14/65
関わってはいけない人
そのまた翌日から、私は露骨ないじめを受けるようになった。
この辺は殆ど私の記憶には残っていない。
兄さん曰く、相当思い詰めていたらしい。
私は何も悪いことをしてなかったはずだった。
ただひとつ覚えているのは、いじめを受けるようになったある日、美術室に居た時だった。
「ソリタさん」
いつもの声より小さく、弱々しい声だった。
「赤羽先輩。その呼び方珍しいですね」
「……俺のせいでごめん。本当にごめん」
「なんで泣いてるんですか……庇ってくれたんですから、気にしないでください」
「でも」
赤羽は、友達だった幼馴染がいじめてきた時に庇ってくれた。信じていた友達だったはずだった。
「絵は良いですね、やっぱり」
無心で私は絵を描いた。
絵は自分を見せられるから。
この時の絵は今もある。
変な色味だった。今の私なら絶対使わないだろう。
関わってはいけなかった。