浮かれる
「なに浮かれてんの?」
次の日、収録終わりの廊下でアキラさんに肩を叩かれた。
「う、浮かれてないですよ!」
(バレてた?!)
「へえ」
「あの、葛西さんって何処にいるかご存知ですか?」
「葛西さん?フロアに居るんじゃない?」
「わかりました」
「何か用なの?」
「……恋愛企画、俺はやはり適任じゃないんじゃないかと思うようになって、相談したくて」
「あー……」
アキラさんは頭をポリポリと掻いた。
「小山くんが直々に行っても無理な気もするね。気合い入ってたから」
「そうですよね……」
「……彼女できた?もしかして」
「え?!」
「図星か」
「……実は、はい」
「そりゃ、ね。恋愛企画なんか出たくないよね」
「はい!」
アキラさんはプッと吹き出した。
「分かった。俺が上手く言っておくから」
「ありがとうございます!!」
「正直でよろしい」
◯●
(てな訳で、出なくて良くなりました、と)
少しの時間を狙い、俺はソリタにLINEをしていた。
「返信来ないかな〜へへっ」
「おーい、にやけてるよ。小山」
「すみません、千夏先輩」
「もー」
狭いコミュニティとは恐ろしいもので、数時間もすれば大抵のスタッフには俺に彼女ができたということが伝わっていた。葛西さんには「お前でも彼女できるのか」と驚かれた。
「仕事とプライベートは分けなよ。気持ちは分かるけど」
「すみません」
幸いなことに相手が誰かはバレていない。
(へへっ)
「……ったく、また小山ニヤけてるし。……」