表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/68

豪華客船コンクラーダ号4


出港してから約20日ほど経過した頃だと思う。

レイちゃんとコロさんは、2人だけで決定を下した。

とにかくワシらは逃げる。

後はお前が何とかしろ、とのことである。



よく考えてみたら、人間がどうなろうとオレの知ったことか。


さよう、ワシらは人間の考え方に毒され過ぎておった。


ワシらが居なくなった後のことなど、人間が勝手にすれば良い。



いや、それじゃわたし困るんだけど…



困っているのはお前だけだ。


ワシらは困らん。



うへえ。

なんだかガンビ君が生き残る未来が見えないなあ…どうしたもんだか。



ということで、後は港に着いたら、適当に何とかしよう、という大胆な計画のまま、

脱出後のライフプランが二人の会話のメインテーマになりつつある。

しばらくは行動を共にして、二人で町の近くにいる弱い魔物を狩りまくり、

魔石にして、存分に食べようと、盛り上がっている。

肉はもういいらしい。


わたしはあんまり会話に加われなくて、つまんない。


完全に丸く太ったガンビくんと夜の宴会を終え、

満腹して、うたた寝しているレイコロちゃんズを愛でていたら、何だか騒がしい。


波は穏やかなんだけど…これはもしや海賊?!と思った私は、二人を起こす。

ねえ、なんかおかしいんだけど。


甲板でみんな大騒ぎしてるが、剣の音なんかは聞こえねえな、とコロさん。


何だろね?


皆んなで静かに上の様子をうかがっていたら、どん!と大きな雷のような音がした。


うひっと皆んなで首を竦める。



とてつもない魔量じゃな…とレイちゃん。


今の音って魔術?



2人が白い目でわたしを見る。



お前、今までどうやって生きてきたんだ?なんでこの魔力にビビらずにいられる?


ワシは何処かに逃げ出したくて、しょうがないぞ。

とても生きた心地がせんわ…

こんな死に方するくらいなら、あの時グリフィンに大人しく喰われておればよかったわい。


と、とりあえず檻から出とこっか?何かあったら怖いし…


どうやって?


と、2人に凄まれた。



あ、いかん。

なんか本気でマズそう。

二人ともビビりまくって、余裕がなくなってる。


私はアダマンタイトのナイフを取り出し、

目立たないのはどの辺かな、どうやっても目立つかな、と檻をツツっと切り開き、

グニっと曲げて、隙間を作る。


二人があんぐりと口を開けている。



とりあえず檻から出て、どっかに隠れときましょう、ね?


何じゃ?その短剣は?

なぜ封魔の檻を切れる?

少なくとも五重にはかけられておったぞ!



まあまあ、話すと長いから、ね?

これで出られるでしょ?ほら、コロさんもおいで?


レイちゃんは檻から出た瞬間にコロさんの背中に跳び乗り、そのままコロさんごと見えなくなってしまう。


おお!すごい!けど、どこ行った?


(ワシには視覚、聴覚の阻害と匂い、熱源探知の阻害くらいしかできん。

人間相手ならこれで問題ないが、あの化け物相手では…)



(オレの風魔法も軽く吹き消されちまうだろうな…

ま、何もしないわけにゃいかねえけどよ)


いや、待ってよ、私も一緒に隠してよ、何!二人だけで、もー



わたしが捻じ曲げた檻を気持ちだけでも元通りにしようとしていた時、

上から転がり落ちるような何人かの足音が聞こえてきた。


ドバーンという感じで倉庫のドアが開く。

開くというか、破壊される。



は、は、破滅の獣人ってのはお前のことかーー!!


モールト船長が叫ぶ。



うわお。

もうすでに懐かしくなった異名に、わたしは思わず目を逸らす。


な、なんのことでしょう?



くぅ、イシュタルトの野郎、オレに何の恨みがあるんだよ。

チキショウ。こんなもん擦りつけやがって!

来い!ネフタル様が直々にお前をお呼びだ。

急げ!


い、いや、何のことだかわかりませんが…人違いでは?

それにネフタル様って誰です?


うるせえ、殺すぞ!いや、殺せねえよ!とにかく来い。

この船に獣人なんてお前しか居ないんだよ!


なるほど、それでは誤魔化しようがない。



モールト!オレのフェンリルは何処だ!

アイツがいれば、生き残る可能性が!少しは!


凄く大きくて筋肉ムキムキなヒゲ面のおじさんが泣きそうな顔でフェンリルを探している。

アレがコロさんの飼い主の冒険者さんかな。


うるせえ!オレが知るか!

モールトが叫び返す。


レイコロちゃんズは動かない。


あいつら、あっさりアタシのことも見捨てやがったな。

ま、しょうがない。予定通りと言えば予定通りか。


大騒ぎしてる周囲を何となくぼやっと眺めていたら、あっさりモールトに捕まってしまった。

あ、わたしも逃げてみればよかったか?ムダか?


モールトはわたしを小脇に抱えて、甲板まで狭くて急な階段をダッシュする。

そんなに慌てなくてもいいだろうに。


真っ青な顔でオロオロしてる船員ガンビが一瞬見えた。

何とか頑張って生き抜いてくれいと願った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ