思い
「え?」
千夏先輩が呟いた。
翌日。収録やらその他諸々の仕事を終え、千夏先輩と共に編集作業に入っていた。編集作業中、腹痛のあまり編集さんが真っ青な顔をしてトイレに行った。俺はその隙を狙い、バレないように節々は伏せて恋愛相談を持ちかけた。
「話聞いてる限りじゃ嫌われてないと思うけどね。思い込みがすぎる気もするけど」
「そうですかね」
「うかうかしてたら取られちゃうだろうけど」
「なるほど」
「ん?てか急にどうしたの?」
「なんでもないです」
「……?」
編集さんがぱたぱたと戻ってきたので、その後はあまり深く追及されなかった。
編集作業は夜更け近くまで続いた。
できあがったVTRを運びながら、俺は回想に耽っていた。
("うかうかしてたら取られちゃう"か)
「おい!おい!」
「はい!」
「ったく、ぼーっとしてんじゃねえよ!」
「……すみません」
葛西さんのお叱りを受け、俺は少し我に返った。
(いかんいかん)
「仕事中だ!ぼーっとすんな!」
「はい!」
とりあえず考えるのをやめ、目の前の仕事に集中した。
◯●
朝方の収録を終え、仕事がひと区切りついた。
「つかれた……」
午後のロケへ向かうため、仮眠室で仮眠を取った。
◯●
「3.2.1......」
午後のロケは、赤羽さんと一緒だった。
俺自身、ここ数日のことが気になりながらも、頭を切り替えるようにしていた。当の赤羽さんは全く気にし ていないような素振りを見せていた。
収録終わり、赤羽さんはチラッと俺を見るとニコっと笑った。赤羽さんの方が、少し上手だと悟った。
(動揺してるのバレたか……?)
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