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エルフ通信によると世界は2


今、居るところは…そうですね。

まず、ウルシャの海岸に着きました。

目的地はアマリクなのですが、海岸に沿って歩くと、沼や川が多くて面倒そうだったので、

ウルシャの森を北東に進むことにしました。

今はウルシャの森を抜けて、最初の山脈を超えた辺りです。



…ウルシャの森を抜けて…だと?



はい。

ジャングルみたいなところで、とにかく魔物がいっぱいいて、本当に通り抜けるのに苦労しましたよ。



…ウルシャの森を歩いて通り抜ける?

そうか…俄かには信じられないが、そうか…



山脈があと二つくらいあるんですけど、そこを超えて、アマリクの町に内陸ルートで向かうつもりでいます。



ピラリヤ山脈を超える?!歩いてか?



そりゃそうでしょ。

私、翼竜みたく飛んだりできないし。

歩くしかないんですよ。



最初の山脈を超えた…

すると今居るのはアデリー高原か…



あ、まだそこまでは行ってないですね、たぶん。

下山中です。



……アマリクに向かっているのだな。わかった。

それでは深海に居たはずのお前がウルシャの海岸に着いた経緯を教えてもらおうか。



え、いや、それは…その、



ネフタル殿の推測によると、

お前は身体の表面に意思を貼り付けてあるオリハルコンの塊という事であった。

事実か?



も、黙秘で。



ふむ。

非常に残念だ。

お前の様子を確認しながら会話できておればな。


とにかくお前が深海でも問題なく活動できたことはわかった。

そうでなければ生き残っていないからな。

もっともお前が生きているのか、というのは、なかなかに哲学的な問題だ。



と、と、とにかく私は深海を彷徨っておりまして。

頑張って頑張って、辿り着いたところが、海底山脈の頂上で、まだ海の中だったのです。

深く絶望していたら、私の身体から毒が出たようでして…



毒?絶望したら毒?

なんだ、それは?



わかりません。

その毒のせいで、リュウモン様の気持ちが悪くなったとのことでして。



リュウモン様の気持ちが悪くなっただと?!



ケトーンさんという大きなイカさんがやって来て、そう言ってました。

海から出て行け、と言われて、こう、ビューンと投げ飛ばされました。

着いたところが、ウルシャの森の海岸付近であります。



ケトーン殿と接触したのか…

解せぬ。

ケトーン殿は幽玄なる深海の王。

そのような粗暴な振る舞いをなさるとは思いにくい。


何か大事なことを隠していないか?



えっと、私が毒を出したんで、海を殺すつもりか?って言われて、

あと、ザグリンさんには正式に…抗議?いや苦情だったかな?を入れておくとか何とか。



……海を殺す気か?と言われたのだな?



はい。

それは間違いなく言われましたね。



ケルマンについての言及は?



あー陸の問題を海に捨てるな、と言っとけ、みたいな感じのこと言われましたねえ。

私に言われても困っちゃうんですけどねえ。



……



いや、なんか言ってくださいよ。



混乱している。

我々の常識では推し量れぬことばかりでな…



はあ。



では、これで通信を終える。話合ってみないといけないことが多いようだ。



ち、ちょっと待ったあ!

オリハルコン!忘れてない?!



ああ、忘れていた。すまぬ。

オリハルコンの精製に必要な物は賢者の石とアダマンタイト、それだけだ。


そうだな・・・

賢者の石を所有する者は神かその近しい使徒くらいなものだ。

世界にどれくらい存在するのか、誰にもわからない。


アダマンタイトは海の神獣アダマンタイマイの甲羅から得られる鉱物に近い何かだ。

似たような物質に黒龍王の鱗が挙げられる。


どちらも希少であり、金で売り買いできるような物ではない。

譲渡の記録は少ないが、少なくとも大都市の支配権くらいでないと、交換対象にもならない。


アダマンタイトは、海神リョウモンから与えられる以外の入手方法はありえない。

黒龍王の鱗も黒龍王自身に与えてもらう以外の方法で入手することは極めて困難だ。


所有することに価値がある。

そういうものだ。特別なつながりを示す故な。

そして、拝領を許されるような選ばれし者とは、金や利権で動くような存在ではない。


いいか、まず、アダマンタイトとはそういうモノだ。

金や地位で何とかなるようなものではない。

所有することがステイタスなのだ。


オリハルコンとは、その希少なアダマンタイトを賢者の石に曝すことによって精製される。


それだけだ。


製法も何もない。

賢者の石の大きさにもよるが、アダマンタイトの大振りの剣を賢者の石に3日ほど曝すと、

オリハルコンの神剣となるとされている。

賢者の石が大きければ曝す時間も短くなるだろうとも言われている。


ただし、アダマンタイトが全てオリハルコンに精製できるわけではない。

アダマンタイトは究極に安定した物質であるが、それ故にその性質を保とうとする。


オリハルコンになりたがらないアダマンタイトもある、と言えばわかるか。

三分の一から半分ほどの割合で、精製は失敗し、アダマンタイトは空に還ると言われている。

誰にも検証実験ができない、伝説としか言いようがない伝承だ。


オリハルコンに関する知識は錬金術の研究範囲ではない。

神話と伝承を研究する古代文字関連の研究対象になる。


伝承によると、精製自体は誰にでもできる。

特別な技術は必要ない。

お前でもできる。

アダマンタイトを失うリスクを考えなければ、

作業自体は、アダマンタイトを賢者の石に曝すだけでよいのだからな。


オリハルコンを精製するのは、この世の極々限られた者にしかできない。

普通の錬金術師がオリハルコンを求めたりしないのは、そういう理由だ。


オリハルコンの精製についての記述が錬金術のマニュアル本に記されることはない。

神話の中に描かれるロストテクノロジー、むしろ各地に残される童話の方がより深く語られているくらいだ。


アダマンタイトを手に入れることが極めて困難であり、

賢者の石を手にすることは神か神に近しい存在にしか許されない。

それだけのことだ。

在野の研究者が夢見ることさえ許されない。


オリハルコンとは究極の物質なのだ。



も、もう一つだけ!

賢者の石とは、一体、どのような物なのでしょうか?



わからぬ。

賢者の石とは、賢者にしか扱えぬ石なのか、

賢者にしか精製しえない石なのか、

それすらも良くわかっていないのだ。


文字通りに石のような物質なのか、

それとも特殊な空間を持つ場所を示す隠語なのか。

特殊な魔法陣を組み合わせたものなのかもしれぬ、とも推測されている。

或いは特殊な物質に特殊な魔法陣を重ねたものなのか…


お前のイーブ様なら我らよりもう少し深い真実に近づいていたかもしれぬな。

勇者アリアラのパーティに参加してすぐに奸計に嵌められて亡くなったと聞いたが…


お前の中身が本当にオリハルコンなのかどうかは、今は確かめようがない。

だが、何の知識も持たぬまま、この世に現れたことはよくわかる。

しかもケルマンの庇護もないのだ。

よくよく注意していく事だ。

お前の目的が何にしろな。



さ、最後にもう一つだけ!

なぜ人はオリハルコンを求めるのでしょうか?

オリハルコンの持つ力とは何なのでしょうか!



まったく…

イーブの相手をした父上の苦労の一端が窺えるわ。

オリハルコンとはこの世の理から外れたもの。


この世にある全てのものは神々から与えられる魔力を含んでいる。

違いは濃淡のみ。

しかしオリハルコンは一切の魔力を含まない。


世界で最も硬くしなやかで、折れることのないアダマンタイトから魔力を取り除き、

この世の理から外したものがオリハルコン。

魔力を含まないので、一切の魔術を受け付けず、

アダマンタイト由来の強靭さによりあらゆる物理攻撃に傷つくことがない。


ふ…

ネフタル殿の推測を聞いて、なるほど、言われてみれば、その通りよ、と、父もうなだれておったわ。

それにしても、何のためにオリハルコンに意思を持たせる必要があるというのか…

しかもこのような…



ぐむう…

で、では、賢者の石とは…

オリハルコンを製造するためだけのものではないのですね…


この世の理から外すもの。

この世界の神々の恩恵から切り離し、この世のものでなくするものと言われておる。



……



さすがにもう良かろう。

では達者で暮らせ。


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