激務と電話と 1
数日経っても、相変わらず俺の日常には彩りがなかった。仕事仕事仕事仕事の山で、禄に寝れていなかった。
地元の友達から女優を紹介しろだの推しのアイドルに会わせろだの鬱陶しいLINEが時々来る。
いくら美形の人間相手に仕事をしていても、売り物に手を掛けたら大惨事になると分からないのかと呆れてしまった。スーパーの店員がお腹が空いたからという理由で売り物の食品を貪っていたら大事件になるだろうが。
(第一、美人相手にいちいち悲鳴を上げていたら仕事にならない)
そんな俺だが、この日は久しぶりに家に帰ることができた。
ちなみに、俺は一応会社近くに1LDKのマンションを借りている。
(最後に帰ったのいつだっけ)
部屋の鍵を開け、やや煤けた薄暗い我が家に入る。
ベッドに倒れ込むと、不可抗力で寝てしまいそうになった。
ベッドの上で瞼を閉じた時、不意にあの顔が浮かんだ。
その顔のことを思い出した時、俺は胸がざわざわした。
(忘れられてないだろうか……)
Solitaに会ってから約2週間が経っていた。
Solitaに直接連絡するツテもないので、俺が仕事仕事仕事仕事なのもSolitaは知らない。
(もし忘れられていたら……)
そう思うと、背筋が冷えた。
気が付けば、俺はユウに電話をしていた。
「もしもし」
ユウの変わらぬ声に安堵する。
「小山です」
「小山君だ!どうしたの?」
「Solitaさん、どうですか?」
何を言おうか迷いながら電話した自分が悪かった。
「どう?」
「えっと……元気かなって」
「ソリタ?元気だよ〜」
(なんか複雑)
「今隣にソリタ居るから、代わるね」
「え?!」
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