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夕飯と電話
小山が帰って少しした頃、兄さんが電話をかけてきた。
「もしもし」
「ソリタ?今いい?」
「うん」
私は、夕飯の支度をしながら話を返した。
「どうだった?小山君」
「……」
私は思わず笑ってしまった。
「ソリタ?」
「大丈夫だった。むしろ面白かった」
「……そっか」
「緑の絵の具頼んだ」
「緑の絵の具?」
「買ってきてって」
「?」
鍋のミネストローネがコトコトと音を立てていた。
「何かあったらまた言って」
「うん、ありがと。兄さん」
指についた水でスマホの画面が濡れた。
電話を切り、私は夕飯作りを再開した。