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画家のソリタ   作者: Suzura
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エレベーター



小山が休みだと、少しだけ静かに感じる。


私は会社のエレベーターに乗りながらぼんやりとしていた。連日の勤務で疲労困憊なので、先に休みを取った小山が少し羨ましく感じていた。




(早くお酒飲んで寝たい)



私自身自他共に認める酒豪だ。ただ、なんとなく仕事がある日はお酒を控えている。仕事の連絡が来た時に酔っ払っていたら、葛西さんやら同僚やらから拳骨を数発喰らう可能性もあり得るからだ。



「酒が飲みたい……休みが待ち遠しい」




ボソッと呟いたとほぼ同時に、エレベーターが開いた。慌てて口をつぐみ、開くのボタンを押す。入ってきた男性は軽く頭を下げると、私の対角線上の場所についた。


「何階ですか?」

「8階でお願いします」

「はい」



エレベーターが動き出した。動き出してすぐ、男性に声をかけられた。


「千夏さんですよね?」

「え?」



振り返ると、赤羽さんが立っていた。




「やっぱりそうだ!お疲れ様です」

「お疲れ様です!すみません、挨拶が遅れて」


赤羽さんは先日うちの番組に出てくれた人気アイドルだ。その回の数字が郡を抜いて良かったので葛西さんが珍しく機嫌が良かった。

 


「もう収録終わりですか?」

「はい。ですがリップをどこかで落としてしまって」

「そうなんですね。探しましょうか?」

「ありがとうございます。でも、消耗品ですし、見つからなかったらまた買います」

「そうですね」

「あ、そういえば、今日お見かけしないですね。小山さん」

「小山ですか?」

「はい。先日社食でお会いしてからよくお話させていただくようになって。今日見かけなかったので」

「なるほど」


(いつの間に)


「小山は今日明日お休みを頂いてまして」

「そうなんですか」

「はい。あさってにはまた出勤してきます」

「なるほど」


随分タイミングが良い話だが、ちょうどエレベーターが止まった。赤羽さんは私に会釈を返しつつ、爽やかにエレベーターを降りていった。




「上手いな~」



赤羽さんが居なくなった後、私はエレベーター内で思わずそう呟いていた。





(だから皆から愛されるんだな)




また一緒に仕事したいと思わせる振る舞いに思わず感心してしまった。


















ご覧頂き、ありがとうございます!

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