心 2
「こんなに」
小山が差し出した袋の中には、何本もの緑の絵の具が入っていた。
「画材店の店主さんが用意してくれて」
「あー、おばちゃん……私がいつもちょっと多めに買うからかな……」
「なるほど」
少し沈黙が流れた。
「寒いですか?」
小山がいつもよりソワソワしていたので、思わず聞いてしまっ゙た。
「いえ、ちょっと痛みが」
「あら」
「大丈夫です。すぐ治ります」
「湿布要りますか?」
「あー……だい」
「持ってきますね」
◯●
「持ってきましたー」
つい最近久しぶりに重い物を下げた時に腰を痛めてしまった。その時使っていた湿布が残っていた。
部屋に戻ると、小山はスクワットをしていた。
「スクワット?」
「大丈夫です。痛み、収まりました」
小山は時々想像もつかないような言動をする。
「なら良かったです」
「はい!」
持ってきた湿布をその辺に置くと、私は小山が買ってきた緑の絵の具を見た。
色とりどりの緑、種類やメーカーの違う絵の具。
当面、緑には困らないだろうと思った。
一体いくらしたのかと少しゾワッとする。
「あ、絵の具代払いますね」
ゾワッとする絵の具代を小山に払わせるのは忍びないのでもちろん払う。財布をゴソゴソいじる私の手を止めるように「大丈夫です」と小山は言った。
「でも」
「いやいや」
「結構な値段じゃ」
「大丈夫です」
「払います」
「払わせてください。買って来るの遅くなっちゃったし」
「それは、仕方ないですよ。だから」
「あ、じゃあ代わりに俺の願いを叶えてくれませんか?」
「はい」
「俺、明日も休みなんですけど、直接会いに来てもいいですか?」
「ええ。もちろんです」
(それでいいの?)
「あと、」
「はい」
「その時に俺の似顔絵を描いてくれませんか」
「もちろんです」
(それでいいの?)
明日も来るというので、この日は早々にお開きになった。
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