表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
画家のソリタ   作者: Suzura
12/65

沼る 2


ある日の部活終わりのことだった。




この日は鍵当番だった。戸締まりを終え、私は鮮やかな橙の夕陽を見ていた。もう1人の鍵当番が、赤羽だった。


「よし、行こうか」

「はい」


私達は、美術室がある3階から職員室がある1階まで共に下った。道中、もう皆帰っていたため周りには私達しかいなかった。


(気まずい…) 


赤羽は良い人だ。話していて楽しいし、周りもよく見えている。相手に悟らせないように気を配る。相手の観察が頗る上手いのだ。今までの様子からよく分かる。



だが、2人きりともなれば話は違う。

私は心なしか気まずい気持ちで歩いていた。




そんな私の気まずそうな顔に気付いたのか、赤羽が話しかけてきた。


「そーちゃんってさ、なんで美術部入ったの?」


(そーちゃん?!)


初めて呼ばれたあだ名である。


「えっと……絵がもともと好きだったのもあるので」

「そうなんだ。良いね」

「赤羽先輩はなんでですか?あんまりイメージないっていうか、サッカー部とか居そうな、あ」 


つい漏れ出た言葉だったが、私はすぐに後悔した。

赤羽が珍しく真顔だったのだ。 


「ああ、えっと、すみません」

「いや。確かにって思って」

「失礼すぎました」

「大丈夫だよ。……」


(怒らせた……)


「すみません」

「俺、こんなんだけどあんまり体力なくてさ。運動部入れないんだよね」

「そうなんですか」

「うん。小学生の頃まで病気がちでさ。体力なかったんだよね。中学に上がる時に引っ越してきたから皆あんまり知らないけど、学校通うのも一苦労だったから」

「……」

「想像つかないでしょ?」

「はい」  


赤羽はフッとどこか自嘲的に笑った。


「中学入って、少しずつ学校通えるようになって、嬉しかったんだよね。だから、必死に皆と仲良くなろうとしたけど」


赤羽はどこか切ない顔をしていた。



"その容姿ゆえに、中身を見てくれる人がいなかった"



赤羽はまた自嘲的に笑った。 


赤羽の横顔は夕陽に照らされ、赤く染まっていた。 

その姿は不謹慎にも美しかった。




(私なら寄り添えるかもしれない)

  




まだ続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ