60/65
涙
「赤羽先輩」
「俺、帰るわ」
「待ってください。先輩、私は」
「それ以上は言わないで」
「え?」
「はじめから分かってたから。言っちゃいけないって」
「……」
「ごめん、混乱させて」
「先輩、いつから私のこと好きでいてくれたんですか」
「……ソリタさんが美術部入って直ぐくらいかな。中学の時から」
「……今の私には、赤羽先輩の気持ちには応えられません。ごめんなさい」
「……」
「気持ちを伝えてくれて、好きになってくれて、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう」
赤羽先輩は私に背中を向け、袖口で顔を拭った。
「絵、頑張ってね。応援してる。帰るね」
「赤羽先輩も。無理せず頑張ってください」
赤羽先輩は、最後まで私に背中を向けたままだった。
ご覧頂きありがとうございます!