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自信のない男
自販機から帰ると、赤羽さんと中埜さんが帰ろうとしていた。
「もう帰られるんですか?」
「ええ。話は済みました」
「そうですか」
「小山さん」
中に入ろうとした俺に、赤羽さんが言った。
「俺は昔、ソリタさんのことが好きでした」
「……!」
「それは今も変わっていません」
「……」
「失礼します」
赤羽さんと中埜さんは車に乗り込むと、そのまま帰っていった。
◯●
「おかえりなさい」
中に入ると、Solitaが出迎えた。
「帰られたんですね。お二人」
「ええ」
(Solitaさんはどう思っているんだろうか)
赤羽さんはいわばSolitaが中学時代にいじめられた原因だ。ただ、嫌いだとは言っていなかった。
(好きだったから仲良くて嫉妬でいじめられたってこともあり得なくはないよな……今もって可能性も)
明らかに考えすぎである。
でも、今の俺にはどうしてもそうなってしまうのだ。
「どうしました?」
「あ、いえ。大丈夫です。……俺も帰ります」
「え」
俺は苦しさを隠すように、逃げ帰ってしまった。
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