夕暮れ
帰る頃には、かなり日が傾きかけていた。
「帰りますね」
「はい」
時間が溶けたかと思うぐらいにはあっという間だった。世間話だが、話も思ったより弾んでしまい、17時の鐘が鳴るまで2人とも気がつかなかった。
Solitaはわざわざ製作の手を止め、お見送りに来てくれた。
(玄関先で良かったのに)
車に乗り込もうとした時だった。
「あの、」
「はい」
「次、緑の絵の具を買ってきてもらえますか」
「……?」
「山を降りて少し走った所に古くからお世話になっている画材店があります」
「……」
「普段は兄さんに買ってきてもらってるか、自分で行くんですけど」
俺は少し吹き出してしまった。
Solitaは何も分かっていない様子で首を傾げた。
「はい、緑ですね。分かりました」
「種類は構いません」
「はい」
「原色の緑でも、好きな緑で構いません」
「はい」
「いつがいいですか?」
「早い方がいいです」
「仕事空いてる時狙ってまた来ます」
車に乗り、そのまま山を降りた。
近くのコンビニに車を止め、ユウに電話をした。
「……ええ、今から帰ります」
「ありがとうございます。いろいろと」
「俺自身も楽しかったです」
「そうですか…!」
「約束もしたので、近い内にまた伺います」
「約束?」
「はい。あ、そろそろ切りますね」
「?」
「店長さんらしき方が……」
店長らしき店員が凄い形相でこちらをチラチラ見ていた。俺はその気迫に押されて電話を切った。
「珈琲買ってこ」
店内にて、レジに向かう途中に限定のチョコレートを見つけたので、千夏先輩たちに買っていくことにした。
コンビニを出る頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
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