カルシウム
面白い男だと思った。
夕飯を食べながら、私は回想に耽っていた。
小山は私の性格やペースを掴むのが早かった。人の話をよく聞いてくれるし、引き出すのも上手い。会話のタネもたくさんあり、会話が苦手な私にとって、とても話がしやすかった。
◯●
「……わかります。あるあるですよね」
「良いと思った作品が意外にウケなくて」
「そうでもないかなってやつが大ウケ」
小山は笑い転げるように手を叩いた。
「えぇってなりますよね」
「ね、そうですよね」
狭いアトリエで、2人して笑っていた。
「あー、面白い」
「芸術って本当難しいですよね」
「そうですね。俺らもいっつも悩んでて。鬼の上司はいつもキーキーです」
「鬼の上司…笑」
「数字だー!って」
鬼の真似をしてみせた小山が何処かおかしくて、私は笑ってしまった。それと少し申し訳なくもなってしまった。
一度断っているのだ。かなり手間をかけてしまっただろう。
「あ、Solitaさんは何も申し訳なく思わないでくださいね!上司、カルシウムが足りてないだけなので」
「カルシウム……笑」
瞼を伏せた私に気付いたのだろう。申し訳なさを和らげるためにかけてくれた言葉には、どこか優しさも含まれているように感じた。
「鬼の葛西には牛乳が必要です」
「ふふっ」
また私はおかしくなって笑ってしまった。
その後も結局かなりの時間、話し込んでしまった。
◯●
また話したいなと心から思った。
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