緑の絵の具
先ほどまでの脱力感が消え、俺はバタバタと動き出した。
シャワーを浴び、とある人に電話をかけた。
「もしもし」
電話の相手はユウだ。
「お久しぶりです」
「久しぶり!」
(心なしか声が元気?)
「あの、今日久しぶりに休みで。Solitaさん、会いに行っても」
「そうなんだ!聞いてみるね。ちょっと待ってて」
「はい」
一度電話が切れ、再びかかってきた。
「良いって!」
「ありがとうございます!失礼します!」
電話を切り、俺は急いで髪を整え、家を出た。
◯●
家を出てかなり時間が経ち、Solitaの家の付近に着いた。Solitaの家に立ち寄る前に、俺はとある場所に寄っていた。
(画材店……ここかな)
古びた木造の建物に「いのうえ画材店」と書かれている。
その建物の木の引き戸を開け、中に入った。
趣のある建物の外観とは違い、中は比較的現代的にリフォームされていた。狭い店内にひしめき合うのは、素人をも圧倒する様々な画材だった。
「いらっしゃいませ」
突然声がしたので、俺は思わず飛び跳ねた。
「あら、ごめんなさい。驚かせて」
店主と思われる初老の女性が作業をしながら声をかけてきた。
「いえ……あの」
「はい」
「緑の絵の具を買いに来たんですけど……」
「お客さんが使うの?」
「いえ、知人の頼みで。昔から世話になってる店って言われたので来ました」
「もしかして……ソリタさん?」
「え」
「あら。そう!」
「知ってるんですか?」
「ええ。もちろん。店1番の常連さんよ。何て言ってた?」
「えっと……」
「ま、ソリタさんならこれとこれ、あとは……」
店主に一通り緑の絵の具を用意してもらい、店を出てSolitaの家に向かった。
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