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殺伐とチョコレート
「戻りました」
フロア内は殺伐とした空気に包まれていた。
(浮かれてるのは俺だけか)
席に戻り、早速残っている仕事を始めた。
元々Solitaに頼もうとしていたコーナーを別のアーティストに頼むことになった。俺があまり葛西さんに怒られずに済んだのは、アキラさんと千夏先輩の手回しのおかげだろう。
(自分でオファーしろよ、って話だけど)
この日は、紹介するアーティストの過去をリサーチしていた。
「おかえり、小山」
千夏先輩が声をかけてきた。
「すみません、時間頂いて」
「もう7連勤目でしょ」
「6連勤目です」
「本当はもっと休ませたいんだけど」
「大丈夫ですよ。あ、そうだ」
千夏先輩がキョトンとしていた。
「出先でチョコレート買ってきました。限定らしいです」
「あ、本当だ。ありがとう!」
「何喋ってんだ!」
少しだけ平和な空気を切り裂くように、葛西さんの怒号が飛んだ。
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