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三日月君は変わってる

三日月君はとにかく変わっている。


周りからはやばいヤツだと敬遠されている。

しょっちゅう休むし、遅刻するし、授業もほぼ寝ている。

不思議な雰囲気をまとっていて、いつもぼーっとしている。


せっかく背が高いのに、いつも寝ぐせのついたぼさぼさの髪で顔の半分は隠れている上に、変わり者の印象が強く女の子は寄り付かない。

学級委員長の音羽美乃は自分とはあまりにかけ離れたキャラの三日月にあまり関わらないようにしていた。


それにも関わらず、担任の教師に三日月と一緒に職員室に来るように言われる。

美乃は嫌な予感しかしない。


「三日月の面倒を見てやってくれ」

担任の教師にそう言われる。三日月は寝ぐせのついた頭であくびをしている。

「面倒…とは?」


「三日月はもう退学スレスレだ。音羽はしっかりしているし、ちょっと目をかけてやってくれ。頼む。いいな、三日月。退学になりたくなかったら音羽の言うこと聞くんだぞ」

「ふあ~い」

あくびをしながら返事をする。

絶対先生の話聞いてなかったでしょ、と美乃は思う。


職員室を出ると

「俺ちょっと昼寝してきていい?」

と美乃に聞く。

「いや、ダメですよ。もうすぐ5限始まるから。教室行きますよ」

うぅ、と三日月君はものすごく嫌そうなオーラ出すが、美乃は担任教師に頼まれたばかりということもあり引き下がるわけにはいかない。


そう言って教室に向かうと三日月君がいなくなっていることに気が付く。

「どこ行っちゃったんだろう」

と美乃は慌てて探す。もうすぐ5限が始まるというのに。

美乃は必死で考える。さっき昼寝をしたいと言っていた。三日月が昼寝をしそうな場所を必死で考える。そういえば前に校庭のベンチで寝ていたことを思い出し急いでベンチに向かう。


三日月はベンチの上で気持ちよさそうに眠っていた。

「三日月君!授業行きますよ!」

自分でも驚くくらいに大きな声が出てしまった。三日月はうっすら目を開けるも動こうとしないので、美乃はしょうがなく手を引っ張る。

5限は数学。宮下先生はとにかく厳しいので何としても遅れることは避けたい。


美乃は必死で三日月を連れて教室に帰った。


「あれ、音羽が三日月と手つないでる」

クラスの男子が二人をからかう。

「違うのよ、先生から面倒見るように言われたの」

美乃は必死に説明する。

そして何とか三日月を席に座らせる。

「三日月君、目をしっかり開けて。授業始まるから」

そう言って三日月のカバンから教科書とノートと筆記用具を取り出し机に並べ、美乃は自分の席に着く。


何とか間に合ったようだ。と安心する。


「おい、三日月起きろ!」

宮下先生が三日月に注意をする。美乃の心は落ち着かない。

「ふあ~い」

三日月の力の抜けた返答に反比例して美乃の緊張が高まる。

「これ解いてみろ」

黒板に書かれた問題を解くように促されるが三日月は動かない。斜め前の席の美乃は後ろを向いて、

「三日月君、問題見て、とりあえず黒板まで移動して」

と必死に呼びかける。三日月はゆっくり立ち上がって、黒板の方へ行き問題を見るとスラスラと問いてしまう。

「正解だ」

難しめの問題を難なく解く様子に宮下先生は感心している。

三日月君はあくびをしながら席に戻って再び眠りにつく。


かえりのHRになると美乃はぐったりしてしまう。

もう無理だと担任に言おうと決めたとき、

「席替えだ。三日月、音羽の隣に移動だ」


待ってくださいと言いかける前に移動が始まってしまう。今まで平和に暮らしていた美乃の隣にやばいヤツが来てしまった。


「いや、宮下先生が音羽が三日月の面倒をよく見てくれて助かったと言っててな。これからも頼むな」


無邪気に大変なことを押し付けてくる担任に美乃は殺意を覚える。

ふと隣を見ると、三日月が頬杖をついて美乃の方を不思議そうに見ている。

なんなのよ、と美乃はできるだけ三日月を見ないようにする。


「名前、何だっけ」


三日月が美乃に聞く。

1年生のころから同じクラスなのでもう1年以上も一緒にいて、何度か話したこともあるのに名前を知らないことに絶句する。


音羽美乃おとわみの

冷たく言うと、

「俺、三日月奏みかづきかなで。よろしく」

と無表情で言う。


知ってると思いながらも美乃はよろしく、と苦笑いする。


「どうして1日中そんなに眠そうなの?」

美乃が怪訝そうに聞く。


「昨日、ネットやってたら楽しくなって。気がついたら朝だった」

とあくびをしながら無表情で答える。

この人はダメだ、と美乃は思う。

とりあえずしばらくは先生に言われたとおりにするが、どうにもならない理由がいくつか集まったら先生に無理だと言おうと美乃は決めた。


「美乃、帰ろー」

親友の柴田ひなたが声をかける。

「大変なことになったね」

帰り道にひなたが切り出す。

「しばらく頑張るけど、いずれは無理っていうつもり」

ふーん、とひなたはニヤニヤしている。

「責任感の塊みたいな美乃が、途中で投げ出せるかな」

と意地悪っぽく笑う。

「そうしないと身が持たない」

ひなたはそうかそうか、と笑っている。


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