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自販機と上司
自販機前で、私は葛西さんと鉢合わせた。
「お疲れ様です」
「おう」
(早く戻ろ)
別にサボっているわけではないが、なんとなく上司と2人きりなのは気まずい。
「あ、そうだ。千夏」
「はい」
「新コーナーで赤羽さん使うから」
「え?」
「え?ってなんだ。え?って」
「すみません。でも仰る意味がよく……」
「だから、新コーナーで、赤羽さんを使うから」
「はあ……」
葛西さんは鼻息荒く話していた。
「赤羽さんはスケジュール的にも予算的にも厳しくないですか。第一また出てくれるかもどうか……」
「いや、それに関しては大丈夫。今度の打ち合わせでゴリ押すから」
「はあ、てか企画はどうするんですか?」
「企画は何とかする」
(なら大丈夫か)
「あと、来月のロケのアポ取り頼むわ~」
葛西さんはヒラヒラと手を振ると、音を立てて何処かへ去っていった。
「え」
また仕事が増えてしまった。
(それ私の仕事じゃないのに……)
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