気持ち 2
いちまるテレビに着いた。
兄さんに近くで降ろしてもらい、歩いて建物に向かった。
「迷子になりそう」
周囲を見渡してみると、圧倒的な高さと存在感を誇る建物だらけだった。世間知らずの私には地図を使っても、どれがいちまるテレビか分からなかった。
「大丈夫ですか?」
後ろから、聞き覚えのある女性の声がした。
振り返ると、千夏が立っていた。
「Solitaさん!」
千夏は目を見開くと、あからさまに驚いた。
「お久しぶりです」
「お久しぶりです!何かお困りで?」
「いちまるテレビを探してます」
「そうなんですね!私もちょうど会社戻るとこだったので、一緒に行きましょうか」
ニコッと微笑んだ千夏とともに、私はいちまるテレビに向かうことになった。
「何か用事ですか?」
千夏が声をかけた。
「そんな感じです」
「そうですか〜」
「千夏さんは、用事ですか?」
「はい、半休貰って病院に」
「大丈夫ですか?」
「少し前に躓いた時、捻挫しちゃって」
よく見ると、千夏の足には包帯が巻かれていた。
「だめですね、睡眠不足は」
「痛そう」
「近くに小山が居て支えてくれたので酷く躓いてないと思ってたんですけど」
「小山」
「? はい」
何故か分からないが、その単語に敏感に反応してしまった。
「……骨は大丈夫ですか」
「それは大丈夫です!イライラしないようにカルシウムたくさん摂ってたのが功を奏したみたいで」
「カルシウム……」
前に小山が言っていたカルシウムの話を思い出した。
(鬼の葛西)
「Solitaさん?」
思わず笑っていたようだ。
「大丈夫です」
「はあ……」
千夏はキョトンとしていた。
◯●
いちまるテレビに着いた。
社員入口と一般入口は別だというので、近くで千夏とは別れた。社食までの道のりを迷うかと思いきや、意外にも迷わなかった。
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