。


「お待たせ」

春木先生は手に小さな碁盤とお菓子をもって戻ってきた。

「今日はこの9路盤をつかってやりましょう」

春木先生は囲碁のルールを碁盤を指さしたり、石を置いたりして丁寧に説明してくれる。あまりに分かりやすくて自分にもできそうな気がしてくる。

「じゃあ、まず石取りゲームからやってみようか」

先生に教えてもらって石の取り方をもとに、美乃とひなたは2人で石取りゲームをする。

春木先生が見ていることに最初は緊張していたが、穏やかに、アドバイスするときも肯定的に話をしてくれるので美乃とひなたはのびのびとゲームを楽しんだ。


「うん、二人とも石の取り方が上手になってきたね。飲み込み早いなぁ」

春木先生はほめるのが上手で、美乃もひなたも嬉しくなる。

「じゃあ、実際に私と打ってみようか」

え、プロと打つの?と美乃は緊張し、ひなたはワクワクしている。

春木先生は9路盤に4つの黒石を置いた。

「最初から黒だけ石を置いていいんですか?そうすると黒が有利になっちゃう気が…」

「そう、囲碁は強さに差がある相手とも、こうしてハンデを付けることで対等に一緒に楽しむことができるの。これを置き碁、と言うんだよ。」

なるほど、と美乃は思った。

「置き碁の場合は、白が先に打つの。じゃあ、はじめてみようか。よろしくお願いします」

春木先生は笑顔でいう。美乃とひなたもよろしくお願いします、と挨拶をしっかりする。


春木先生は美乃とひなたに笑いかけた後、それぞれに打つ。

石を持つ動作や、まっすぐに伸びた指先ががきれいだな、と美乃は思った。


春木先生は手が止まると優しくアドバイスをしてくれる。美乃やひなたがどうしたいのか、何を考えているのかを尊重したうえでアドバイスをくれるので、自分が打てているような気がしてくる。


「うん、これで終局だね。終局したら、相手の陣地を数えます」

そういって、先生は美乃とひなたの陣地を説明しながら数えていく。


「じゃあ、今度は二人で打ってみよう。二人はハンデなしで対局するから、まずは白黒を決めましょう。じゃあ、まず、柴田さん。白石を好きなだけ握って碁盤においてね。手はまだ握ったままで」

ひなたはその通りにする。

「じゃあ次は音羽さん。柴田さんの握ってる石の数が奇数だと思ったら1個、偶数だと思ったら2個、黒石を碁盤においてね」

美乃は2個の黒石を置く。

「じゃあ、柴田さん、石の数を数えてみて」

ひなたが石を数えると、11個だった。

「奇数だね。音羽さんの予想が残念ながら外れてしまったから、今回は柴田さんが黒を持ちます」

「ってことは、黒の方が有利ってことですか?」

ひなたが聞く。

「そうなの。囲碁は先に打つ方が有利になるから、19路盤で打つときは、白に6目半のハンデをもらうの。これをコミといます」

「6目半も?」

「そう、それでも黒を持ちたいって人は多いの。」

「どうしてですか?」

「理由はひとそれぞれだけれど、先に打てる分、戦いを仕掛けたり、主導権を握りやすいからっていうのがよく言われる理由かな」

美乃とひなたはまだその感覚は分からないが、そういうものなんだな、と思った。


「今日はコミはなしで、黒と白を交代しながら何度か打ってみましょう」

そうしてひなたと美乃は何度か打った。9路盤はすぐに終わるので短時間で打てるのがいいな、と二人は思う。春木先生はあまり口出しをせず、二人が困ったときや、終局後の数え方の時だけアドバイスをくれて、あとは穏やかに見守っていた。


「黒が先に打てるから、白の時はそれに対してどうするかって考えるから、黒が主導権を握りやすいっていうのはなんとなくわかったかも」

と美乃がいう。

「私は黒が楽しかったな。次これやってみようってワクワクする」

とひなたが言う。

「え、私は白がいいな。相手の出方を見て動けるから。」

と美乃が言うと、春木先生は

「二人はいいコンビね。一緒に囲碁をやったらお互いにないものをそれぞれ吸収できそう」

と穏やかに笑った。


このイベントに来てよかったな、と美乃とひなたは思った。


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